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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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器の大きい人

 光さんは女神様スマイルで僕達に対応していたが、光さんのその笑顔の裏の涙に添えるものなんて何もない。

 光さんだって悲しいに決まっている。

 僕はエイトマンを殺した小柳を許すわけにはいかない。

 

 そんな時だった僕の携帯が鳴った。

 それに着信画面を見ると、非通知になっていた。


「もしもし木之元ですけれど」


 携帯の音声からはピッガガッと言うような壊れた機械音のようなものが響いた。


 そこで僕はピンと来た。「お前小柳だろう」


「ご名答だよ木之元、俺は絶対にお前の事を許さない。まずはお前の大事な者から片っ端から片づけてやるからな」


 そう言って小柳は通話を切った。


 そこで光さんが「小柳だったの!?」


「うん。小柳だった」


「小柳はなんて」


「僕の大事な者を片っ端から片づけると言っていた」


 そこで菜々子さんが「何か気配を感じない!?」


『気のせいじゃないか?』と言いたいところだが、本当に菜々子さんの言うとおり気配を感じる。


「本当だ、何か強烈な殺意のような気配を感じる」


 と光さんが言う。


 すると英明に窓ガラスが割れる音がした。


 強烈な音に、恐怖まで感じてしまう。


 ガラスが割れる音がする部屋に行くと、豊川先生がいる部屋だった。


「豊川先生、大丈夫ですか?」


 僕が言うと豊川先生はケロッとしていて、何も恐怖を感じていない様子だった。

 豊川先生はその石を拾い、紐でくくりつけられた手紙が入ってた。

 先生が手紙を手にして読み上げる。


「お前達三人アツジ、菜々子、光は千葉のヨットハーバーに来い。

 宛先を見るとグロウと書かれている」


「グロウってあのテロリスト集団のグロウ!?」


 光さんが怯えながら言う。


「そのグロウって何なの?」


 と僕が光さんに問いかけると「グロウは警察でも手が出せない、日本のテロリスト集団よ。まさか小柳って子が裏の手の者と手を組むなんて」光さんは平常心を保っているが、手が震えている。きっと悲しみと恐怖に満ち満ちているのだろう。


 そこで菜々子さんが「そのグロウって言う集団がなぜあたし達に?」


 豊川先生は「多分、少年院でグロウの人に知り合ったのかもしれない。

 でも大丈夫だよ」


 すると光さんは安心した顔に戻った。


「光さん、怖くないの?」


 僕が言うと、「豊川先生が大丈夫って言ったら大丈夫だよ」と光さんは言う。


「僕の知り合いにグロウの幹部がいるからね」


 と豊川先生は言う。

 豊川先生はそんな人と知り合いだなんて、この人は本当に何者なのだ?


 光さんに豊川先生は「その人を紹介してあげても良いけれど、ただじゃダメだね」


「分かりました」


 と光さんは何と取引をしたのか分からないが、それが謎に思えた。


「さて、ヨットハーバーまで今から君達三人を乗せて行くから準備して」


 僕と菜々子さんは電話で新聞配達の仕事を今日の午後は休むと言って準備に取りかかった。


 僕と菜々子さんと光さんは豊川先生が乗るワゴンに乗って、早速僕達は千葉のヨットハーバーに向かった。


 光さんは言っていた。豊川先生の大丈夫は信憑性があるって。それは光さんが言う大丈夫よりも効果的なのかも知れない。


 でも僕は正直に怖い。


 そのグロウって何者なのか?

 それにグロウって言うテロリスト集団に僕達が目を付けられるなんていったいどこまで危ない橋を渡らせる気だ。

 車が走る助手席に光さんが座っている。

 そうだ。光さんと豊川先生は師弟の関係だと菜々子さんに聞いた。光さんと豊川先生の間にどんな因果関係が存在しているのか僕は気になったが、今はその小柳と手を組んだグロウに立ち向かわなくてはいかない。

