僕達にライバル意識を持つ西宮と斎藤
朝起きて僕達は新聞配達の仕事に向かう。
朝に慣れていない西宮さんと斎藤さんは朝起きるのに苦労していた。
「あんた達いつもこんなに遅くまで起きて、こんなにも朝早いの?」
涼子さんが眠そうに僕達に言う。
「そうよこれぐらい当たり前の事よ」
奈々子さんは言う。
「じゃあ、朝ご飯は斎藤さんと西宮さんの分も作っておいたから、まずそれを食べてよ」
僕は四枚のトーストを焼き、目玉焼きを作り、その目玉焼きをトーストに乗せて食べる事にした。
「朝食かあ、何か受け付けないなあ」
「ダメだよ西宮さん。ちゃんとご飯を食べないと力が付かないよ」
「分かったわよ。食べれば良いんでしょ」
西宮さんと斎藤さんは渋々僕が作った目玉焼きを乗せたトーストを食べてくれた。
それを食べ終えて僕達は新聞配達の仕事に向かった。
西宮さんと斎藤さんは少しぐったりとしていた。
でも少し時間が経って新聞配達所に到着した時にはもう元気だった。
そうだ。ライバルはそうでなければ面白くない。
早速勝負の始まりだ。今日は僕と奈々子さんが一緒になり、西宮さんと斎藤さんが一緒になった。西宮さんはこれじゃあ勝負にならないと言っていた。それは僕達は新聞配達に慣れていて自分たちは慣れていないので不公平だと。でも奈々子さんは勝負は勝負と言う事でその不服を飲み込んでもらった。
勝負はもちろん僕達が勝った。西宮さんは勝負に負けたことに不服に思っていたけれども、勝負は勝負で負けたのだから僕達にジュースをおごる事になった。
「あなた達はプロでしょ。私達が負けて当然じゃない」
と言っていたが奈々子さんは「今後に及んで、そんな文句を言ったってしょうがないじゃない。あなた達が勝負を仕掛けて来たのだから」
何も言い返せない西宮さんだった。
そして七時頃、僕達は僕の家で学校に行く準備をしていた。
西宮さんと斎藤さんはまだ学校に行くまで一時間があるので、そこで一時間だけ横になっていた。
そこで奈々子さんは「そんなんで、へばっていたらあたし達には勝てないわよ」
「言ってくれるじゃない」
そこで西宮さんの闘志に火が付いたような感じがした。
そして学校に行く時間になり、僕達は自転車で学校に向かう事になった。
授業中、西宮さんはうつらうつらと眠そうにしていた。
やっぱり二人には僕達について行く事は出来ないのかもしれないな。
給食の時間になり、西宮さんは余り食欲がないような感じだった。
二人が僕達についてこれるようになるにはとりあえず、慣れかもしれないな。
でも僕達は二人に対して手加減などしない。
学校が終わり、午後の新聞配達の時間になり僕達は新聞配達所に向かう。
西宮さんと斎藤さんは疲労困憊している。
「大丈夫なのあなた達、もう疲れている状態じゃない」
「私達はあなた達に負けないだから」
疲労しても西宮さん達は僕達に向かって勝負を仕掛けてくる。
凄いなこの人達、今後に及んで僕達に勝負を仕掛けて来るなんて。
もちろんこの勝負は僕達が勝つことになってしまった。
午後の新聞配達が終わった頃、西宮さんと斎藤さんは疲労困憊でもうきっと僕達のライバルにはほど遠いかもしれなくなってくるような気がした。
「そうだ。奈々子さん。昨日僕達が投稿した小説のアクセス回数を見てみようよ」
「そうね」
僕と奈々子さんは携帯を取り出して、僕達が投稿したアクセス回数を見てみると僕が38で奈々子さんが42だった。
「うわ、僕の負けだ」
「さてアツジ、あたしに負けたんだから。何かしてもらおうかしら」
「良いよジュースでもおごってあげるよ」
「いや別にいいや。アツジにはいつも世話になっていることだし」
そこで西宮さんが「二人して何楽しそうに話しているの?」
「昨日アップした小説のアクセス回数を見ていたんだよ」
