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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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日の出に照らされた可憐な少女

 新聞配達の仕事は今日は奈々子さんが勝った。


 今日は奈々子さんに光さんが作ってくれた問題集をやって、その点数でも負けてしまった。


 今日は奈々子さんに負けてばかりだ。


「アツジにおごってもらったジュースはおいしいな」


 何て奈々子さんは嫌味ったらしく言う。

 本当にムカついてしまう。

 明日はきっと奈々子さんに勝って見せる。


 新聞配達の仕事も終わり僕と奈々子さんは『また明日』とお互いに言ってそれぞれの家に帰った。


 家に戻ると時計は午後七時を示していた。


「今日は何を食べようかな?」


 冷蔵庫を開けるとありあわせの材料で焼きそばでも作って食べようとした。


 そんな時、玄関からドアが開く音がして、玄関の方に行くと妹の桃子が白いビニール袋を持ってやってきた。


「お兄ちゃん、晩御飯はまだでしょ。だから私が作りに来たよ!」


「別に大丈夫だよ」


「今日は何を食べようとしたの?」


「焼きそばでも食べようと思ったけれど・・・」


「何よ!晩御飯なのにそんな粗末な物を食べるつもりだったの!?」


「粗末な物じゃないよ。僕の焼きそばは栄養があってとてもおいしいんだから!」


「まあ、それはさておき、今日は桃子がカレーライスを作ってあげる!」


「別に良いのに」


「ダメよ。たまにはお兄ちゃんと水入らずで食事とかしたいから」


 桃子は僕と食事がしたくて来たんだな。まあ良いか、たまには妹の料理を堪能するのも。


 妹が料理をしている最中に僕はテレビを見ながら待つことにした。


 妹は唯一の僕の親族だと思っている。


 でも最近は父も母も僕の事を認めてくれて、父がお金を持って来てはくれたが、僕はそれを頑なに断ったりもしていた。


 だけど、妹は別かな?僕の事をフォローしてくれる大事な妹なんだから。




 数分後桃子はカレーライスとサラダを持って居間まで運んできてくれた。


「さあ、お兄ちゃん、召し上がれ」


「いただきます」


 そういって僕は妹の料理を堪能してとてもおいしいカレーを食べる事が出来て僕は嬉しかった。


 泊まっていけば良いのにと言ったが桃子は明日学校だから、実家に帰ることとなった。


 学校かあ、僕は学校も行かずに新聞配達で仕事をして生計を立てて、いつも図書館で勉強している。それと小説や絵も描いている。いつか桃子にも僕が書いた小説を読んで貰いたいと思ったが、妹に見せるのもちょっと恥ずかしいし、何か怖い。

 きっと妹が僕が小説を書いていると言ったら真っ先に読ませてと言ってくるだろう。

 それと今頃光さんは僕の小説と奈々子さんの小説をそれぞれ見ているのだろう。

 光さんは僕の小説と奈々子さんの小説を読んで何を思っているのだろう?

 そう思うとワクワクもするし、何か怖いような感じもした。


 一時間くらい勉強して今日のところは眠りについた。

 眠りにつく時、時計を見ると午後十時を示していた。

 正直勉強なんてして何の役に立つのだろうと言うのか?

