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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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僅かな可能性を信じいて・・・。

 早速洋平さんは雅子お母さんの骨髄が合うか検査してもらっている所だ。

 奈々子さんは神様に祈るように手を合わせて祈っている。

 僕も洋平さんが雅子お母さんの骨髄が合う事を祈っている。


 そして洋平さんは検査室から出てきた。


 そこで奈々子さんは洋平さんに「骨髄は合いましたか?」


 そこで僕が「合うかどうか、明日になってみないと分からないでしょ」


 洋平さんは「私も合うかどうか分からないが兄弟として私は力を貸す」と何とも心強い言葉をくれた。


 そこで奈々子さんは神様に祈るように目を閉じて手を合わせた。

 その姿は可憐で僕の心を奪うような仕草だった。

 奈々子さんは本気だ。だって唯一の親族だからね。

 でも奈々子さんの親族は奈々子さんのお母さんを助けるためにこうして助けてくれる浩二さんや洋平さんなどがいる。

 奈々子さんは一人じゃない。それに僕もついている。

 神様お願いです。奈々子さんのお母さんを助けてください。

 僕は奈々子さんが悲しみに打ちひしがれる姿何て見たくはありません。

 後は洋平さんの骨髄が奈々子さんのお母さんの骨髄が一致するのが分かるのは明日だ。


 奈々子さんは「あの洋平おじさん。本当にありがとうございます」


「まあ、お礼を言うならまず最初にアツジ君や浩二にしなさい。この人たちがいなければ私の所に来れるはずがなかったのだから」


「ありがとう。浩二さんにアツジ」


「僕は親族じゃないからそんなに役に立っている事はないよ」


「でもアツジがいなかったら、本当に浩二さんや洋平さんに合う事は出来なかったよ」


 そこで洋平さんが「喜ぶのはまだ早い、聞けば骨髄が合うのは兄弟間で四分の一の確率なんだろ。だからまだ喜ぶのはまだ早い」


 洋平さんの言う通りだ、洋平さんの骨髄が合うかはまだ分からない状況だ。

 今日はまた眠れぬ夜に苛まれそうだ。

 それは奈々子さんも一緒かあ。

 明日になるまで洋平さんは洋平さんを守る子分たちと一緒にビジネスホテルに泊まり、浩二さんは実家に帰ることになった。


 それで明日の九時に病院が開くので病院に九時に集合となった。

 奈々子さんは一人になりたくないと言い出したので、僕の家に泊まることになった。


 時計は午後五時を示していた。


 奈々子さんは僕のベットの上で、うつぶせになっていた。

 きっと頭の中はお母さんが助かることを祈っているのだろう。

 僕は余りものの食材でペペロンチーノを作った。


「奈々子さん夕飯出来たよ」


 と呼ぶと奈々子さんは僕のベットの上で相変わらずうつぶせ状態だ。


「奈々子さん。気持ちは分かるけれども、何か食べないと身が持たなくなるよ」


 すると奈々子さんは立ち上がって、その目を見てみると、瞳に輝きがともされていなかった。奈々子さんはよっぽどお母さんの雅美さんが助かるかどうか不安に思っているのだろう。


