今度こそ反省の色を見せた安井
救急車に運ばれた西宮さんは僕達も西宮さんと一緒に救急車に乗った。
僕は救急隊員に必死に訴える「西宮さんは無事なんでしょうか?」
「大丈夫です。腹部をかすめただけですから」
それで沢島は警察に連行されていった。
僕達は新聞配達どころでは無くなって、社長には悪いが今日一日新聞配達の仕事を休ませてもらうことにした。
事情を説明したら、社長も心配していた。
この事は公になりニュース沙汰にもなった。
西宮さんは痛みをこらえながら言っていた。「みんな安井君を責めないであげてね」と。
この人はどこまでお人好しなんだろうと僕の中で本当に西宮さんはバカだと思った。
病院に辿り着いて、西宮さんの御家族に連絡しようとすると西宮さんは言っていた。『お願いだからこの事は親に連絡しないようにね』と言っていたが、そうも行かなかった。西宮さんの連絡先を斎藤さんに聞こうとすると、「うちと涼子ちゃんは孤児でとある施設で住んでいるの」それを聞いた僕と奈々子さんは恐ろしいほどの衝撃を受けた。
西宮さんが孤児、それに斎藤さんも。
僕は「二人が住んでいる施設に連絡してよ」
「でもうち達は施設長に迷惑をかけたくない」
「そんな事を言っていられないでしょ」
そこで奈々子さんが「そうよ。アツジの言うとおりだわ、そんな事を言っていられないわ」
そこで現れたのが、眼鏡をかけて髪がクリーム色に染まった品の良いおばさんがやってきた。
「翔子、ニュースは見たわ」
「施設長・・・」
この人が西宮さんと斎藤さんの施設の長?
「涼子は大丈夫なの!?」
「はい。相手に刺されて脇腹をかすめたくらいです」
「それは良かった」
そして施設長は僕と奈々子さんを見て「あなた達は?」
「僕達は西宮さんの友達です」
「そう。涼子がいつもお世話になっています」
「こちらこそお世話になっています」
施設長は「私はこうゆう者です」と言って名刺を私と奈々子さんに一枚ずつ渡してきた。
名前は『施設百合の里、阿部美紀』と書いてある。
僕達は阿部さんに事情を説明した。
「なるほど、心を開いた彼が取った行動が沢島という相手にレイプさせようとしたのね。それであなた達はそれを阻止しにその相手をやっつけた。それで彼が刺されそうになったところを、涼子が助けたのよね」
「そうです。こんな事になったのは僕達がもっと西宮さんを守ってあげていればこんな事にはならなかった。安井の奴があんなにも最低な人間だとは思わなかったから」
阿部さんはその目を閉じて語った。「あの子は優しい子だから、いつも施設ではリーダー的な存在だった。弱い者いじめをする子に対して必死で鎮圧していたんだからね」
涼子さんと翔子さんが孤児なんて聞いて僕はびっくりした。
「まさか涼子と翔子が友達を作るなんて思いもしなかったわ」
阿部さんは僕達が涼子さんと翔子さんの友達であることに少々驚いたりしていた。
「で、その涼子をはめた安井という子は誰なの?」
すると驚いたことに安井は、どこから入ってきたのか病院の中に入り、謝罪してきた。
「西宮さんを襲わせたのは俺です」
と。
「あなたが涼子をはめたのね!」
阿部さんが安井に飛びかかろうとしたところ、僕は必死に羽交い締めをして止めた。
「やめてください。阿部さん。ここは病院ですよ!」
すると女性の阿部さんにどこにそんな力があるのか分からないと言うほどの力で僕が羽交い締めをしている手を振り払った。
そして阿部さんは安井に思い切り頬を叩いた。
その乾いた音が部屋中を包み込んだ。
「あなたが涼子の優しさにつけ込んで涼子をレイプさせようとしたのね!」
「はい!すみませんでした」
と素直に認める安井。
今度こそ安井は心を入れ替えたのだろう。もし入れ替えていなかったら、僕は安井に殺意を抱くだろう。
阿部さんの戒めのピンタは安井の心に響いただろう。
そこで僕が「どうだい!?安井、今度と言う今度はちゃんと反省しているんだろうな」
「ああ!」
