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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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 洋平さんは妹の美奈子さんと言う人を探す為にこの組の組長になったと言っている。

 興信所も洋平さんも美奈子さんの事は分からないと言っている。

 でも洋平さんは僕達に力を貸してくれると言っている。


「じゃあ、洋平兄さん、早速雅美の所に行かないか?僕の車で」


「それはまずい、私はこの組の車で雅美の所に行こう。行先宛を教えてくれれば行くよ」


 洋平兄さんは奈々子さんのお母さんの入院している病院の住所と念のために住んでいる場所まで教えた。


「分かった、とりあえず、雅美が入院している病院まで、行けば良いのだな?」


「うん頼りにしているよ、洋平兄さん!」


 そこで奈々子さんが「洋平さん本当に本当にありがとうございます。あたしは東雲(しののめ)雅美の娘であり東雲奈々子と言います」


「なるほど、君が雅美の娘かあ、君がお母さんを助けたいばかりに私や浩二や雅子を訪ねたと言う事だな」


「はい。そうです。どうか私のお母さんの雅美を助けてあげてください。私にはお母さんしかいないんです」


「大丈夫だよ。浩二も私もついている、それにそこの男の子の名前をまだ聞いていなかったな」


「僕はアツジと申します」


「アツジ君、君は本当に奈々子の事を愛しているんだろう」


「はい。愛しています」


「奈々子、君はこれから色々な良い人にめぐり合えるだろう」


「はい。だからお母さんを助けてあげてください」


「そう焦りなさんな。それに私の骨髄が雅美と合うとは限らないのだから」


 そんな時である。「東雲組組長、その命貰った!!」と言って拳銃を構えるヤクザ。


「みんな伏せていなさい!」


 僕達は言われた通り伏せた。


 僕は伏せながら見ていたが、拳銃を構えるヤクザは拳銃の引き金を引こうとしたところ、スアマを持った皿を洋平さんの命を狙うヤクザに向かって投げつけた。

 すると皿は洋平さんの命を狙うヤクザの眉間に当たり、ヤクザは拳銃を落として、その隙に洋平さんは胸に隠し持っていた拳銃を洋平さんを狙うヤクザの眉間を打ち抜いた。

 当然ヤクザは死んでしまった。


「何事です組長!」


 銃声に気が付いた、子分たちがやってきた。


「私の命を狙ってきた愚か者だよ。その愚か者をどこかに捨ててこい」


「わかりやした」


 僕と奈々子さんと浩二さんはその光景を見て、驚きすぎて声も出なかった。


「どうだ。私はいつも命を狙われている。君たちを巻き込むかもしれない。それでも私の後についてくるか?」


 興信所の人と浩二さんの言う通り、この洋平さんと言う人は危険な人物だと言う事は分かった。でも奈々子さんのお母さんの雅美さんを助けられるのはもう洋平さんしかいないでも、今の光景を見て僕達は何とも言えなかった。


