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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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時がすべてを解決してくれる

 僕は安井を殴り続けた。

 本当にこのままでは安井は死んでしまうかもしれない。

 でも僕は今までいじめられた分、安井に殺す気で殴り続けた。

 安井と僕とのケンカに手出しをする奴はいなかった。


「お、お前ら何見ているんだよ。とっとと長谷川の奴から助けろよ」


 泣きながら安井は自分の仲間達に言いかける。

 だが安井が僕に攻撃を喰らっていたとしても、手出しをするものはいなかった。

 そこで篠原先生が入ってきて。


「何をやっているんだ。長谷川に安井」


「先生助けてよ」


 泣きながら先生に懇願する安井。

 何て情けない人間なんだ。こいつは一人じゃ何もできないただの弱虫だった事がここで判明した。

 こんな奴に僕は今までいじめられていたことに腹が立った。

 先生が来たからには仕方がない、やめるしかないだろう。

 もう少しで憎き安井を殺すことが出来たのに。

 多分篠原先生は安井の肩を持つのだろう。

 こいつの父親は元市議会員の息子なのだから。

 僕と安井は篠原先生に呼び出しをくらって職員室のまるで取り調べ室に向かった。


 僕と安井は並んで座らされて、向かいに篠原先生が座っていた。


「おい、安井、また長谷川の事をいじめたんだろう!」


「違うよ。こいつに挨拶をしようとしたらいきなり殴られたんだよ」


 適当な嘘を並べやがって、どこまでも腐りきった人間だ。


「本当なのか?長谷川」


僕は黙っていた。どうせ、こいつの言う事だからどんな嘘も肯定されてしまってもはや真実を証明してくれる者はいないだろう。


「おい、聞いているのか長谷川!」


 隣で僕の顔を薄ら笑いながら見てくる安井に腹は立ってくるが、それでも僕は黙っていた。

 そう、こいつのやった事は真実なんてもうないのだ。だから僕は黙っていた。


「だったらクラスメイトに聞いてみるがそれでも良いか?」


「好きにすれば良いですよ」


 僕は立ち上がり、職員室の職務質問室から出て行った。


「おい。待てよ長谷川」


 呼び止める篠原先生の声を無視して僕は立ち去っていた。

 まだ昨日安井達につけられた痛みが残っている。

 そう、真実なんてどこにもないのだ。

 自分のクラスに戻ると、クラスメイト達に聞かれた。


「あたしは、長谷川君が悪いなんて思ったりしないから」「あのバカ(安井)からケンカで勝つなんてすごいね長谷川君」等々男子や女子に囲まれて僕は賞賛を浴びた。


 そして僕の担任の篠原先生はクラスに戻ってきて、「さっき、安井が言っていたがみんな正直に言ってくれ、朝長谷川が安井に挨拶しないから長谷川から暴力を受けたと聞いた。これは本当の事なのか!!?」


「先生、いつも安井君の仲間達と共に長谷川君をいじめをしていました」


「やっぱりそうか。安井、お前はいつも長谷川の事をいじめていたんだな」


「はぁ、いじめてませんよ。お前らも嘘をつくのをやめろよな」


 するとある女子生徒が「いつもあんたの思い通りになるとは思わないでよね」


「何いい加減な事を言っているんだよ!」


「いい加減な事を言っているのはあんたの方でしょ」すると男子女子のみ変わらずに「そうだそうだ」と声を張り上げた。「長谷川君は何も悪くないよ。篠原先生、そいつの父親が市議会委員の息子だからって、ひいきし過ぎよ」


 そして篠原先生は「だってさ、安井君」


 安井はもうそれで半べそ状態だった。


 こんな情けない奴に僕はいつもいじめられていたのか?


 僕は安井への憤りがすぐに治まってしまって、安定した。


 そして授業が始まり、何度か問題に答えさせられたが、僕は全問答えられた。

 元ライバル兼恋人同士の奈々子さんと競い合ったからね。それに光さんの小テストはちゃんと実力が付くように作られているみたいだ。

 僕は肉体的にも精神的にも強くなれた気がした。


 お昼休みに給食が始まる。

 その時、僕はクラスメイト達に賞賛された。

「凄いね長谷川君。あの安井をやっつけてしまうなんて」「あいつは市議会員の父親がいなければ何も出来ない奴だよ」等々。

 ほんの少しの勇気が僕を今まで学校に出会ったいじめがなくなった。


 それはそれで僕は嬉しかった。

 でも僕はこんなに幸せになっても良いのだろうか?

