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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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イブのデート

 聡さんのアドバイス通り、僕は光さんに相談はせずに、美術学校に行くことにした。

 不安な気持ちもたくさんあった。でも楽しい方を選ぶべきだと僕は思った。

 正しさよりも楽しさを僕は取ったんだ。


 僕は美術学校に行くために、絵の勉強をしている。

 塾には行けないが、僕は独学で勉強してみせる。


 そして今日はクリスマスイブ、奈々子さんと二人で過ごす予定だ。


 僕達は町を歩いている。

 町は街路樹にイルミネーションが施されており、綺麗に光を放っている。


 僕と奈々子さんはとあるおしゃれな喫茶店に入った。


 そこには僕達と同じようにカップルが集う場所でもあった。


 僕達もその中のカップル達と仲間入りと言うことか。


「奈々子さん何頼む、今日は僕がおごってあげるよ」


「良いよ別にそんなに気を使わなくとも」


「まあ、そんな堅いことは言わないで何が良い?」


 と言って、奈々子さんにメニュー表を差し出した。


「じゃあ、ここはお言葉に甘えてイチゴパフェで」


「それだけで良いの?」


「うん」


「さっきから、その大きい荷物、もしかして僕へのクリスマスプレゼント?」


「アツジも大きな袋を持っているじゃない、それってあたしへのプレゼント」


「うん」


 そう言って、奈々子さんに用意したクリスマスプレゼントを差し出した。


「じゃあ、あたしも」


 奈々子さんが言って僕にプレゼントを差し出した。


「開けて良いかな?」


 僕が言うと、奈々子さんは「もちろん」


 中身を見てみると、真っ赤なマフラーであった。


「うわーマフラーだ。暖かそう」


「それ、あたしが光さんに教わって編んだんだ」


「ええっ、じゃあ、まさかこれって奈々子さんのお手製のマフラー」


「そうなるわね。編むのに凄く時間かかっちゃったんだから」


「嬉しい。奈々子さんが愛情を込めて作ってくれたマフラーまさにこんな物を作ってくれるなんて我が青春に悔いなしって感じだよ」


「何よそれ。意味分からない」


 早速奈々子さんからもらったマフラーを首に巻いて、凄くぬくもりを感じてとても暖かくこれ一つでこの冬を乗り越えそうな気がした。


「アツジのも開けて良いかな?」


「うん。開けてよ」


 奈々子さんは僕のプレゼントを受け取って、中身を開けてみた。

 中には白いおしゃれなダウンジャケットだった。


「うわーアツジ、これ高くなかった?」


「まあ、それなりに値段はかかったけれどね」


 奈々子さんは僕がプレゼントをしたダウンジャケットを着た。


「奈々子さん。凄くかわいいよ」


「アツジ、これいくらしたの?」


 実を言うと四万はしたのだが、値段を言うと奈々子さんはドン引きしてしまいそうなので「まあ、一万ちょいぐらいかな?」と僕が言うと奈々子さんは僕に疑いの目で見つめてきた。

