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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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互いに無理をし合う二人

 僕は真面目な顔で奈々子さんが新聞配達に行く事を必死に阻止している。


「あたしが新聞配達を休んだら、他の同僚の人達に迷惑がかかってしまうわ」


「奈々子さん!」


 僕が奈々子さんを叩こうとしたところ、奈々子さんは「ひゃ!」と声を出して顔を背けた。

 僕は手を下ろして、「とにかく奈々子さん今日の所は休んでいてよ」


「分かったわよ」

 奈々子さんは涙目で僕の忠告を受け入れてくれた。


 とりあえず奈々子さんを寝かせて、僕は新聞配達に出かけて行った。


 僕は心配だった。奈々子さんが素直に休んでいてくれたらいいなと思ったが、もしかしたら奈々子さん無理して新聞配達所に駆け出してくるかもしれない。


 新聞配達所に到着して、僕は社長に奈々子さんが今日は体調が悪いので休むと言う事を伝えておいた。

 社長はちょっと困った顔をしていたが、仕方がないので奈々子さんの分の配達先をみんなで分配することになった。


 そんな時である。奈々子さんが新聞配達所に入ってきたのだ。


「奈々子さん、何をやっているんだ。寝てなきゃダメだって言ったじゃん」


「あたしの事は大丈夫よ。もうこの通り元気元気」


 社長はそんな奈々子さんを歓迎してくれたが僕は反対だった。奈々子さんは昨日は九℃の熱を出したと言うのにこんなところで無理されて体に支障が出たらまずい事になってしまうので社長には奈々子さんを働かすことを禁じた。


「何を言っているのアツジ、あたしは元気元気」


「社長も何とか言ってくださいよ」


 社長はそんな奈々子さんを大歓迎してくれて、社長はどうやら奈々子さんの根性に感服した感じだった。


「奈々子さん、まだ顔が赤いよ、それにまだ病み上がりでしょ、病気は病み上がりがとても危険だから止めにしようよ」


「大丈夫って言っているでしょ、ね、社長」


 社長は根性のある人間が大好きな人だ。そんな病み上がりの奈々子さんを働かせるつもりだ。


「もう、奈々子さんどうなっても知らないからね」


「それはこっちのセリフよ、アスファルトは昨日の雪でまだ残っているし、気をつけなきゃ危ないんだから」


 もう奈々子さんには参るよ。

 もうこうなっては仕方がない。社長も歓迎しているし。

 僕も奈々子さんも新聞に一部ずつチラシを入れている。

 

 あれ?何だろう。何か気分が悪いぞ。

 別に気にするほどの事はないと僕は思っていた。


 新聞に一部ずつチラシを入れて、早速新聞配達の仕事に移った。

 新聞配達に出かけるのは良いが、何か頭がぼんやりとしてしまう。


 もしかして奈々子さんに風邪をうつされたのだろうか?

 とにかくアスファルトは昨日の雪が残っている。

 とにかく新聞配達を終わらせないと。


 新聞配達の仕事が終わり、僕が帰る時には奈々子さんは元気な姿で僕の事を待っていた。


「アツジお帰り・・・どうしたの?何か顔が真っ赤よ」


「何でもないよ」


 と僕が言うと、奈々子さんは僕のおでこを触ってきた。


「アツジすごい熱じゃない」


「僕は大丈夫だよ。奈々子さんは病み上がりなんだから無理はしないでね」


「それはこっちのセリフだよ。アツジあんた熱を出したんじゃない」


「熱なんて出してないよ」


 体がだるい、このままでは奈々子さんに心配かけてしまう。


「とにかくアツジ、今日の所はひとまず退散しましょう」


「分かっているよ」


 僕と奈々子さんはとりあえず僕のアパートに向かった。

 何だろう?体がだるい。

 家に到着して自転車から降りると、足元がフラフラした。


「ちょっと大丈夫アツジ」


「大丈夫だよ」


「アツジ、あたしに嘘をついていない?」


 奈々子さんに僕の嘘は通じないので正直に話す「実を言うと体がだるい」


 二階に行く階段を登る時でも足取りがふらつく。

 僕はどうしてしまったのだろう?