それでもふてくされた態度を取る安井。
僕はその態度に怒りを覚えて、安井に攻撃を加えた。
「何しやがんだ、てめえ!」
「てめえこそ、本当に反省しているのかよ。こんな事になったのは全部お前のせいなんだからな!分かっているのかよ」
「分かっているよ。でも俺に関わるからそうなるんだよ!」
安井の発言に怒りを覚えた僕は安井に飛びかかった。
「この野郎」
安井も抵抗はしてきたが僕の腕力には敵わず、僕は安井に対して、顔面に何発も何発も攻撃を加えた。僕は本気で安井を殺そうと本気だった。奈々子さんも阿部さんも僕を止める事はしなかった。ちょうど良い、ここで安井を殺してやる。
安井に何発も何発も攻撃を加えて、僕の怒りは止められず、無心で攻撃を加えていた。
そこで奈々子さんが「アツジ、もう良いよ!こいつを殺したら、本当にあんた捕まっちゃうよ」
「それもそうだね!こんな奴、殺す価値も無い人間だ」
「それよりもアツジ、涼子は大丈夫かしら」
そこで阿部さんが「あなた達本当に涼子のお友達なのね、何だかほっとしたわ!」
そこで僕が「涼子さんは施設ではどんな人なんですか?」
「とても優しくて、頼りがいのあるお姉さん的な存在よ!ありがとう。あの子を助けてくれて、それにあの子の友達になってくれて!」
そこで奈々子さんが「いや、阿部さんと言いましたよね、友達になってくれって頼んで来たのは涼子の方からです!」
「そう。あの子から友達になってくれって頼んできたの!?」
「はぁ、友達になってからあたし達によく絡むようになってきたんですよ!」
と奈々子さんは涼子さんと翔子さんの事をウザそうにそう言う。
「奈々子さん、そういう言い方は無いでしょ」
「だって本当の事でしょ。あたし達が学校に行き始めて、あたしが学年で二番を取ってアツジが一番を取って、自分達が抜かれた事にあたし達に絡んできたのよ!本当にやれやれですよ」
阿部さんが「あの子があなた達に興味を持ったのはそれだけじゃ無いと思っているのよね。何か二人で面白いことをしているんじゃ無いかって、そう思ったりしたんじゃ無いですかね」
奈々子さんが「それで新聞配達の仕事にも乱入してくるように入ってきて、勝負を仕掛けてきて、あたし達は何か変な奴に絡まれたような感じだわ」
「それだけあなた達に興味を持ち始めたんだと思うわ。最近の涼子を見てみると、何か生き生きとしていた感じだし」
そこで奈々子さんは軽く息をつき「それよりも、涼子が心配だわ」
手術室の点灯のランプが消えた。
救急隊員はナイフで脇腹をかすめただけだって言っていたが実際はどうなのだろう!?
手術が終わり、西宮さんは荷台には乗っておらず、歩いてこちらまでやってきた。
阿部さんが「涼子、大丈夫なの!?」
「阿部さん。また迷惑をかけてしまいましたね」
「まったくあなたはいつもそうなんだから、その安井って子、アツジ君って子が代わりにぶっ飛ばしてあげたそうよ」
安井は僕がぶっ飛ばして、ソファーに横たわっている。
「ちょっとアツジ君、これはやり過ぎなんじゃない!?」
「やり過ぎじゃ無いよ。これではまだやり足りないくらいだよ。西宮さんももうこんな奴の肩持つのはもう止めようよ。今回の件で良く分かったでしょ」
「正直、今回の件で私が学んだ事は、この世の中には救いようの無い人物がいるって事を身をもって知ったわ!?」
本当にその通りだ!西宮さんは今回の件で、学ぶべき事はこんな奴(安井)が人の優しさにつけ込んでおいしいところを奪って行くような奴がいるって事を思い知っただろう。
こいつ(安井)は大人しい僕に対して、散々いじめたあげくに、僕の友達でもある西宮さんにひどいことをしたんだ。それに奈々子さんも光さんも同じような目にあってきた。だからこいつには天罰曰く人罰を僕が下してやった。
「でも私は安井君の事を諦めた訳じゃ無いわ」
よりにもよって涼子さんはそれでも安井の肩を持つつもりか?もう僕は付き合いきれない。




