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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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きらめく星空を見つめて

「そうだ。洋平兄さんに頼むしかないみたいだね」


「その洋平兄さんはヤクザだと興信所で聞きました。それにすごいたちが悪いとも言っていました」


「洋平兄さんに任侠の心があれば良いんだがな」


 任侠、弱気を助け、強気を挫く。何とも奥深い言葉なのだろう。

 そんな事を考えていると、浩二さんの携帯が鳴りだした。


「おう。尚子か、悪いがしばらくは帰れない、今の畳の下にお金があるから、この件が解決するまでそれでしのいでくれ」


 そういって浩二さんは通話を切った。


 そこで奈々子さんが「すみません。ご家族に多大な迷惑をかけてしまって」


「迷惑だなんてとんでもない。これは俺にも関係するし、もう二十年は会っていない洋平兄さんの事も気になるし」


 浩二さんと雅美さんのお兄さんに当たる、洋平兄さんは素行が悪く、ヤクザの道に走ったと興信所の人も浩二さんもその事を知っているみたいだ。

 それよりも僕は奈々子さんに言いすぎてしまい僕は「ゴメンね、奈々子さん。でも奈々子さんが悲しいと僕も悲しいからさ。とりあえず、このフライドチキンとおにぎりでも食べて元気出そうよ」


「そうね」


 そういって涙を拭って、フライドチキンとおにぎりを奈々子さんに渡した。

 奈々子さんはおにぎりにかぶりついて「おいしい」と蚊の飛ぶような小さな声だったが僕は聞き逃さなかった。

 僕はそんな奈々子さんの声を聞いて僕は何だかホッとしてしまう。

 そうだ。まだ諦めるのは早い。

 でも奈々子さんの親戚に当たる雅子さんがあのような状態を見て、思い返してみると、辛い気持ちが沸々と湧き上がってくる。

 奈々子さんはお母さんを救えなかったことは置いといて、その事にショックを受けてしまったようだ。

 確かにあれはかわいそ過ぎる。

 バブルですべてを失い、体を売って、ヤク付けにされた挙句があれだもんな。面識のなかった僕と奈々子さんもショックだよ。

 それよりも僕もおにぎりを食べるとすごくおいしいおにぎりであり、フライドチキンを食べてみると、香ばしく焼きあがっていておいしかった。

 ちょっと外に出たい気持ちになり、ちょっと寒かったが空を見上げると、満天の星空が見渡せた。


「奈々子さん奈々子さん。空を見上げてごらんよ」


 僕は奈々子さんが食事の途中だと関わらずに、奈々子さんの手を引いた。

 奈々子さんは渋々であったが、この満天の星空を見てもらいたい気持ちで「ほら、空を見上げてごらんよ」僕が言うと、奈々子さんは空を見上げて、目を丸くして驚いた表情をしている。


「凄い、綺麗ね」


 僕は指をさし、「あの青白く一番輝きを放つのがおおいぬ座のシリウスだよ。それにあれが・・・」僕が言おうとすると奈々子さんは。


「あれがプロキオンでそしてあれがオリオン座のベテルギウスでしょ。これらが冬の大三角形だよね」


「何だ知っていたのか?じゃあ、冬のダイヤモンドは知っている?」


「冬のダイヤモンド」


「そう、すべて1等星であれがふたご座のポルックス、ぎょしゃのカペラそれにおうし座のアルデバランそしてオリオン座の右下にあるのがリゲル。これらの一等性を繋げるとダイヤモンドの形になるんだよ。それに僕達が住む都会じゃあ、それぞれの一等星しか、みられないからここだと、ちゃんとふたご座やぎょしゃやおうし座をちゃんと結ぶことが出来るよ」


「アツジって星に詳しいんだね」


「僕は星が大好きだからね」


「アツジって意外とロマンテックな人なんだね」


「そうだよ。こう見えても僕はロマンテックな男なんですよ。星の事は僕は良く知っているから、今度の夏に夏の大三角形を見に星が良く見えるところまで行こうよ」


「それは良いアイディアね。あたしもアツジに星の事を教えてほしい」


「あのオリオン座のベテルギウスはもうじき超新星爆発が起こるとされているみたいなんだ。でももうしているかもしれないね。これらの星の輝きは江戸時代の物かもしれないし」


