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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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組長、東雲(しののめ)洋平兄さん

 ○○県○○市に東雲(しののめ)洋平は住んでいると言う。

 それに雅美さんと浩二さんの兄弟だと聞いている。それに興信所に聞いてみたが、特にたちの悪いヤクザだと聞いている。

 その洋平さんの○○県○○市に到着した。

 僕は緊張していたし恐怖の気持ちもある。

 だって相手はヤクザなんだもんな。


 興信所の人達も浩二さんもその住所を教えてもらっている。

 だから後は雅美さんと浩二さんのお兄さんに当たるヤクザの洋平兄さんの所に行くだけだ。

 奈々子さんの顔を横から見てみると、大分強張った顔をしている。


「奈々子さん、深呼吸して落ち着こう」


「そうね」


 そういって僕も緊張していたので互いに深呼吸をした。

 そして少し落ち着いた。


 さっきから路地から路地へと入り組んだ民家の道のりを車で浩二さんは走らせている。


「着いたよ!」


 そこは広々とした大きな屋敷であった。


 そこに車を置かせていると、屋敷の中からチンピラのような顔じゅうにピアスだらけの見るに耐えない男が出てきた。


「何じゃ我は!!?」


 大声で怒鳴りつけられて、僕と奈々子さんは抱き合って、震えていた。


 すると浩二さんは「わ、私は東雲(しののめ)浩二と言い、東雲洋平さんの弟に当たる者ですが洋平さんはいらっしゃいますか?」浩二さんも口調からして怯えた感じでいる。


「おめえが組長の弟だ!?」


「そうです。私は東雲洋平さんの弟の浩二でございます。ですので、兄は御在宅でしょうか?」


「今は組長は朝ご飯の最中だ。それでその弟が(かしら)に何の用だ!?」


「私の妹が白血病になりまして、兄である洋平兄さんの骨髄を調べて貰い、妹を助けるために来ました」


「おめえ、本当に頭の弟か?」


「はい、東雲洋平兄さんの弟です」


「ちょっと待っていろ」


 顔面ピアスだらけの男はそう言って屋敷の中へと入っていった。


 僕と奈々子さんは衝撃的な場面に遭遇して狼狽え抱き合っていた。


「本当に浩二さんと雅美さんのお兄さんはヤクザなんですね」


「ああ、本当にどうしようもないほどのヤクザだったんだけどな。でもヤクザの頭にまでなっていたなんて思っても見なかったよ」


 そこで僕が「そんな偉い人に力何て貸してもらえるのでしょうか?」


「今のところは何とも言えないなあ」


 すると屋敷の中から、すごいオーラを放つ黒いスーツ姿に頭の禿げた人が出てきた。

 僕はひと目で分かった。この人がこの組の頭である東雲洋平だと。

 その男は僕達が乗っている車にやってきて言った。


「お前さんがわしの弟の浩二だと言うのか?」


「洋平兄さん久しぶりだね。元気だった」


 そこで先ほどの顔面ピアスだらけのチンピラが「組長に気安く声をかけるんじゃねえ」と言うと、組長の洋平さんは顔面ピアスだらけの男に裏拳をかました。


「お前は黙っていろ」


 ただの軽い裏拳であったが、顔面ピアスだらけの男はそのまま気絶してしまった。


「おおい。わしの大切な客人が来たぞ。車ごと中に入れてやれ!!」


 すると扉が自動的に開いて中へと浩二さんは進んでいく。


 奈々子さんが「うまく行くかな?」と弱気な発言をした。


「大丈夫だよ奈々子さん!絶対にうまく行く」


 中に入っていくと来客用の駐車スペースがあり、その向こうには池に鯉が飛び跳ねていた。

 この東雲洋平と言う人物はヤクザだと聞いていたが、半端なヤクザではないと僕は思い知らされた。もしかしたら、裏の世界で顔を知られている豊川先生の事も知っているかもしれない。