 豊川先生は車からラジオの番組をならした。

 ちょうどその時、エイトマン事、吉永春男を刺した人物が出頭してきてその男の名前は工藤真一(23)と報道されていた。


 そこで光さんが、「小柳の奴、工藤って言う奴を利用したみたいだね」


 僕の心の底から憤りを感じた。


 豊川先生が運転するワゴンに暴走族に囲まれた。

 暴走族の人間は多分僕達が乗っているのを悟ったみたいだ。

 それに小柳の奴豊川先生がグロウの幹部と知り合いだと言うことを知ったのかもしれない。


 暴走族達は豊川先生が運転するワゴンに蹴りを加えたり、鉄パイプで窓ガラスを割ったりしてきた。

 しかも豊川先生が運転する後ろから、あおり運転を仕掛けてくる黒い車が走行してきた。

 奴らのターゲットは豊川先生と僕達三人みたいだ。


 豊川先生は言う「ヨットハーバーにさえ到着すれば」と悔しそうにしている。


 奴らは僕達を事故らせて殺すつもりだ。

 きっと奴らは知らないだろう、運転しているのがグロウの幹部の知り合いだと。

 もしかしたら小柳は豊川先生がグロウの幹部の知り合いだと言う事を知ってやっているのかもしれない。

 菜々子さんは怯えて僕にしがみついている。


「アツジ怖いよ」


 と悲鳴を上げている。

 こんな時僕は何も出来ずに、菜々子さんを抱きしめる以外何も出来なかった。

 光さんの方を見てみると、手を絡ませてお祈りをするかのポーズを取っている。

 きっと光さんも怖いんだ。

 それに運転する豊川先生も。

 そしてヨットハーバーが見えてきた。


「こ、こいつらをヨットハーバーに近寄せるんじゃねえ」


 と小柳の声が聞こえてきた。

 それはバイクも黒で服装もヘルメットも黒だが、その声は小柳に間違いないと僕は分かった。

 やはり小柳の奴、豊川先生がグロウの幹部と知り合いだと言うことを知っている。

 きっと電話をしたときには彼の事を知らなかったのだろう。じゃあどこで豊川先生がグロウの幹部の知り合いだと分かったのだ?

 どこかに盗聴機があるのか分からないが、とにかく僕はあきらめない。


 そこで僕は大声で「おい。お前等、この人が誰なのか知っていての蛮行か分かっているのか?この人は豊川英治だ」と僕はダメもとで叫んでみた。

 するとバイクとあおり運転をしてくる車がひいていった。

 バイクは全体真っ黒の小柳だけが残った。


「くそ野郎」


 と小柳は捨て身の攻撃に走り、豊川先生が運転する車に飛び移ってきた。

 小柳は懐から火炎ビンを取り出して、そのさきっちょの布に火をつけようとしたところ、豊川先生は急ブレーキをかけて、その勢いで小柳は体制を崩して、割れた窓からすから落ちていった。

 そして僕達は無事にヨットハーバーまで到着した。


 ヨットハーバーまで到着すると、拳銃を構えた連中に囲まれて、僕達は手を挙げた。


 そこで、「やめろ、そのもの達に拳銃を向けるな」と言った者の先を見てみると、白髪でオールバックのじいさんが言った。


 豊川先生は車を降りて、「斎藤さん久しぶり」


「何じゃお前さんは、そんな姿になっても余裕でいられるのは相変わらずにたいしたものじゃのう」


 と笑っていた。斎藤。

 僕達にとっては笑い事じゃないのに、これで一件落着な気がした。


 その後の事を簡潔に説明しよう。

 小柳は豊川先生の事を良く知らなかったのが今回の落ち度となった。

 それで小柳は途中で豊川先生がグロウの幹部の斎藤さんの知り合いだと言う事を知らなかった。

 それに仲間達も。

 だから僕達を豊川先生ごと抹殺してしまおうと考えたのだ。

 それで斎藤さんは小柳をコンクリ詰めにして、海に沈めようと提案したが、それを豊川先生の力で却下させた。

 僕と菜々子さんはその方が良いと思ったのだが、豊川先生と光さんの器にはびっくりさせられる。

 豊川先生と光さんは小柳にもう一度チャンスをあげようと言うのだ。

 僕と菜々子さんはこんな奴、海に沈めて殺した方がましだと考えたが、豊川先生と光さんはそれをしなかった。


 そして僕達にまた新たな平和が戻ったが、図書館の公園の入り口に、光さんは百合の花を添えて祈っている姿を見て、僕も菜々子さんも切なくなった。

 エイトマン事、吉永春男の素性は体育大学で体育の先生になるために勉強していたみたいだ。それで休みの日を利用して、光さんにストーカー行為をしていたらしい。

 光さんは最初は怖かったらしいが、エイトマンは悪い奴ではなかった。

 光さんは言っていた。

 もっと私にアプローチすれば、友達にはなってあげようとしたかったと。


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