「アツジ、あたしに嘘をついているでしょ」


 目を細めてきて僕に問いかける。


「嘘なんてついていないよ。ちょうど冬物のバーゲンセールがあって、それで安く手に入ったんだよ」


「やっぱりアツジ、嘘をついている」


「う、嘘なんてついていないよ」


「本当はいくらしたの?」


 ギラリと奈々子さんの視線が怖かった。だから僕は、


「四万円」


「四万円!?」


 と驚く奈々子さん。


「まあ、別に良いじゃない。おめでたい日なんだから」


「そんな物を買ったら、あたし達の生活に支障が出てしまうんじゃないの?」


 奈々子さんはほんの少しキレ気味だった。


「でも嬉しいでしょ」


「まあ、嬉しいけれど、プレゼントでそんなの買わなくたって良いじゃない!」


「でも、奈々子さん、そのダウンジャケット凄く似合っているよ」


「そういう問題じゃないでしょ。あたしにいくら使っているのよ」


「と、とにかく今日はクリスマスだから、楽しくしようよ。西宮さんも斎藤さんもいないことだし」


 やれやれといった感じの顔をしていたが、奈々子さんはきっと嬉しいんだと思う。


 僕と奈々子さんの元に注文したパフェがウエイトレスによって運ばれてきた。


 僕はスペシャルサンデーパフェに奈々子さんはイチゴパフェを頼んだ。


 スペシャルサンデーパフェには花火が装飾されている。


「アツジのパフェ凄いね」


「僕も驚きだよ」


「アツジ、これを食べたら、星を見に行かない?」


「奈々子さんも星に目覚めたの?」


「うん、まあ、今は冬のダイヤモンドが見れるでしょ。それに河川敷は真っ暗だから、良く星が見えるから、あたしは良いと思うんだけどね」


「じゃあ、これを食べたら、星を見に行こう」


 僕達はそれぞれパフェを食べて、河川敷に向かった。


 寒いはずのこの季節、奈々子さんが僕のために編んでくれたマフラーを首にかけて寒さなんてへっちゃらだった。

 奈々子さんも僕がプレゼントした白いダウンジャケットを着て寒くなさそうだ。


 河川敷に到着すると、河川敷に設置されているベンチの上に座って星空を見上げた。


 星の一等星が立ち並ぶ冬のダイヤモンドを見て、僕達二人は良いムードって感じだった。


 そこで僕が「奈々子さん、何か暖かい物を買ってくるよ」


「そんなに気を遣わなくても良いのに」


 そう言って自販機のところに行って、僕の好きなホットレモンに、奈々子さんの好きなホットカルピスを買って、奈々子さんの元へと戻っていった。


「はい。奈々子さん」


 ホットカルピスを差し出す僕。


「ありがとう」


 そして僕達は星空を見上げながら、それぞれ温かい飲み物を飲んだ。


「都会の星はあまり見えないね」


 奈々子さんの言うとおりだ、都会は明るいからな。


 二人で星を眺めていると、奈々子さんは僕に寄り添ってきた。

 僕は心臓がドキドキして、奈々子さんの体温を頬で感じていた。


「奈々子さん。ここにじっとしていると風邪ひくからどこかに遊びに行かない?」


「あたしのわがままなんだけど、今日はアツジと二人きりで過ごしたいな」


 そう言われて心臓が高鳴る僕。


「アツジは、本当に美術学校に行くの?」


「うん、そのつもり、だから来年は美術学校に向けて猛勉強しなきゃいけないと思ってね」


「あたしも美術学校に行こうかな?」


「奈々子さんは僕と同じ進路で良いの?」


「あたしも絵を描くの大好きだし、それにアツジはあたしの最大のライバルでもあるし、最大の恋人でもあるのだから」


「だからって僕と同じ進路に行くのはどうかと思うよ」


「あたしがアツジと同じ進路に行くことは悪いことなのかな?」


「悪いことじゃないけれど、本当にそれで良いの?奈々子さんのやりたいことは何かないの?奈々子さんの成績なら進学校も夢じゃないのに」


「今時進学校なんて行ってどうするの?一流の学校に入ったからって、勉強三昧でしょ。あたしはそれは嫌だから」


「だからって僕についてくることはないんじゃない?」


「あたしがそうしたいって言うのだから別に良いじゃない。それに勉強は嫌いじゃないけれど、そんな勉強をして何の役にたつと思ってね」


「それは僕も感じたよ。僕達は今まで勉強に嫌と言うほどやってきた。でも僕はこのまま勉強しても面白い事なんてないと思ったからね」


「あたしもそう思ったよ。あんなに勉強して、それ以上に勉強したって、面白くなさそうだし。だからあたしもアツジと同じように美術の学校に進もうと思ったんだけどね」


「そうか、奈々子さんも同じ事を考えていたんだ。奇遇だね。僕の夢は小説家兼絵師に決まっているからね」


「小説家兼絵師かあ、最近あたし達が投稿している、小説のアクセス回数が増えてきたね」


「それほど僕達の小説を読んでくれている人がいるんだよ」


「何か面白くなってきたなあ」


 その時、奈々子さんが星を見上げるその目を見てみると、凄く輝きに満ちていた。

 星を見上げる奈々子さんは可憐で僕の心を奪っていく。

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