「へえー」


 と奈々子さんは興味を示してくれた。


 僕と奈々子さんはしばらく星を見上げていた。


「凄い、流れ星」


 そういって奈々子さんはお祈りした。

 お祈りする内容は鈍感な僕でもわかる。それはお母さんの白血病を治す祈りだろう。

 僕に出来る事はただ付き添う事だけだ。

 何て考えていると奈々子さんは僕に抱きしめて来た。


「奈々子さん?」


「アツジ、あたし怖いんだ。このままお母さんが永遠の闇に消えてなくなってしまうんじゃないかって」


「大丈夫だよ奈々子さん。僕も浩二さんもついているから」


 前言撤回だ。奈々子さんは僕を必要としている。ただ付き添っているだけの関係ではないみたいだ。

 奈々子さんは唯一僕にしか甘えられないか弱い女の子だ。

 空には満天の星空が見える。

 僕達はしばらく満天の星空を眺めて、浩二さんの車の中で眠りについた。


 明日は東雲(しののめ)洋平と言うヤクザの元へと行かなければならない。

 親族にヤクザがいるなんて奈々子さんもそのお母さんの雅美さんも大変な苦労をしてきたのだろう。





 そして朝になり、気が付けば車は走っていた。


「おはようアツジ君」


 浩二さんは僕に運転しながら挨拶をした。


「おはようございます」


 と僕も挨拶をする。それで、


「今、どこに向かっているんですか?」


「決まっているじゃないか、洋平兄さんのところまで向かっているんだよ」


 時計を見ると午前七時を示している。


「僕は眠っていて分からなかったんですけれど、いつから車を走らせていたのですか?」


「うん。まあ、一時間前ぐらいかな?」


「色々とありがとうございます」


「君がお礼を言うなんて滑稽だよ。僕はこの機会でみんなの兄弟の元へと行くし、それに妹の雅美の骨髄が合うかどうか調べに行かなければいけないからね」


「そうですよね。僕がお礼を言うのは滑稽かもしれませんが、僕も奈々子さんの近くにいて役に立っているつもりです」


「昨日は満天の星空の下でラブラブだったじゃないか。どうやら、奈々子ちゃんは君にしか甘えられない性分らしいね」


 そういわれて僕は少し恥ずかしかった。


「それよりも洋平兄さんに合わなければいけないんだよな。洋平兄さんはヤクザになってしまったって言うが、洋平兄さんはとても素行が悪かったけれども、子供の頃、よく俺はいじめられて、よく洋平兄さんに助けてもらったことがあったよ。だからヤクザとしての任侠あると俺は信じているんだがな」


「その洋平さんは○○県のとある街に住んでいると聞いていますが?」


「ここからだと三時間はかかるよ」


「大丈夫なんですか?こう何時間も運転して?」


「君に心配されるほどやわな俺じゃないよ」


「すいません。差し出がましい事を言ってしまって」


「気にしないでくれよ」


「はい」


「それとこれを二人で食べると良いよ」


 信号に差し掛かり、食料が入っているだろう袋を僕に手渡した。

 中を見てみるとフランクフルトにから揚げが入っていた。それに奈々子さんの分と二人分。

 僕と奈々子さんは後部座席に座って、奈々子さんの方を見てみると気持ちよさそうに眠っている。

 昨日は遅かったからもう少し眠らせておこう。

 ヤクザの洋平さんかあ、本当にどんな人なのだろう?

 実を言うと僕はちょっと怖かったりもしている。

 でも奈々子さんのお母さんの雅美さんの為だ。そんな事を言っている場合じゃないだろう。でもやっぱり怖い。とりあえずもう朝だ。とりあえず気持ちよさそうに眠っている奈々子さんを起こして浩二さんに買ってもらった食料を食べる事にした。


「おはよう。奈々子さん」


「うん、おはようアツジ」


 そういっている間にもヤクザの洋平さんのところへと進んでいく。


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