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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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新たなライバル

 すき焼きが出来上がり、僕がいるこたつの上に運ばれた。

 そこで鍋奉行が桃子だった。


「みんな、お肉としらたきは一緒にしちゃダメよ!」


 ぐつぐつと煮込まれた野菜に、その間にすき焼きが放り込まれている。

 僕達はすき焼きの肉が煮えてきて、桃子は僕達のお皿にお肉や野菜を放り込んでいく。

 すき焼きなんて久しぶりだな。そう言えばすき焼きって家族とよく食べたものだった。

 桃子の話によると、僕の父親と母親は僕が学校に言っていることを知り、僕の事を認めていると聞いている。

 でもあんな冷たい父親と母親の所に帰るわけにはいかない。

 いじめられていたことに対しても、僕がふがいないからだと言って、僕はテレビで光さんの呼びかけに応じて図書館に行ったんだっけ。

 そして僕は救われた。

 思えば家族とのすき焼きはおいしいなんて僕は思わなかった。

 家族で僕の味方をしてくれるのは桃子だけだよな。

 すき焼きの香りが部屋中に漂い食欲を掻き立てる。

 

 すき焼きのお肉を食べるとそれはもうおいしい物だった。

 大好きな人達と食べる物は何でもおいしい。

 僕は幸せ者だ。

 大好きなみんなとすき焼きをお腹いっぱいになるまでに僕達は色々と進路の事や、桃子が受験する事で楽しく話し合った。

 それで僕は調子に乗って自分の夢を語った。それは小説家絵師になる事だった。

 桃子は僕の小説を読んで見たいとせがんだ。

 すると奈々子さんと光さんが見せてあげればと言われて、僕はちょっと照れてしまい、渋々だったが僕が描いた小説のノートを差し出した。


「お兄ちゃんが小説を描いていたなんて桃子初めて聞いたよ。何か読むのが楽しみだな」


 そういって桃子はペラっと僕が描いた小説を見て、僕は食事中だから後にしなさいと僕は言った。「はーい」と返事をして桃子はすき焼きを食べる事に夢中になった。

 桃子に小説を読んで貰ってどんな感想が帰って来るのかまだ読まれていないのに、鼓動がドキドキした。


 そういえば奈々子さんや光さんに僕の小説を読んで貰った時は、大絶賛だったっけ。それに奈々子さんの小説と僕の小説を読み合って互いに絶賛し合い奈々子さんは僕の小説の方が良いと思ったのに僕は奈々子さんの小説の方が面白いと思ってケンカして光さんに仲裁されたっけ。

 本当にどれも懐かしくいい思い出だ。


 僕達はワイワイガヤガヤと光さんと桃子と奈々子さんが作ってくれたすき焼きを食べながら語り合っていた。

 そして終わりと言う物は当たり前のようにやってきて、桃子と光さんは帰る事になった。


「じゃあ、お兄ちゃん。明日も来るけれど、お兄ちゃんの小説読んでおくから」


「奈々子ちゃん、あまりあっ君を微熱だからと言ってあまり束縛しないようにね」


 と桃子と光さんは言って明日も来るとも言っていた。


 僕はこたつに入って、「はぁ、みんなで食べるご飯はすき焼きに限らずにおいしいね」


「本当ね、あたしはすき焼きを食べるのは初めてだけれども、二人が作ってくれたご飯はおいしいね」


「奈々子さん。明日から新聞配達の仕事をして学校にも行くから」


 奈々子さんは「フー」と息をつき「それだけ元気なら大丈夫そうだけど、その前に熱を測りなさいよね」


 僕は奈々子さんに体温計を手渡された。

 僕は体温計を脇にさして、体温を測った。

 そこで僕は思い出すように言った。


「そういえば昨日の西宮さんにラインのメールが入ったって言うけれど、今日何か言っていた?」


「あいつ何か気に入らないんだけど」


「何か言われたの?」


「あいつらの事を見て分かったんだけど、あいつらもいつも二人で誰とも溶け込まずに何かしているよ。それに驚いたんだけど、あいつらの成績西宮が学年四位で斎藤が三位だったんだよ」


