最低な人間
安井が学校ではいじめられなくなっていた。これは大きな進歩だ。
でも外に出れば安井にバカにされた連中は安井に対して敵意を持ちいじめをしている。
そこで西宮さんが安井の席に行った。
「安井君大丈夫?」
すると安井は「ありがとう西宮、おかげで助かったよ」
それを聞いた西宮さんは大喜びで「安井君困った事があったら私に何でも相談してね」
「じゃあ、相談なんだけど、今日の放課後、俺と付き合ってくれないかな、このお礼もしておきたいし」
どういう事なんだ?あの安井があんなに素直になってしまうなんて。
「うん、放課後少しの時間なら取っておけるから一応付き合ってあげるよ」
と西宮さんはにこりと笑っている。
何かおかしいような気がした。
急に安井があんなに素直になるなんてあり得ないと思っている。
いやでも安井も心を入れ替えたのかもしれない。
授業中、西宮さんの威厳もあって昨日と同じく安井をいじめる者はいなかった。
それよりも安井の奴、本当に心を入れ替えたのか?疑問に思ってくる。
この事を後で奈々子さんと相談した方が良いかもしれない。
放課後、西宮さんは安井に連れられて行ってしまった。
今日は学校が終わるのが早いから、新聞配達の時間まで三時間のゆとりがある。
僕は西宮さんに一言言っておいた。
「西宮さん。新聞配達の時間までは来るようにね」
「分かっているわよ」
安井に心を開いてくれた事がそんなに嬉しいのか、西宮さんは自転車で安井とどこかへ行っていってしまった。
何か心配だった。
奈々子さんに相談すると、「何かあるわ、安井と西宮の後をつけてみようよ」
僕と奈々子さんと斎藤さんは西宮さんと安井の後を気づかれないように追った。
すると安井に連れてこられた場所は昨日安井に暴力を振るっていた、厳つい顔のした奴のところに連れて行かれていた。
「沢島さん連れてきました」
「よくやったじゃねえか安井」
「安井君、これはどういう事?」
と西宮さんはうろたえている。
「実を言うと沢島さん。西宮のようなロリっこ体型の子が好みだったみたいなんだよ」
「やっぱり安井の奴、西宮を連れてあいつにレイプさせるつもりだったんだわ」
奈々子さんは言う。
本当に安井はなんて奴なんだ!あそこまで救いようのない奴だったなんて。
沢島と言う奴は西宮さんに抱きついた。
西宮さんは嫌がるように「キャー」と悲鳴をあげていた。
僕は我慢できずに西宮さんのところに向かって行った。
でも正直怖い。でも西宮さんは僕達の友達兼ライバル関係でもある。このまま西宮さんを野放しになんて出来ない。
沢島と言う奴は西宮さんを車の中に連れ込もうとしたところ、僕と奈々子さんと斎藤さんはそれを阻止しに沢島のところまで行った。
「やめろ、沢島」
と叫びながら沢島のところに行った。
どうやら今日は沢島と言う奴一人だった。
「何だてめえらは?」
僕は勇気を振り絞って沢島に人差し指と中指に沢島の目の玉を差し込んだ。
「何するんだ目が見えねえ」
そこで奈々子さんと斎藤さんはその隙を逃さずに沢島に鞄で攻撃を加えた。
何発も何発も教科書が大量に入った鞄を沢島の体にぶつけた。
そして沢島は気絶してしまった。
そこで僕が安井に対して「これはどういう事なんだよ安井」
奈々子さんが「そうよ人の良い西宮をレイプの的にさせるなんて」
すると安井は「仕方がねえだろ、沢島さんは西宮を連れてこいって言ったんだから」
「安井、お前は西宮さんの行為をあだで返すつもりだったのかよ」
「別に俺は西宮に俺を救ってくれなんて頼んでねえもん」
「それにしてもこれはひどいよ」
そう言って安井に拳を突きつけようとしたところ、西宮さんが「待って、安井君を責めないであげて」