 部屋の中に入ると奈々子さんは僕に肩を貸してくれた。


 布団の上に横になり、咳が止まらずさらに咳をするごとに激しいのどの痛みを感じた。

 僕は奈々子さんに心配かけないように「奈々子さん僕は大丈夫だから」と言うと奈々子さんは「とりあえず体温計で熱を測りましょう」体温計で熱を測ると熱は九℃の熱を出していた。


「アツジこんなになるまで新聞配達をしていたの?あなただってあたしの事を言えないじゃない」


 ごもっともだ。


「とにかくアツジ、今日は寝ていなさい。あたしも学校を休むから」


 そうしてくれると助かる、どうやら奈々子さんに風邪をうつされてしまったようだ。奈々子さんの事に対して奈々子さんに熱をうつされたなんて言ったら、奈々子さんは怒りだしそうで言えなかった。


「奈々子さんも病み上がりなんだからとりあえず、奈々子さんも熱を測ってごらんよ」


 奈々子さんも熱を測ってみると、六℃で熱はどうやらひいてしまったみたいだ。

 奈々子さんを看病する僕なのに僕が風邪をひいてしまうなんて本当に間抜けな話だ。


「アツジ、とりあえずお医者に行こう」


「分かったよ。それと奈々子さんも見てもらうんだよ」


「あたしだったら大丈夫だよ」


 今日は学校を休むことになり、僕と奈々子さんは僕の風邪がうつらないようになるべく距離を取って過ごすことになった。


 とりあえず朝ご飯は奈々子さん特性卵がゆを作ってくれた。

 食べてみると意外とおいしくいただけて本当に良い彼女が出来て僕は嬉しかった。

 病院が始まるのは九時だ。奈々子さんのお母さんが急死した病院は避けて、近くのクリニックに行く事になった。


 雪の中僕と奈々子さんは歩いて、近くのクリニックまで行った。

 その間咳が止まらず、咳をするたびにすごい喉の痛みを感じた。


 クリニックに入ると、中にいる患者さんたちは皆高齢の人ばかりで、何か違和感を感じていた。


「とにかく奈々子さん、奈々子さんは熱はなかっただろうけれど、昨日の表情をちゃんと言うんだよ」


「何言っているの?あたしはもう熱なんてないよ、熱があるのはアツジでしょ」


 そんな事を話しながら受付に行き、僕と奈々子さんは受付で体温計を渡されて体温を測らせられた。


 改めて測ってみると僕の熱は下がっていて八度の熱にまで下がっていて、奈々子さんの体温は少し微熱で七℃の熱があった。


「奈々子さんも熱があるじゃないか」


「あたしのは微熱よ、もしかしたらアツジあんたがあたしに熱をうつした可能性もあるんだからね」


「だから、そうならないように距離を取っているじゃないか、奈々子さんも病み上がりなんだからあまり動かない方が良いよ」


 そんな時である僕の携帯のラインに一通のメールが届いた。

 ここは病院だから、携帯とかは行けないと思って僕が外に出てラインを確かめようとすると奈々子さんが「アツジ何をやっているの?」「いや一通のラインが届いて」


「誰からなの?」


「分からないもしかしたら光さんか桃子かもしれないから、とりあえず病院の中で確認するわけにはいかないからいったん外に出るね」


「あたしも行くわ」


「ちょっと奈々子さん、風邪がうつっちゃうよ」


「大丈夫よ」


 そういって僕と奈々子さんはラインを確かめるために外に出た。

 病院はとても暖かかったので、外に出るとこんなにも寒いなんて。


 それよりも一通のラインを調べてみると、意外な人物だった。

 それは先日友達関係を築きに来た西宮さんからだった。

 内容を見てみると、


『ヤッホー今日は学校に来なかったけれど、何かあったの?』


 と言うメッセージだった。

 奈々子さんが内容と差出人を見て「あんた達いったいどういう関係なの?」


「知らないよ。僕は彼女にラインの番号を教えた覚えはないから」


 すると奈々子さんはその目を細めて「何かやましい事を考えていると為にならないわよ」


「僕と西宮さんは奈々子さんが考えているような特別な関係はないよ」


 僕の顔をじっと見つめてくる奈々子さん。それで「どうやらそれは本当のようね」と信用してくれて僕はホッとした。

 それよりもなぜ西宮さんが僕のラインの番号を知ったのかが不明だ。


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