「それでどちらが勝ったの?」
「奈々子さんが僅差で勝ったよ」
と僕は悔しくて言う。
「あなた達勉強も私達よりも上なのに、それなのに小説と絵を描くなんて。私達は勉強で手一杯なのに」
「勉強はちゃんと授業を受けているから大丈夫でしょ。あなた達学校の勉強ちゃんと聞いている?」
「聞いているわよ。でもあなた達は私達よりも勉強が進んでいるじゃない」
「学校の勉強は無駄が多いのよ」
「とにかく私達は負けないんだから」
「あんた達別にあたし達に勝負を挑まなくても良いんじゃないの?」
「いや、私と翔子は悔しい。勉強でも仕事でも絵や小説でも劣っているって言うのに」
「そんな事は気にしなくても良いじゃない。あなた達は学年で西宮が三位で斎藤が四位なのでしょ」
「あなた達が来る前は私が一位で斎藤が二位だったのに」
「そんなに二人で一位二位を独占したいの?」
「別にそうじゃないけれども、何かあなた達には負けたくない」
そういって西宮さんは立ち上がった。
「どうしてあたし達をそう敵視するかな?」
「別に私達は一位二位を独占されたからと言って、あなた達をライバルだなんて思ってはいないんだから、ただあなた達を見ていると何か面白そうな事をしていると思ったからよ。それに私に予感は当たった。あなた達は小説も絵も上手で本当にすごいと思えたわ」
「じゃあ、あなた達も小説や絵を描いてみてはどう?」
「ええ書いてみるよ。翔子もそうでしょ」
コクリと頷く斎藤さん。
「正直あなた達の小説は面白かったわ、でも私達も負けないんだから」
疲労困憊の西宮さんの目を見てみると、その瞳の奥に燃えるような何かを感じた。
西宮さんは本気だ。僕達も負けてはいられない。
そして学校に行く時間になり、僕達四人は自転車で学校に向かった。
たまに思う時があるんだ。
僕達はなぜ勉強をしなければいけないのか?
勉強はスポーツと違ってやればやる程、能力が上がってくる。
それが面白いところなんだけれども、英語や数学、その他にも色々とあるが、これらの勉強をして本当に大人になって役に立つのだろうか?
そう思うと勉強がやる気を失せてしまうが、それはダメだと自分に言い聞かせ今日も西宮さんや斎藤さんに奈々子さんと囲んで勉強をするのを楽しみにしている。
競争は嫌いじゃないんだよな。でも一位にとらわれてしまったら大変な事になりそうな気がしてきた。
そう思うと西宮さんや斎藤さんが危険な人物に思えて来た。
とにかく僕が期末で一位で二位が奈々子さんだ。
その事実は曲げられない。
学校に到着して、僕を散々いじめて来た安井が学校にやって来た。
あいつはもう市議会委員の息子じゃない、それに僕をいじめて僕に痛めつけられた安井に加担するものはいなかった。
もうあいつをほおっておいても何もしてこないだろう。
それにひそひそと安井の話をしている声が聞こえて来た。
「あいつ良く学校に来られるな」「散々威張り散らしていたからな」等々。
様を見ろと言いたいところだが、何かあいつの事が不憫になって来た。
でも僕が奴にする事なんてない。奴にすることは同情ぐらいだ。
安井は大人しくして座っている。すると安井にゴミを投げる輩がいた。
その輩は以前安井に加担していた奴だった。
かわいそうだが、仕方がない事だ。僕に何をすることも出来ない。
そこで西宮さんが「ちょっと安井君にちょっかいを出すのはやめなさいよ」と安井の肩を持つ西宮さん。
すると西宮さんがそういうと、誰も安井にちょっかいを出すものはいなくなってしまった。
西宮さんの威厳は大したものだ。
安井をかばったところでいじめられそうには無いようだ。
そうだよな、やっぱりどんなことがあってもいじめはいけないよな。
思えば安井に殺されかけた事もあったけれど。
とにかくいじめは行けねえよ。