そこで奈々子さんが「あんたどこまでお人好しなのよ。あんたはこいつの仲間にレイプをされそうになったんだよ。いい加減目を覚ましなさいよ。こいつは最低な人間だって」
そこで僕が「そうだよ西宮さん。安井は最低な男だよ。そんな奴に手を差し伸べるなんておかしいよ」
西宮さんが「安井君は沢島に命令されただけだもんね。だから何も悪くないよ」
奈々子さんが西宮さんの顔を叩いた。
「何をするのよ奈々子」
「あんたは本当に救いようのない大馬鹿よ。何でそこまでして安井に手を差し伸べようとするの?」
「私はどうなっても良い、せめて安井君がいじめられないように、したいだけ」
「あなたもしかして安井の事が好きなの?」
「そうじゃない。何度も言うようだけれども、私は安井君がいじめられないようにしたいだけ。こんな事があったからって、私は安井君を見捨てるような薄情者にはなりたくない。一度助けるって言ったんだもん、その気持ちを曲げたくない」
「・・・涼子」
西宮さんの安井への思いは本物だ。たとえ危険な目にあっても安井を助けようと本気だ。
そこで僕は安井の胸元を掴んで「安井、西宮さんの思いを無駄にするような行為はやめろよな」
「安井は僕の視線を背き、俺は助けてくれなんて一言も言ってねえよ。俺は最低な人間だよ。親父にもお袋にも言われた。それにクラスの連中にも。
だから俺の事はもうほおっておいてくれよ。これで分かっただろう。俺がこんな最低な人間だって」
安井は涙目になっている。
もしかしたらいじめられている事は僕への戒めなのかと思い始めてきた。
いや自分から最低だなんて言っているのだから、それはないだろう。
でも西宮さんが安井にはめられそうになっても安井を見捨てたりはしなかった。
僕はその気持ちに心を打たれた。
「安井、人間は一人では生きていけないよ」
と僕は助言をした。
「はぁ?なんだお前まで、俺の事を野良猫のように見ているのか?」
「お前は野良猫じゃない。野良猫以下の人間だ」
「何だとてめえ」
と僕を殴りつけようとしたところ、奈々子さんと斎藤さんが安井に向かって鞄をたたき付けた。
たたきのめされ、「くそ!」と言ってまた涙を流してしまった。
「安井、心を入れ替えろよ。西宮さんの優しさに免じてよ」
そこで奈々子さんが「そうよ。涼子はあんたにこんな事をされてもあなたに手を差し伸べようとしているのよ。その気持ちぐらいは分かりなさいよ」
「何で西宮はこんな俺に手を差し伸べようとするんだ?俺はこんなに最低な人間なんだぞ」
「そうよ。あなたは最低な人間だよ。でもあたしは西宮に免じてあなたの味方になってあげるわ」
奈々子さんも西宮さんの行為に心を打たれたようだ。
「誰もお前に味方なんてなってもらおうなんて考えていねえよ」
安井はどこまでも心が病んでいる。
でも奈々子さんは何の反論もせずに黙っていた。
本当に西宮さんの安井に対する気持ちに心を打たれたみたいだ。
そこで倒れていた沢島が立ち上がりナイフを手に安井に飛びかかった。
「安井、てめえ俺をはめやがったな!」
と沢島はナイフを片手に猪突猛進に安井を突き刺そうとしている。
そこで西宮さんが「安井君!」と言って、西宮さんは安井の身代わりになった。
そして西宮さんは腹部を刺されて、血が大量に腹部から流れた。
そこで斎藤さんが「涼子ちゃん」と言って西宮の側に駆けつけた。
安井が「沢島てめえ」と言って、安井は満身創痍の沢島に殴る蹴るなどの攻撃を加えた。
そして、安井が「早く救急車を呼べよ」
そう言われて僕は携帯で119を押して救急車を呼んだ。
西宮さんが心配だ。西宮さんが安井に肩を持つからこんな事になったんだ。