「大丈夫だよ奈々子さん。お母さんの骨髄は洋平さんと合うから」


「どうしてそんな事が言えるの?」


 僕を責めるように言う奈々子さん。


「どうしてって・・・」


 僕は言葉に迷ってしまった。

 そうだよな骨髄があう兄弟はあくまで百パーセントではないんだよな。

 だから僕は言葉に迷ってしまったが、これならどうだと言って、その場で踊りを踊った。


「大丈夫だ~大丈夫だ~」


 と言いながら僕も可笑しくなるように踊った。


 すると奈々子さんは笑ってくれた「何やっているのアツジ、あなた本当に正気なの?」笑ってくれて僕は最高にハッピーな気持ちになった。


 そして踊りをやめて「これでも食べながら、とにかく元気を取り戻してよ」


「そうだね。さっきから食欲がなかったけれども、アツジの作ったペペロンチーノおいしそうだから食べるよ」


 そういって、奈々子さんの瞳に僅かなマッチのような小さな明かりがともったように見えた。


 食事を食べ終えてついに明日だ。

 明日洋平さんの骨髄と雅美さんの骨髄が合うのが分かるのは。

 僕も緊張している。本当に合わなければ奈々子さんは悲しみに打ちひしがれるだろう。


 そして明日になり、僕達は起きて、病院の方へと向かった。

 時計は午前八時を示している。

 奈々子さんは昨日と同じように手を合わせてお祈りをしている。


「どうか、洋平さんの骨髄がお母さんと合いますように」


 奈々子さんは切実な思いでそういっている。

 今はどうやら祈る事しかできない。


 そして病院が開いて、中に入ると、奈々子さんは走ってお母さんが入院しているところまで走っていった。

 通りすがりの看護婦に「廊下は走らないで」とその注意も聞くこともなく、奈々子さんは走って三階の病室に行く。

 僕もその後を追う。


 本当に奈々子さんのお母さんの骨髄と洋平さんの骨髄が合えば良いのだが・・・。

 いや合うに決まっている。


 そして奈々子さんはお母さんが入院している病室に入り、お母さんはホステスの仕事を放棄してまでいてくれた。


「お母さん!洋平さんの骨髄と一致した!?」


「さあ?まだ分からないわ?」


 素っ気なく言う奈々子さんのお母さん。


「何でそんなに素っ気ないの?お願いだからお母さん。もっと自分の事を大切にしてよ」


 お母さんに泣きながら訴える奈々子さん。


 そして医者が現れて、奈々子さんは「洋平さんの骨髄とお母さんの骨髄は合いましたか!?」


 医者は黙っている。そしてその口を開いた。


「残念ながら洋平さんの骨髄と東雲(しののめ)さんの骨髄は合いませんでした」


 医者もその事を伝える事がどんなにつらい事なのか分かっているような仕草だった。


「・・・」


 言葉を失う奈々子さん。

 僕も言葉を失い涙が込み上げてきた。

 どうして?神様は残酷な真実しか与えてくれないのか?


 そして洋平さんが現れて「事情は聞いたよ。私の骨髄は雅美と合わなかったのだろう」


「嘘よ。先生はあたしの事をからかっているんでしょ」


「奈々子さんからかってなんかいないよ。そんな卑劣ないたずらをする医者なんてどこにもいないよ」


 奈々子さんはその場で泣き崩れてしまった。


 そこで洋平さんが「まだ、諦めるのはまだ早い。どこにいるのか分からないが美奈子がいる」


 これが最後の希望なのだろう。

 何ならいい。わずかでもマッチ一筋の希望の光でも構わない。まだ、行方をくらましている美奈子さんがいる。


 泣き崩れている奈々子さんを僕は「奈々子さん。諦めるのはまだ早いみたいだよ」


「もうダメよ。美奈子さんは行方が分からなくなっているんでしょ」


「だから豊川先生のところに行こう。もしかしたら先生なら見つけられるかもしれない」


 そこで洋平さんが「アツジ君と言ったね、君は豊川さんを知っているのか。いやその豊川は裏の組織じゃあ私よりも格段に上の方に立っている人物だ」


「洋平さんは豊川誠二と言う人を知っているんですか?」


「豊川誠二、君たちは豊川誠二の何なのかね!?」


 驚いた顔をしている洋平さん。


「僕達は豊川誠二先生から教えて貰ったり助けて貰ったりもしました」


「君達は豊川誠二の教え子と言う事か?私もあってみたい」


「奈々子さん。豊川先生に美奈子さんの居場所を探してもらおうよ。豊川先生は僕達の恩師であり何度も僕達を助けてくれたじゃないか」


「もうダメよ。あたしは洋平さんの事を信じていたのに」


「骨髄が合わなかった事は残念だけど。きっと豊川先生なら僕達が探す美奈子さんは見つかるよ」


「でもあたしは豊川先生にどういった礼をすればいいか分からないし、仮にその美奈子さんが見つかっても骨髄が合うとは限らないでしょ!!」


「まだ。希望を捨てるのは早いでしょ。最後の望みかもしれないかもしれないけれど、豊川先生に頼みに行こう」


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