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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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みんなでドッチボール

 奈々子さんは人に気を遣われたり、同情されるのが大嫌いな性格だ。

 僕も同じだ。僕が安井にいじめられていたとき、周りの人達は、またやっているよって同情の眼差しで見ていた。


 西宮さんと斎藤さんは孤児で、それは奈々子さんも同じだ。

 奈々子さんの事情は知っているが、西宮さんと斎藤さんの事情は知らない。

 興味本位で聞いてみるのは失礼な気がするから、やめておいた。


 そして奈々子さんがトイレから戻ってきて、フィレオフィッシュをおいしそうに食べている。


 そこで西宮さんが「奈々子、怒らないで聞いて欲しいんだけど、あんたも孤児なんでしょ」


「だから何だって言うのよ」


 ちょっと奈々子さんは怒気がこもっていた。


 僕が「ちょっと西宮さん!何て事を聞くの!?」


 西宮さんは「だって私達と同じだなって思って」


「あたしには母親はいたけれど、白血病で死んでしまった。つい最近の事だけどね」


 奈々子さんはしれっとした態度で言う。


「私は生まれた時に公衆便所で生み捨てられていたんだってって施設長が言っていた。翔子は五歳の時に車で両親を事故で亡くしたわ」


 衝撃的な事実を知って僕と奈々子さんは驚いた。


 そこで奈々子さんが「あたし達に不幸自慢なんてするつもり?」


「そんなつもりは無いよ。ただあなた達は本当の友達だと思っているからね。私達の事情を聞いて欲しいと思っただけ。翔子も同じでしょ」


「うん」


 と弱々しく呟く斎藤さん。


「じゃあさ、これから私達が住む施設に来ない?」


 僕は奈々子さんに『どうする』と言ってアイコンタクトを取った。


「分かった行くよ。あなた達がどんな生活をしているのか?この目で見てみたいから」


「じゃあ決まりね。食事が終わったら私達の施設に行くと言うことで」


 涼子さんは僕達を大歓迎と言う感じで、僕達を誘った。

 そしてお昼のマックも食べ終えて、西宮さんと斎藤さんが暮らす百合の里と言う施設に向かうことにした。


 孤児院の百合の里は錦糸町のバスで平井駅まで十五分で到着した。


 西宮さんと斎藤さんが暮らす孤児院百合の里と言うところはどんなところなのだと、ちょっとドキドキしていた。


 そう言えば西宮さんが刺されたとき、施設長の阿部美紀さんと言う人が来てくれたっけ。その時の施設長の阿部美紀さんは何となくいい人だと思えてきた。

 でも西宮さんも斎藤さんもどんな施設に住んでいるのか、気になった。


 そして施設の百合の里に到着したとき、施設って言うんだから、広場があって学校のような施設があるんじゃ無いかと思ったが、そうでは無かった。大きな三階建ての一軒家だった。

 中に入ると、廊下があり、中に三つの部屋があった。


「「お邪魔します」」


 僕と奈々子さんは口をそろえて中に入っていった。


 すると西宮さんは「ようこそ、百合の里へ。向かって右が勉強室で、左に二つ部屋があるけれど、手前がパソコン質で、奥が娯楽室になっているわ。早速みんな今頃娯楽室で遊んでいるようだから、娯楽室に行きましょう」


