僕を心配する奈々子さん
次の日三時ぐらいに朝起きて、新聞配達の仕事に出かけようとしたところ、僕が新聞配達の仕事に出かけて行ったらまた、奈々子さんを無理させてしまうと思ってやめておいた。このまま寝てしまおうと思ったら、奈々子さんが起きだして新聞配達の仕事に出かけようとしたところ僕は奈々子さんに言った。
「奈々子さん、いい加減にしてよ。僕も新聞配達の仕事は休むから今日はとりあえず寝ておこう」
「分かったわよ。アツジも安静にしているならあたしも安静にしているよ」
分かってくれて僕は嬉しかった。この頑固な奈々子さんが僕の言う事を聞いてくれるなんてあまりないからな。でもこの風邪になって僕は新聞配達の仕事に専念できなくなって家計が苦しくなっている。でも今は我慢だ。
ちなみに奈々子さんはお母さんが亡くなってからお母さんと暮らしていたアパートを開けて僕と共同生活をすることになったんだ。
とりあえず新聞配達は出来なかったけれど、学校には行こうと思っている。
僕達中学生の本文は学業に専念しなければならない。
でも学校に行っても学業に専念している人はあまりいないのが現実だ。
でも僕達は学業に本気で向き合って、勉強をしていきたい。
僕の夢は小説家兼絵師だ。自分の小説を書いて自分が書いた表紙を描こうと思っている。
それはさておき今は風邪を完治するまで眠っておこうと思う。
再び朝起きると、奈々子さんの姿がなかった。
もしかしたら新聞配達の仕事に出かけて行ってしまったのかと思った。
「奈々子さん!奈々子さん!」
僕が慌てて呼ぶと「なあに?アツジ!?」
台所の所からひょっこりと顔を出して来た。
それを見て僕は安堵の吐息が漏れた。
「何だ、奈々子さんいたんだ」
「いちゃ悪いの?」
「いいや全然悪くないよ、ところで台所で何をしているの!?」
「あたしとアツジの分の朝食を作っているのよ!」
「病み上がりなのに大丈夫なの!?」
「さっき体温計で熱を測ってみたら、熱は平熱だったよ。だから今日は学校に行って午後から新聞配達の仕事に出かけるからね。アツジが止めても無駄だから」
「じゃあ、僕も学校に行って帰りに新聞配達の仕事に出かけようかな?」
「アツジも病み上がりなんだから、とりあえず体温を測ってからにしなさいよ」
奈々子さんに体温計を差し出された。
差し出された体温計を脇にさして体温を測ってみると、丁度七℃だった。
ちょっと微熱気味だ。奈々子さんに見られたら、学校を休むように言われてしまうかもし、そう思っていると奈々子さんは僕が測った体温計を奪った。
「ちょっと奈々子さん。何をするの!?」
「まだ微熱気味じゃない。今日はあたしの方から学校に言っておくから、今日の所は休みなさい!」
「大丈夫だよ。これぐらいの熱」
すると奈々子さんのピンタが僕の頬を直撃した。
「何を言っているのアツジ君、あたしが微熱の時に新聞配達の仕事をしようとしたときに同じことをしたよね!」
「・・・」
僕は何も言えなかった。
「だからアツジ、今日の所は学校も新聞配達の仕事も休んでよね、でないとあたしがアツジを半殺しにしてでも止めるんだから!!」
今奈々子さんの口から半殺しと言う言葉が舞い込んだ。
奈々子さんの目を見てみるとギラリと光る鋭い目をしていた。
そんな目で見られると僕は怖かった。
もし奈々子さんに黙って学校や新聞配達の仕事に出かけて行ったら、僕は殺されてしまうかもしれない。
そして僕と奈々子さんは朝食を取り、奈々子さんは学校に出かけて行ってしまった。
僕はこのまま眠っていないといけないんだろうな。その間、勉強をしたり、絵や小説を描いたりしていた。
そんな事をしていると時間はあっという間に過ぎてしまい、お昼になってしまった。
まあ、学校には行かずに自分の好きな事が出来て僕はこのように休んでも悪くないと思えた。