「凄いねあの人たち頭が良いんだね」


「でも、あたしはあいつら何か気に入らないだよね」


 奈々子さんが気に入らないと言う事は奈々子さんはあの西宮さんと斎藤さんに興味があると考えた方が良いかもしれない。

 奈々子さんは本当に気に入らない相手だと、名前も言わないし、猫被って無理して笑顔を演じてごまかしたりするからな。だからあながち、あの二人の事を完全に嫌っていたのではないのかもしれない。


 時計は午後十時を示している。明日こそは新聞配達の仕事に出かけようと僕はこたつの電源を切り布団を敷いて眠りについた。同じように奈々子さんも同じだった。


 西宮さんと斎藤さんかあ、あの二人は僕達に何か気があるようだが、何の事だがまだ定かではない。


 とりあえずその事は置いといて明日しっかりと新聞配達の仕事をこなさないといけない。





 そしていつものように午前三時に起きて僕と奈々子さんは新聞配達の仕事に出かける事となった。


 すると奈々子さんは「アツジ、とりあえず体温だけは測っておいてね」


「分かっているよ」


 渋々と体温計を取って測ってみると六℃9分の熱があった。

 それを奈々子さんに見せると。


「まあ、これぐらいの熱なら大丈夫でしょ」


 と認めてくれた。


 そして二人で新聞配達の仕事に出かけて思いもよらぬ人がそこにはいた。


 西宮さんと斎藤さんだった。


「西宮さんと斎藤さんだよね、どうして新聞配達に?」


「まあ、ちょっとね、私達もお小遣いが欲しいからね」


 と西宮さん。斎藤さんは礼儀正しくお辞儀をしている。


 そこで奈々子さんが「あなた達いったい何のつもりよ。私達がしている新聞配達の仕事に首を突っ込むなんて」


 そこで社長が「まあまあ」と言って横から口をはさんできた。西宮さんと斎藤さんを採用したのは彼女たちがやる気に満ちているからだと言う。それに人手不足と言う事もあってだ。僕は西宮さんの方のルートを教える事となり、奈々子さんは斎藤さんのルートを教える事となった。


「じゃあ、西宮さん、まず新聞配達に行く前に新聞一部ずつチラシを入れる作業をするんだ」


 そういうと西宮さんは手際よく新聞を一部ずつチラシを入れていく。

 西宮さんのその姿に僕は負けていられないと言う気持ちになり、僕も真剣(マジ)に新聞に一部ずつチラシを入れていく。

 僕が終わると西宮さんも終えていた。


「西宮さん、手際が良いね」


「当り前じゃない私を誰だと思っているの?」


 そのやる気はどこから来ているのか?それとも僕にケンカを売っているのか?

 まあそれはさておき、西宮さんに地図を見せて、すぐに配達場所を把握したようだ。

 とりあえず今日は初めてだから、僕が西宮さんの事をサポートしてあげないといけない。

 仕事の合間に、どうして僕達がやっている新聞配達所に来たのか聞いてみると、お小遣いが欲しい事と僕達の事に対して負けていられないと言う事だった。

 それに西宮さんと斎藤さんは僕達が学校に来る前は、中間期末は1位2位を西宮さんと斎藤さんで独占していたと言う。

 なるほど、僕と奈々子さんは西宮さんと斎藤さんにライバルだと思われているみたいだ。

 そう理解すると、僕は負けていられないと言う気持ちに駆られて、僕は心の奥底から何か燃え上がる何かを感じた。

 何か楽しくなってきた。

 奈々子さん以外のライバルかあ、僕も負けていられない。

 西宮さんのルートだが基本的な事を教えてすぐに彼女は理解した。

 新聞配達の仕事から帰ると、今日は僕の方が奈々子さんよりも早く到着した。


「よし!」


「何がよし!なの?」


「いや、奈々子さんよりも早く新聞配達の仕事を終えたからだよ。それで勝った方がジュースをおごる約束をしているんだ」


「へえーあなた達面白い事をしているのね」


「ところで西宮さんと斎藤さんは僕達の事をライバルだと思っているけれど、僕達は負けないから」


「望むところよ」


 そうして奈々子さんと斎藤さんが帰って来た。


「何よアツジ、あなたもう到着していたの?」


「今日のジュースをおごるのは奈々子さんだね」


 すると奈々子さんは「チィ」と悔しそうに舌打ちをする。


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