「危ない橋を渡りたくなかったら、この件はなかった事にしても良いんだぞ」


 そこで奈々子さんは「いいえ、力を貸してください。あなたの力を借りなければ、あたしのお母さんは死んでしまう」


「そうか。そこまで言うなら力を貸そう」


「ありがとうございます」


 今の一件で人一人の命が奪われてしまった。

 でも僕達には関係のない事だ。

 とにかく雅美さんを助けるには洋平さんの力が必要なのだ。


僕達が外に出て浩二さんの車に乗り込むと、組長である洋平さんを守るために何十台もの車が動き出す。

組長である洋平さんを援護するためにみんな一丸となっている。

僕達も危ないからと言って、洋平さんが乗る車の前後に黒いベンツの車が走っている。


「奈々子さん、どうやらとんでもない事になっているんじゃないかな?」


 僕はかなり怖かった。


「アツジも怖いの?」


「うん。正直怖い。でも雅美さんを助けるために手段を選んでいられないよね」


 本当に興信所と浩二さんの言う通り東雲洋平は危険な人物だと言う事は分かった。


 東雲洋平さんは何十台もの車に従わせて浩二さんが運転する車も洋平さんが従わせる車に囲まれた。


 こんなにも多くの車に囲まれて僕と奈々子さんは正直怯えていた。


 洋平さんは良い人だが危ない人物と言うのはこういう事なのか。先ほど命を狙われたのも日常茶飯事のように洋平さんは過ごしていた。

 僕が思うには洋平さんは恨みを買うような人ではいと思っている。

 でもそんな事よりも早く雅美さんの所に行って骨髄を調べて貰って雅美さんを救いに行かなければならない。


 車を走らせながら浩二さんは言う。


「洋平兄さんはどうやら任侠のある人だ。でも危険人物だと言う事は否めない」


「でもあたしのお母さんが助かるなら、私はどんな危険人物でも、その力を借りたい」


 奈々子さんは切実な思いでそういっている。

 だったら僕もその力を貸そうと思っている。

 そんな時僕の手に奈々子さんの手が僕の手を握り締めて来た。

 奈々子さんも洋平さんの事に対してすごく不安なのだろうと感じた。


「大丈夫だよ。奈々子さんお母さんは絶対に助かるから」


「アツジ・・・」


 と涙を流して僕に抱きついてきた。


 きっと奈々子さんは不安なんだ。洋平さんは力を貸すと言ったが、それに対してまだ不安なんだと。

 昨日の収容所であった雅子さんの事もあったし、思い出すだけで僕は嘔吐してしまいそうになる。

 とにかく今は奈々子さんのお母さんの雅子さんを助ける事に集中しないといけない。


 そして奈々子さんのお母さんの雅美さんが入院している病院にたどり着いた。


 洋平さんの部下のヤクザ達は洋平さんの護衛のように洋平さんを囲むように病院内に入っていった。

 周りの患者さんや看護師さん達はその姿を見てビビっている様子であった。


 そこで洋平さんが「浩二、奈々子ちゃん、アツジ君、雅美の部屋に案内してくれないか?」


「はい」


 と奈々子さんが返事をする。


 奈々子さんは洋平さんの手を引いて雅美さんの部屋へと案内した。


 僕も浩二さんもその後に続いた。


 そして部屋に行くと雅美さんの姿がなかった。


 奈々子さんは看護婦に「東雲雅美の娘ですけれども、東雲雅美はどこにいるんですか!!」と奈々子さんは血相をかきながら看護婦に尋ねる。


「東雲雅美さんだったら仕事に出かけなくちゃと言って止めたんですけれども、どうやら逃げられてしまったみたいです」


 そこで僕が「仕事って雅美さんホステスの仕事かな?」


 そんな時である。東雲雅美が病院に戻ってきた。


「お母さん、何をしているのよ」


「何をしているって仕事に決まっているじゃない」


 ホステスの仕事ってお客とお酒を飲む仕事でもある。

 だから雅美さんはベロベロに酔っぱらっている。


 そこで洋平さんが「雅美なのか?」


「あなたはいったい誰よ。あたしの名前を呼び捨てにして良いのは唯一お客だけよ」


「私はお前の兄の洋平だ」


 すると、雅美さんは一気に酔いが醒めた感じで「洋平兄さん?」と驚いていた。


「馬鹿野郎、お前は娘を残してこの世を去ろうとしているのか?」


「奈々子、それに浩二兄さん、また私の兄弟を連れて私の兄弟の骨髄は合うか調べるために洋平兄さんを連れて来たのね」


 そこで浩二さんが「そうだよ。それと雅子は廃人になってしまったよ」


「雅子姉さんが廃人に?」


「そうだ。お前の骨髄を調べるために行ったのだが、雅子姉さんはエイズにかかっていて、もう死ぬのを待つしかない状況に落ち入れられたよ」


「でも、私には関係ない事だわ」


 確かにそうだ。兄弟だからと言って関係ない事だが、あの収容所に行って雅子さんの姿を見ないとその悲惨な状態を分かり得ないだろう。

 そんな事よりも、洋平さんが雅美さんの骨髄が合うかどうか調べて貰うしかない。


 そこで奈々子さんは「洋平さん。今日はよろしくお願いします」と一礼をして洋平さんに頼んだ。


「分かったよ奈々子ちゃん」


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