もう一度体温を測ってみると、熱は下がっており六℃七分を示していた。
奈々子さんにラインで熱が下がったから新聞配達の仕事に出かけても良いかな?とラインでメールを送ったら、『安静にしていないと半殺しだから』と言われて身の毛がとがった。
安静にしていないとダメかあ。安静にしていないと奈々子さんに僕は殺されてしまうかもしれない。殺しはしないがすごくとんでもない仕打ちを受けるだろう。
だからこの機会に勉強を進めて小説や絵も描いて過ごしていた。
そんな事をしていると急にお腹が空いてきた。
何か食べたいなと思って冷蔵庫を開けると、ラップしてあるおにぎり二つ入っていた。それにさし手紙も。読んで見ると『お昼お腹がすいたらこれをチンして食べてね』と書いてあった。
さすが奈々子さん、本当に僕の彼女はこんなにまで優しい。
お昼ご飯の事まで考えてくれていたんだ。
早速奈々子さんが作ったおにぎりをレンジでチンして食べてみると、凄くおいしかった。
空腹と奈々子さんの愛情がこもった手料理を食べられて僕は幸せだった。
いつもはつんつんしているけれど、こういう時に奈々子さんの愛情を感じられる。
僕は愛情のこもった料理を食べて、勉強や絵や小説などを進めて家で大人しくして過ごしていた。
しばらくすると奈々子さんは帰ってきた。
「ただいまアツジ。冷蔵庫のおにぎりちゃんと食べた?」
「うん。すごくおいしかったよ」
「何大げさな事を言っているの?あたしはこれから新聞配達の仕事に出かけるけれど、アツジは病み上がりなんだからちゃんと家にいて安静にしていなさいよ」
「僕も行くよ、さっき熱を測ったら平熱だったから」
すると奈々子さんは凄い剣幕で僕に迫り、僕の頬を叩いた。
「ちょっと何をするの奈々子さん!?」
「あたしが安静にしていなさいって言ったんだから、安静にしていなさいよ」
「だから僕はもう大丈夫、っぶ!」
今度は手のひらではなく拳の握り締めて僕の頬を殴った。
今度、奈々子さんに口答えしたら、僕は殺されてしまうだろう。
「分かったよ、奈々子さん。僕は新聞配達には行かずに今日の所はお休みするよ!」
「よろしい。もし新聞配達所に来たらどうなるか分かっているよね!」
その時の奈々子さんの目は恐ろしいものだった。
だから僕は心の中で密かに誓ったのだ。絶対に新聞配達所にはいかないと。
奈々子さんは新聞配達の仕事に出かけて行って、僕は密かに勉強と小説と絵を進めていた。
そんな事をしている最中に、桃子と光さんが夕ご飯を僕と奈々子さんに作りにやって来た。
「あら、あっ君、奈々子ちゃんは?」
「新聞配達の仕事に出かけて行ってまだ帰ってきませんよ」
丁度その時、新聞配達から奈々子さんは帰って来た。
「ただいま、・・・あら、光さんに桃子ちゃん来ていたんですか?」
「今日も私と桃子ちゃんのスペシャルメニューを作りに来たんだ」
「スペシャルメニューって何ですか?」
「今日は牛肉が安く手に入ったから、すき焼きにしようと思っているんだけれどもどうかな!?」
「すき焼き!?あたしすき焼きなんて食べた事がないよ」
奈々子さんはすき焼きを食べたことがない!それはきっと貧しい生活を強いられていたからなんだよな。奈々子さんは凄くかわいそうな人だ。本人にそんな事を言ったら僕は奈々子さんに半殺しにされてしまうだろう。
とりあえず僕は病み上がりなのでおこたで絵を描いていた。
奈々子さんと桃子と光さんはすき焼きの下ごしらえをしている。
僕も混ぜて欲しいのだが、奈々子さんが許してくれない。
女性三人だと姦しいと言うのは本当の事だ。
光さんも桃子も奈々子さんも色々と楽しそうに話し合っている。
病み上がりで奈々子さんにゆっくりしていろと言われたが、あの三人の中には僕は入って行けそうにもないし、それに話にもついて行けないだろう。




