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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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奈々子さんを侮辱しないで!

 新聞配達の仕事を終えて、今日は僕が勝った。


「よっしゃー、今日は僕の勝ちだね」


「はいはい。ジュースの一本ぐらいはおごってあげるよ」


 と奈々子さんは悔しくないのか、僕は奈々子さんにジュースをおごってもらうよりも、その悔しい顔を見たいと思った。

 奈々子さんは僕の家にご飯を作るのが楽しみなのか?何かワクワクしている。


 ジュースを飲み干して、奈々子さんは買い物をすると言って、一度別れた。


 僕が家に帰ると、妹の桃子が台所に立って何かを作っている。


「桃子!何で!?」


「今日もお兄ちゃんに栄養をつけてもらうためにご飯を作りに来たよ」


「そう・・・」


 まずいことになってしまった。今日は奈々子さんが僕の家にご飯を作ってもらえる約束があったのだ。

 桃子は奈々子さんを嫌がっている感じだ。


「どうしたのお兄ちゃん。そんなに血相掻()いちゃって」


「うん、実を言うと・・・」


「実を言うと?」


 丁度その時、奈々子さんは手提げ袋を持ってやってきた。


「アツジ、今日はあんたにおいしいオムライスを作ってあげるよ」


 そこで桃子の存在を知る。


「あれ、桃子ちゃん来ていたの?」


 奈々子さんは目を泳がせている。そして僕の目をギラッ!ときつい目を送ってきた。

 それは怒るよな、桃子は奈々子さんの事を敵視しているし。

 せっかく桃子も来てくれたし、それに奈々子さんも僕の為にご飯を作りに来たのだ。

 桃子が奈々子さんを見ると、「私のお兄ちゃんは桃子のご飯を食べるの。だから帰って」


「そ、そう」


 奈々子さんはがっかりしたような顔をして、僕の家から帰ろうとしたところ僕は奈々子さんの手を取り、「僕は二人のご飯が食べたいな」と笑える状態ではないが僕は最大限に気を使い笑顔を取り繕った。

 何で昨日も来たのに今日も妹の桃子が来たのだろう?

