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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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兄弟の絆

 早速僕と奈々子さんと浩二さんと雅美さんとで、病院に行くことになった。

 バスに揺られて二十分僕達は浩二さんの骨髄が合ってドナーになる事を僕は真剣に祈った。

 病院にたどり着き僕は緊張していたしそれは奈々子さんも同じだと思う。

 奈々子さんは怖いのか、僕の手を握ってきた。

 僕は大丈夫だよと言う念を込めてその小さな手を握り返した。


「じゃあ、行こう。浩二さん、今日はよろしくお願いします」


「こちらこそ」


 僕は偉そうに頼んでしまったが、一応僕は部外者なんだよな。


 とりあえず、医師の相談で奈々子さんの母親の雅美さんは大事を取るために入院することとなった。

 奈々子さんのお母さんは今は元気だが、このまま無理をすると病態が悪化してしまう可能性もあるからだ。

 奈々子さんのお母さんはお金の事を気にしていたが、奈々子さんと浩二さんがお金の事よりも命を大事にしてくれと釘を刺されて入院を了承してくれた。

 ここまでは良い、後は浩二さんが雅美さんの骨髄が合ってドナーになってくれることを僕達は祈った。

 それと心なしか?雅美さんは目が死んでいて、このまま白血病で死んでしまいたいと思っているような感じがしたのは気のせいか?

 もしそうだったら気持ちは分からなくないが、僕は奈々子さんの親族がいなくなって涙に打ちひしがれる奈々子さんを僕は見たくない。


 僕は待合室で待っていて、とにかく祈った。

 浩二さんが骨髄が合ってドナーになってくれることを。

 そして診察室から、浩二さんと奈々子さんと雅美さんが出てきた。


 僕は二人に「どうだった!?」


 奈々子さんが「とりあえずお母さんは入院させ、明日、浩二さんの骨髄が合うか分かるみたい」


「そう」


 奈々子さんは浩二さんに向かって「今日は会社まで休んでここまで来てくれて、どうもありがとうございます」


「いや、奈々子ちゃん礼には及ばないよ。兄弟だからね、当然の事をしたまでだよ」


 明日かあ、今日の夜は眠れそうにないな。


 とりあえず、浩二さんには自宅に帰ってもらって、僕も帰った。


 時計を見ると午後四時を示していた。


 僕と奈々子さんは二人きりになってしまった。


 奈々子さんは元気がない。


 僕はそんな奈々子さんの背中を思いきり叩いて「大丈夫だよ。絶対に雅美さんの骨髄が浩二さんと合ってドナーになってくれるよ。とにかく信じよう」そう大声で言って励ました。


「そうよね。アツジの言う通りだよ。浩二さんの骨髄が合ってドナーになってくれるよね」


「なってくれるさ」


「うん」


 と言って僕を抱きしめる奈々子さん。


 奈々子さんに抱きしめられて僕は思った。


 奈々子さんの体温の全身で受け止めて、やはり不安なのだろう。

 奈々子さんは僕にしか甘えられない女の子だからな。

 こうして抱きしめてあげないと奈々子さんの心は粉々に砕け散ってしまうだろう。

 僕はそんなのは嫌だ。

 だから神様、浩二さんが奈々子さんのお母さんの骨髄が合ってドナーになってくれることを僕は切実に思う。

 もし合っていなかったら本当にどうしようと考えたが、僕は頭の起点を変えてそんな事はない必ず奈々子さんのお母さんの骨髄は浩二さんに合うと僕達は信じるしかない。

 仮に浩二さんがダメでもまだ奈々子さんのお母さんの兄弟はまだいるのだ。だから心配はいらない。いらないと分かっていても、もし奈々子さんのお母さんが死んでしまう事を考えると僕は気が気でなくなる。

 ダメだ。そんな事を考えてしまっては。


 これから帰る時間だが、奈々子さんは一人になりたくないのか?僕の家に泊まると言っている。

 もちろんOKだ。

 