 でも豊川先生の事は伏せていた方が良いかもしれない。色々と面倒な事になりそうだからだ。


 この東雲洋平はヤクザと言うより観音様のようなオーラを放っていた。

 もしかしたら力を貸してもらえるかもしれない。


 車を降りて東雲洋平から自ら案内されて僕達は大豪邸である東雲洋平の屋敷へと入っていく。


 中へと案内されて、屋敷の中はすごい豪邸で、すれ違う他のヤクザ達はすれ違うたびに、ご丁寧に一礼をする。


 そして組長室へと案内された。


 中に入ると真ん中に社長が座るような椅子が設けてあり、その中央に黒いソファーにさらに壁に習字の字で任侠と書かれた文字が大きく飾られていた。

 部屋には二人のスキンヘッドで黒いサングラスをかけたヤクザが滞在していた。


 洋平は「外してくれ。この者達と話がある」


「「へい」」


 口をそろえて、サングラスをかけたスキンヘッドのヤクザ達は組長室から出て行った。


「浩二、それにそこのお嬢さんとお兄さん、そこのソファーに座りなさい」


 僕達は洋平さんの言う通り、ソファーに座った。


「久しぶりだね、洋平兄さん」


「どうやら、君は私の弟の浩二のようだな?」


「そうだよ。僕は洋平兄さんの弟の浩二だよ」


「さっき家の者が、私達兄弟である骨髄を探しているとか何とか言っていたが、いったい何が起こっているのだ?」


 そんな時組長室が開き、一人の女優さんのような着物を着てお茶とお茶菓子を僕達に黙って差し出して、何事もなかったかのように去っていった。


「さあ、お上がりなさい。長旅で疲れただろう。疲れた時は甘いものが一番だ」


 確かに僕達は特に浩二さんは車を運転していたからすごく疲れている。だから僕達は遠慮なくお茶菓子をいただいた。

 お茶菓子は何の変哲もないスアマだったがこれが絶品だった。僕は思らず「おいしい」と口にしてしまった。


「おいしいだろう。ここはスアマの産地だからな。

 それとさっきの話の続きだが、浩二、いったい君は私に何を求めているんだ?」


 浩二さんはスアマをごっくんとお茶で流してしゃべる。


「僕達の妹の雅美を覚えているかな?」


「雅美に何か合ったのか!?」


「雅美が白血病で僕達兄弟の骨髄を探しているんだ。ちなみに兄弟間の骨髄が合う確率は四分の一と言われている」


「と言う事は浩二と雅子ではダメだったから私のところに来たのだな!」


「ああ、兄さん、僕はダメだった、それに雅子は収容所でエイズにかかって健康な状態じゃなかった」


「雅子の話は知っている。私は助け船を出してあげたが、あいつは誰の力も借りずにバブルではじけたお金数億円を返すと言って自らの体を売り、そして挙句の果てに薬物で廃人になり収容所に行ってしまったと言っている。それに美奈子の事が今は気がかりで、何とか接触しようとしたが、あいつは今危険な状態にさらされている」


「じゃあ、洋平兄さん。俺達に力を貸してはくれないか?」


「もちろん貸すよ、久しぶりに浩二と出会って私は嬉しく思っている。それに久しぶりに雅美とも会いたいからな。

 じゃが、一つだけ問題がある。

 私と関わった以上それなりの覚悟は必要とされている。

 実を言うと私は常に狙われた状態でもあるんだ」


「狙われた状態!?」


「そう。私は常に狙われた状態にさらされている。組長となるとそれは必然的な事みたいなんだ。だから私の事をみんな危険な人間と呼ばれている」


「どうして、そうまでして、危険に巻き込まれたんだ?」


「この組の中でも私の事を狙っているものもいる」


「だったら組長何てやめてしまえば良いじゃないか」


「そうはいかないんだ。私にはかわいい妹の美奈子を探す為にここまでたどり着いた」


「美奈子姉さんって僕達の長女の?」


「ああ、美奈子は私の大事な妹だと思っている。勘違いしないで聞いてもらいたいが私は浩二や雅美も大事な弟と妹だとも思っている。雅子の事は残念だが、私達は兄弟だ。兄弟だから力を貸す。そのついでに、出来ればで良いんだが、美奈子の情報があれば教えてくれ。何せあいつは私の中で一番かわいい妹だとも思っているからな」


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