 そう思うけれど、僕はまだ中学生で義務教育を受けなければいけない年なんだ。

 社会で勉強したが義務教育を受けなければいけないのが世の鉄則であると僕は習った。

 僕達中学生に義務教育を放棄する権利はないみたいだ。

 でも僕と奈々子さんはとりあえず学校には行っていないが、毎日図書館で勉強している。


 午前三時になり、僕は新聞配達の仕事に出かけなくてはいけない。


 シャワーを浴びて、昨日妹の桃子が作ってくれたカレーを食していざ新聞配達へ。


 配達所に到着すると、奈々子さんはすでに配達所にいた。


「遅いわよ、アツジ」


「奈々子さんが早すぎるだけだよ。最近奈々子さん調子が良いね」


「アツジには負けていられないからね」


 奈々子さんの瞳の奥に燃えるような炎を感じた。


 その炎は僕の胸に焼き付けられて、僕も負けまいと、鼓舞された。


 それでこそ僕のライバルの奈々子さんだ。




 今日の新聞配達の仕事は僕が勝った。


 時計は午前六時を示しており、僕は奈々子さんにおごってもらったハチミツレモンを飲んでいる。


「アツジやるじゃん」


 奈々子さんは悔しくないのか、今日は僕の事をほめている感じだ。


「奈々子さんがおごってくれたハチミツレモンはおいしいよ」


 嫌味ったらしく言うと、ヤバイ奈々子さんを怒らせてしまったんじゃないかと思って「ゴメン」と謝った。


「別にあたしは怒ってないよ。そんな事で怒る程、あたしは子供じゃないよ」


 ハチミツレモンを飲み干して「じゃあ、奈々子さん」僕が呼んでいるのに、綺麗な日の出に夢中になって聞いていなかった。


 だから僕は「綺麗な日の出だね」


「ええ、アツジだったらこの日の出をどのように描く?」


「じゃあ今日は綺麗な日の出を頭に焼き付けて、どちらがうまいか勝負する?」


「あんたが勝つに決まっているじゃん。あんたの方が絵を描いていた経験は豊富なのだから」


「じゃあ、勝負じゃなくて、この夕日をテーマにして描くのはどうかな?」


「あくまでテーマよ。勝負になったら、あたしが負けるのは必須だからね。でもいつかもっと絵を描いていつかアツジの事を追い抜いてやるんだから」


 日の出に照らされ笑っている奈々子さんは可憐だった。

 そうだ。この瞬間を頭に焼き付けて絵を描こう。

 

 そして僕達はいつもの図書館で待ち合わせることになって、いったん僕達はそれぞれの家に帰った。

 日の出に照らされている奈々子さんは本当に可憐だと思う。見た人すべての人をひと目ぼれ、させてしまうような可憐さだと思う。

 その時、僕の頭の中に小説のアイデアがビビビッと稲妻が走るように閃いた。

 そうだ。今度書く小説は僕達ライバル同士である奈々子さんと僕の事を書こう。

 それをネット小説に投稿して世界の人々はどのように思うのかワクワクもするし何か怖い気もしてくるが、僕のワクワクの好奇心の方が強かった。

 昨日桃子が作ってくれたカレーを食べ終えて、図書館に行く時間になるまでテレビを見ていた。

 ニュースでは露出狂が街に現れたとか、電車で痴漢にあったとか、そんな事を報道している。そんな些細な事がニュースになっているなんて、世の中は案外平和なのかもしれない。

 そろそろ図書館に行く時間だ。

 

 図書館に到着すると、開館十分前で、すでに奈々子さんはいた。


「やあ、奈々子さん」


「あらアツジ。今朝はあたしに新聞配達で勝ったから機嫌が良いの?」


「別に僕はいつも通りですよ」


 まあ機嫌が良いと言うのは本当だが、新聞配達で勝ったから機嫌がいいわけではない。

 僕は今朝見た奈々子さんの日の出に照らされた可憐な奈々子さんを見て、閃いたことは黙っておくことにする。

 僕は早く日の出に照らされた可憐な奈々子さんを描きたいし、それによって小説を閃いた物も書きたい。

 今日もワクワクが止まらない。


 そんな事を考えていると、奈々子さんは「アツジ、何か良い事でもあったの?」


「まあ、あったと言ったらあったね」


「何よ教えなさいよ」


「時期に分かるよ」


「意味わからないんだけど」


「僕も意味が分からないよ」


 そして図書館が開館して、待っていた御高齢の人たちに続いて僕達も入っていった。


「光さんおはようございます」


「おはようあっ君」


「僕の小説どうでした?」


 そこで奈々子さんも話に入ってきて「光さん私の小説も見てくれたんでしょ」


「うん。二人の小説をしっかりと読ませてもらったわよ」


「「どうでした?」」


 僕と奈々子さんは光さんに迫る。


「あたしはこれから司書のバイトがあるから、その仕事が終わったら教えてあげるよ。それとこれだけは言っておくよ。

 二人の小説本当に面白かったよ」


 それは僕にとっても奈々子さんにとっても書いた冥利に尽きる。


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