 僕達はバスに揺られて、僕の家まで戻っていった。


 家に戻ると、僕の妹の桃子がいた。


「桃子!」


「どうしたのよ、二人して、昨日は携帯もつながらなかったし、それに家にもいないなんて心配したんだから」


「ありがとう。桃子」


 と言って桃子を抱きしめた。


「どうしたのよ。お兄ちゃん。それに奈々子さんも元気がないみたいだけど」


 何だろう?桃子の無垢な顔を見ていると、涙が零れ落ちてきた。


「お兄ちゃん本当にどうしたの!?苦しいよ!?」


 それでも僕は妹の桃子を抱きしめ続けた。




 僕と奈々子さんは妹の桃子にも事情を説明した。


「そうなんだ。そんな大変な事があったんだ」


 桃子に事情を話して、気持ちを共有した。

 桃子も気持ちはわかり、深刻そうな顔をしたが、その気を改めて「じゃあ、今日はお兄ちゃんと奈々子さんに桃子特性カレーライスを作ってあげる」

 そんな桃子がかわいくて僕は桃子を抱きしめた。


「桃子、お兄ちゃん嬉しいよ」


「分かったからもう良いよお兄ちゃん」


「桃子、本当にいい子だよきっといいお嫁さんになれるぞ」


「分かったからもうお兄ちゃん」


 そういって僕と奈々子さんは桃子が作るカレーライスが出来上がるのを待った。


「兄弟って良いね。あたしなんて兄弟がいないから」


 寂しそうに奈々子さんは言う物だから、何か不憫に思ってしまった。

 奈々子さんにはお母さんにしか親族がいないからな。

 でも奈々子さんのお母さんのお兄さんに当たる浩二さんがいることに僕は正直ホッとしている。


「桃子は良い子だよ。僕が学校でいじめに会っている時、唯一味方になってくれたのも桃子だけだからな」


「そうなんだ。どうして人はいじめをするんだろうね。アツジは命に係わるぐらいに嫌な思いをしているのにね」


「でも僕は今は幸せだよ。桃子もいて光さんもいて英名塾の笹森君や麻美ちゃんもいるし奈々子さんと言う大事な彼女が出来たからね」


「あたしの事を大事に思ってくれるのはアツジや光さんと豊川先生かな?でもみんなに迷惑かけてまでお世話にはなりたくないわ」


「迷惑だなんてとんでもないよ。僕は最初は奈々子さんの事を同情の目で見ていたけれど、何かほおっておけないし、言葉に迷うけれど、僕は奈々子さんが好きだよ」


「言葉に迷うってアツジらしいわね。あたしもアツジの事を同情の目で見ていたよ。でもあたしもアツジと同じように言葉に迷うけれど、アツジの事が大好きだよ。アツジは本当にあたしの事を大事に思ってくれているし、恋人でもありライバルでもある関係だからね」


「お母さんの件が終わったら、早速勉強でも小説でも絵でも、また勝負しよう」


「望むところよ」


 何て奈々子さんと語り合っているうちに、桃子特性のカレーライスが出来上がった。


「お兄ちゃん、奈々子さん。お待たせ」


 そういって大きなお盆にカレーライスとサラダを乗せて僕のところまでやってきた。


「奈々子さん。桃子のカレーライスはおいしいよ」


「本当ね。本当においしそうな匂いがするわ」


 桃子も含めて僕と奈々子さんは手を合わせて「いただきます」と言って僕達はスプーンを取ってカレーを救って口に入れるとすごくおいしいカレーライスだった。


「おいしいよ。桃子ちゃん」


 奈々子さんは素直な気持ちで桃子に言う。


「当然よ。桃子が愛情を込めて作ったんだから」


 奈々子さんはにっこりと笑って幸せそうな顔をしていた。

 僕はようやく奈々子さんが笑ってくれた事で場の空気が和んだ。


「やっと笑ってくれたね奈々子さん」


 桃子が言う。


「桃子も奈々子さんの味方だからね。きっとお母さんは無事に病気を治してくるから安心しなよ。それにお兄ちゃんもついているんだから」


 すると奈々子さんは涙を流して笑ってくれた。


「あれ、あたしどうして泣いているんだろう」


 そこで僕が「桃子の言葉が奈々子さんの気持ちに通じたんだと思うよ。奈々子さんの味方がまた一人見つかったね」


 その仲間とは桃子の事だ。


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