 娯楽室に入ると、十人位の子供達がテレビゲームやら、将棋を指している人もいた。

 みんな西宮さんと斎藤さんが入ると。


「あっ涼ちゃんと翔ちゃんだ」


 と一人の女の子の小学生が言った。


 するとみんな涼ちゃん翔ちゃんと集まってきて、みんなで遊ぶこととなった。

 ここの子供達は西宮さんと斎藤さんを凄く慕っている。

 外で遊ぶこととなり、ボールを持って亀戸中央公園に向かった。

 亀戸中央公園は凄く広いところで、テニスコートや野球場、サッカーをやる広場なんかがある。


 僕と奈々子さんと西宮さんと斎藤さんを合わせて十二人いるので、六対六でドッチボールをすることになった。

 実を言うと僕はドッチボールが苦手だった。


 西宮さんと斎藤さんは僕と奈々子さんの敵側について、後の子供達はそれぞれ四人ずつ入っている。

 西宮さんと斎藤さんは子供達には手加減をしていたが、僕達に対しては手加減などせず、本気で僕達を当てるつもりで投げてきた。

 僕はそれを受け止めきれずにかわすばかりで、西宮さんと斎藤さんのボールをキャッチすることが出来なかった。

 小学生達は西宮さんと斎藤さんにボールを投げさせるためにボールを西宮さんか斎藤さんにパスする。


 西宮さんがボールを受け取って、狙いは僕と奈々子さんのどちらかだ。

 西宮さんは僕の目を見て「行くよ!」と言って、僕にボールを投げつけて来た。

 そしてよけきれずに僕は当てられてしまった。


 奈々子さんが「何よアツジ、あの位のボール、ちゃんと受け止めなさいよ」と怒られてしまった。


「だって西宮さん本当にボール強いんだもん」


 そしてまた西宮さんにボールが回ってきて今度は奈々子さんに本気で投げつける。


 だが意外な事に、奈々子さんはドッチボールがうまくて、西宮さんのボールをキャッチした。


「やるじゃない。奈々子」


「こっちだって負けていられないのよ」


 そう言って奈々子さんは西宮さんにボールを投げつける。


 だが、余裕で受け止められてしまった。


「今度はこっちの番、奈々子、覚悟は出来ているんでしょうね」


「何よそれはこっちの台詞よ」


 本当は小学生を含めての戦いだが、西宮さんと奈々子さんは小学生に興味は無く西宮バーサス奈々子って感じでドッチボールはやっている。


 西宮さんも奈々子さんも負けられない試合になってしまっている。

 さすがはライバル兼親友同士、お互いに勝ちを譲れない。


 西宮さんが投げて、それを奈々子さんは受け止めて、奈々子さんが投げて西宮さんはそれを受け止めて、僕と翔子さんと小学生達は、チーム戦なのに無視されている。


 西宮さんのチームにはまだ斎藤さんと言う僕と西宮さんの敵が控えている。


 奈々子さんは斎藤さんを狙って、斎藤さんはドッチボールが苦手なのか、すぐに当てられて外野に回ってしまった。


「翔子、何をやっているのよ」


 とたかだかドッチボールだと言うのに、西宮さんは怒っている。


「これで涼子を仕留めればあたし達の勝ちね」


 そこで西宮さんはボールを手にして、相変わらず奈々子さんを狙っている。

 奈々子さんはボールをキャッチして、奈々子さんも西宮さんにボールを投げつけて、西宮さんはそれをキャッチする。

 僕と翔子さんと小学生のみんなは手に汗を握る試合に応援をしていた。

 僕達の小学生は奈々子さんを応援して、西宮さんのチームの小学生は西宮さんを応援している。

 僕はもちろん、奈々子さんを応援していた。


「奈々子さん頑張って!」


 僕が言うと「任せておきなさい」と言って、奈々子さんは西宮さんのボールをキャッチする。

 そして西宮さんがボールをキャッチして、西宮さんはボールを奈々子さんに当てる。


「ああ、当たっちゃったよ。凄く悔しいーーーー」


「やったー」


 と西宮さんは子供のようにはしゃいで奈々子さんに勝って大人げなくも凄く嬉しそうだ。

 

 それで僕と奈々子さんは西宮さんと斎藤さんとその子供達にまでジュースをおごらされた。

 うわー給料日だからと言って、大出費だ。

 でも楽しかったから、まあ良いと言った感じだ。


 そこで公園に以前出会った施設長の阿部さんが現れた。


「みんな楽しそうね。あら、あなた達は確か奈々子さんとアツジ君ね」


 そこで僕が「僕達の名前を覚えてくれていたんですか?」


「ええ、涼子と翔子の恩人の名前は忘れるわけには行かないからね」


「恩人だなんてそんな」


「それよりもドーナツを買ってきたんだけど、みんなで食べない?」


 気づけば阿部さんの両手には袋で塞がっている。


 小学生のみんなはおやつの時間だと言って、はしゃいでいた。

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