 いや、良いんだ。もう奈々子さんの事は忘れてこの学園生活を僕は堪能してみたい。

 奈々子さんもお母さんの悲しみからは時と言う物が解決させてくれるだろう。

 悲しいのは奈々子さんや僕達だけじゃない。

 みんながみんな学校が嫌いな人もいれば好きな人もいるように。

 僕はどちらかというと今日から学校と言う物が好きになってきた。

 勉強も嫌いではないし、絵も小説もみんなには内緒だが帰ったら描こうと思っている。

 何かをしたいことに人にとやかく言われる筋合いなんてないんだ。

 僕はこの学校で学ぶことが出来るかもしれない。

 もうあの図書館に行く事はないだろう。

 それと一度あの図書館に言って光さんは僕の事を心配しているかもしれない。

 もしそうだったら、一度図書館に言ってちゃんと学校も行っているし、今日からまた新聞配達の仕事をしているって元気な姿を見せてお別れをしたいと思っている。

 奈々子さんとは残念なお別れの仕方をしてしまったが、今頃奈々子さんは泣いているかもしれない。僕には奈々子さんの涙に添える花はない。だから奈々子さん、時と言う物が奈々子さんに悲しみから解放してくれると僕は思っている。

 さて僕も給食を取りに行こう。


 僕が給食を取りに行くと、今日はカレーライスみたいだ。

 委員長の女子で名前は知らないが、クラスのマドンナの通称なでしこさんと呼ばれている人だ。そんな女子が僕のカレーライスを大盛にしてくれた。


「ちょっと委員長さんこんなに食べられないよ」


「何を言っているのよ、今朝安井君とのケンカでエネルギーを使ったでしょ。それに成長期なんだからたんとお食べなさい」


「ありがとう」


 そういうとなでしこさんは光さんに似た笑顔を見せてくれた。


 給食が終わり、なでしこさんが大盛に盛り付けてくれた量のカレーライスを食べてもう動けない状況だった。掃除の時間になり、今日の僕の掃除は体育館の掃除になった。ダスキンで体育館の床の清掃に励むのだった。

 もう僕をいじめるものはいなくなっていた。


 午後の授業は英語で受動態能動態がテーマだった。

 僕にかかればそんなのお茶の子さいさいで答えられない問題はなかった。

 だって僕は二年生だけど三年生の勉強もしているからね。

 光さんと奈々子さんに感謝だな。


 五時間目の授業が終わって、今日の授業はこれまで見たいだ。


 僕が帰ろうとすると篠原先生が僕の所にやってきて、「長谷川、ちょっと良いかな?」


「はい」


 僕は篠原先生に誰もいない家庭科室に連れていかれた。


「お前がいじめに会っていた時俺は何も出来なくてごめんな!」


「大丈夫ですよ。僕はもう安井のような奴にいじめられることはないですから」


「そうか、じゃあ、また明日学校に来られそうか?」


「はい」


「じゃあ、明日また学校で待っているからな」


 そして僕は篠原先生と別れて誰もいない家庭科室を後にした。


 さて帰ったらまた新聞配達の仕事をしなければならない。


 僕が住むアパートに到着すると、桃子が連れて来たのか光さんがいた。


「こんにちはあっ君」


「こんにちは」


 と僕は挨拶をする。


「桃子ちゃんから聞いたよ。またいじめにもあっているにも関わらずに学校に行っているって」


「もう僕は学校でいじめに会うような間抜けな人間じゃないですよ」


 すると光さんは僕の肩を小突いてきた。


 昨日安井達につけられた痣が残っていたのだ。僕は「うっ」とうめいた。


「そんなにやられるまでに学校に行く事はないんじゃない?」


「僕は大丈夫ですよ」


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