 桃子は悪気があって来たわけじゃない。僕に栄養たっぷりのご飯を食べさせに来たのだ。


「お兄ちゃんは桃子のおいしいオムライスを食べてもらうんだから」


「あたしもオムライスを作るつもりだったんだけど」


「じゃあ、勝負しましょう。お兄ちゃんにどちらがおいしいオムライスを作ってあげられるか!」


「別に構わないけれど・・・」


 奈々子さんは桃子よりも大人だから、ムキにはなっていなかった。


「じゃあ台所は一つだから、どちらが最初に作るかジャンケンで勝負しましょう」


 最初はグーと言って、奈々子さんはパーを出して、桃子はチョキを出した。


「やったー桃子の勝ちだ!」


 ピョンピョンと跳ねる桃子。


 早速桃子はオムライスを作ることになった。


 桃子が台所に行くと奈々子さんは僕をギラリと鋭い目つきで見つめてきて「これはどういう事よ」


「まさか妹の桃子が来るとは思わなかったからさあ」


「本当にかわいい顔して、きつい子ね」


「一応桃子は僕の唯一の親族だから・・・」


「じゃあ、あたしは帰った方が良いかもしれないね」


「ちょっと待ってよ、せっかく来たんだから、ゆっくりしていってよ」


「ゆっくりできないよ」


「とにかく僕の為に何かを作ってくれるんでしょ」


 何て色々と話し合っているうちにオムライスは出来上がった。


 桃子は意外にも奈々子さんの分まで作ってくれた。


「さあ、召し上がれ、お兄ちゃんに、奈々子さん」


 確かにおいしそうなオムライスだ。


 一口食べると本当においしいオムライスだった。


 奈々子さんは「おいしいよ。桃子ちゃん」


「じゃあ、負けを認めて帰ってよ!せっかくのお兄ちゃんとの水入らずを邪魔しないでよね!」


 僕はカチンと来て「桃子!!!」と言って叩いてしまった。


 桃子を叩いた乾いた音がして、しばしの沈黙が僕達の間に生まれた。


 そして桃子は「うわーん」と泣いてしまった。


 僕は間違ったことはしていないと思う。


「ちょっとアツジ、それはやりすぎよ」


 泣きながら桃子は走って帰ってしまった。


 ゴメン桃子、でも桃子が悪いんだからね。


「分かっているよ。でも奈々子さんは悪くない。悪いのは桃子の方だから」


「唯一のあなたの親族でしょ、すぐに追いかけなさいよ」


「良いんだよ、奈々子さんを侮辱するものは僕は決して許せないから」


「と、いう訳で奈々子さんの手料理を食べさせてよ」


「もう、そういう気分にはなれないよ。あたしはひとまず帰るけれど、妹さんと仲直りしなさいよ」


 そういって「じゃあね、また明日ね」と言って奈々子さんは帰ってしまった。


 部屋で独りぼっち、僕は桃子が作ってくれた冷めたオムライスを食べた。オムライスは冷めてもおいしかった。


 そうだよな、僕の唯一の親族の妹だもんな。


 スマホを持って僕は妹に電話を掛けた。


「もしもし、桃子?」


「そうだけど」


 僕に叩かれて涙が乾いた後なのか?良く耳を集中させないと聞き取れない蚊の鳴くような声だった。


「さっきはゴメンね桃子。でも桃子が悪いんだからね」


「お兄ちゃんは私よりも奈々子の方が好きなの?」


「僕は奈々子さんも桃子も大好きだよ」


「桃子もお兄ちゃんが好き」


「そうか。良かった。僕が学校に行けなくなったのも桃子は僕の味方になってくれたもんな」


「お兄ちゃん、お兄ちゃんはまだ中学生だから家に帰って来るべきだよ」


「それは出来ないよ」


「どうしてお兄ちゃんの事をお父さんもお母さんも認めているよ。もしお兄ちゃんが家に帰ってきたら、お兄ちゃんの好きにさせてあげようって言っているよ。前だってお父さん心配してお兄ちゃんにお金私に言ったとき、断られて、しょんぼりしていたよ」


「良いんだ。お兄ちゃんはお兄ちゃんでちゃんと生活できているから」


「じゃあ、お兄ちゃん。私は奈々子の事は認められないけれど、お兄ちゃんの大切な人なんでしょ。だから今度はお兄ちゃんに事前に電話して、ご飯作りに来るね」


「ありがとう桃子」


「お兄ちゃんもお体にはお気をつけてね」


「言うようになったな桃子」


「私ね、クラスで委員長をしているんだ。お兄ちゃんがあうようないじめはしないようにしているんだ」


「桃子は良い子だな、僕は桃子と同い年だったら桃子のクラスに入れたら良かったのにな」


「お兄ちゃんがいじめに会っている時、桃子は何も出来なかった」


「桃子が気にすることじゃないよ。桃子は良い子だな、また家にご飯作りに来てね。その時はちゃんと連絡を入れてきてね」


 僕は水に口をつけて飲もうとするときに桃子は「お兄ちゃんは、奈々子とやったの!?」と言われて飲み干そうとした水を吹き出してしまった。


「そんな事しないよ。僕達はまだ中学生だよ」


「でも、桃子の学校ではそういう人いるよ」


 衝撃的な事実を告げられて僕はびっくりしてしまう。

 今どきの小学生はそこまで発展しているのかと。

 僕の時代の小学生はそんな事はなかったと思うが、妹と年は三つ違う。

 だから僕が小学生の時に、付き合い始めたら、やってしまうのだろうか。


「とにかく桃子、そういうことは軽々しくやるものじゃないからな」


「でも、保険の勉強で、セックスをして子供が生まれてくるんだよ」


 確かにそうだでも、「とにかく桃子にはまだ、そういうことは早いよ」


「そうだよね。私にも彼氏はいないけれど、何人かにアプローチされることがあるよ」


「だから桃子にはそんな事は早いって言っているだろう。お付き合いをするにはお兄ちゃんの許可を取らないとダメだからね」


「どうしてお兄ちゃんがそれを決めるの?」


「良いからお兄ちゃんにちゃんと言いなさい。分かったね」


 何で妹が彼氏を作ることに僕はもやもやしてしまうのだろう?

 そういえば桃子と一緒にお風呂に入ったのは僕が出て行ったすぐ前だ。

 こんな年になって妹と一緒にお風呂に入るなんて奈々子さんに知られたら、僕は軽蔑されてしまうだろう。

 そんなこんなで桃子とも和解して無事解決した。


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