緊張
武道館の中に入ると二十人くらいのカメラの人がいた。そう言えば僕達のライブはDVDとして発売されるんだっけ。
「さあ、みんなリハーサルやるよ。光さんも準備して」
「はいはい」
僕達はリハーサルに入る前に記者にカメラを向けられた。
「あのー、一言で良いんで、武道館でのライブは楽しみにですか」
「もちろん楽しみにしていますよ。お客さんが喜んでくれるようなライブを行いたいと思っています。メンバーもみんな同じ気持ちです」
「あなた達がバンドをやったきっかけは何なんですか?」
それを聞かれると困惑してしまう。そこで涼子さんが、
「私達はライバル関係でバンドを組みました。とにかくこの全員ライバル同士です。そんな私達の攻撃的な演奏をどうぞごらんになってみてはいかがでしょう」
「それは楽しみですね。あなた達はプロデューサーもなしでやってきたようですが、凄いですね」
「私達ソウルメイトは気合いが入っていますよ。ちなみに私達の憧れの存在はX JAPANです」
「そうなんですか、X JAPANがお好きなんですか」
「はい、彼らの攻撃的なバンド私達は好きです」
「そうですか、今日はいよいよ初ライブにして武道館ライブで緊張とかはしていないんですか?」
「まあ、緊張はしていますけれど、とにかくその緊張も私達の攻撃的な演奏でぶっ放してやりますよ」
そうだ。その意気だ。言ってやれ涼子さん。僕達の攻撃的な演奏で緊張など吹き飛ばしてやるんだ。
そしてインタビューは終わって僕達はステージに立ち、演奏を開始した。光さんの事が心配だったが、光さんは光さんで練習してきたのでちゃんとキーボードの曲を奏でている。
美しい音色にこれならファン達は僕達の演奏にメロメロになってしまうと思っている。
とりあえず光さんの事は大丈夫だ。それと光さんのソロだが、光さんは奈々子さんと同じ真打ちを狙っている。
「ちょっと光さん真打ちはあたしなんですけれども」
「そんな事を誰が決めたの?」
「もちろんあたしです。あたしが真打ちをやった方が良いと思います」
「ダメね真打ちは私がやった方が良いと思うわ」
奈々子さんは光さんに頭が上がらない。
と言うわけでソロの真打ちは光さんに急遽変更になった。
そうだ。とりあえずお客さんが中に入る時間は五時半だ。そして六時に開演だ。今は時間は丁度正午を向かえている。とりあえず僕達は鈴木さんが持ってきてくれたおにぎりを食べて、リハーサルに向けて演奏した。とりあえずソロの部分を変えてしまった為、とりあえず光さんのソロを聴いてみようと思う。
光さんが自分で作詞作曲編曲までした曲を僕達は演奏をする。
凄いなめらかな曲調で演奏している僕達でさえ魅了されてしまうほどの歌だった。さすがは光さん。真打ちは本当に光さんがやった方が良いと思っている。
リハーサルは五時半までになっている。それまでにやるべき事はすべてやった。後は僕達がやるべき事をやるだけだ。
そして五時半になり僕達は舞台裏でお客さん達を見つめていた。
うわーお客さんみんなお洒落な人ばかりだ。そんなお洒落なお客さんの前で格好悪いことはしたくない。
何かお客さんがざわざわと集まってくる。そして満席となってしまった。
「うわー凄いお客さんだ。僕達はこのお客さん達の前で演奏するのか」
「みんな、とにかく自分を信じて、私達はやるべき事はやったんだよ。だからもう後は自分達を信じて演奏するだけよ」
光さんが言う。開演まで後三十分、僕達はそれぞれの楽器を持ちながらそわそわしていた。
そうだ。後は自分達がやってきた事をやるまでだ。緊張は仕方がない。しかも僕達はコンサートなんてしたことがない。それでぶっつけ本番で武道館ライブなんてあり得ないと思っている。
お客さんがざわめく中、僕達はスタンバっていた。
本当に僕達はこの舞台で演奏をするんだと思うといても立ってもいられなかった。
「うわー緊張してきた。本当にあたし達このお客さん達の前で演奏できるのかな」
「とにかく奈々子さん。僕達はこれまで必死に練習してきたじゃない。だから大丈夫だよ」
開演二十分前、僕達は本当にコンサートが出来るのか不安になっていた。
舞台裏から見る一万のお客さんの前で僕達は本当に歌うのかと思うと緊張が外れない。こんな思いをするなら武道館コンサートなんて引き受けなきゃ良かったとさえ思える。でももう乗りかかってしまった船だ。もう後には戻れない。
「何?みんな緊張しているの?」
「していますとも、光さんは緊張はしていないんですか?」
「そりゃ、しているけれど、とにかくみんな思いっきり大きく息を吸って、こうやってお腹が膨らむように」
僕達は光さんの言うとおりお腹を膨らませるように息を吸った。そしてゆっくりと吐き出すと緊張がほぐれた感じがした。
「本当だ。さすがは光さん、良いことを知っていますね。桃子も緊張がほぐれた感じがするよ」
「さあみんな、緊張もほぐれた事だし、そろそろスタンバって行こう」
開演まで後十分。光さんから伝授された腹式呼吸をして緊張は免れたが僕達はやはり一万人のお客さんの前で演奏するとなると凄くそのお客さん達の前で凄く緊張してしまう。
だから何度でも光さん直伝腹式呼吸をする事にした。こうしていると、僕達は少しだけ気持ちがリラックス出来る。
本番五分前、僕はトイレに行きたくなりトイレに行った。
「何よ、開演五分前だよちゃんとトイレぐらいは済ませて置きなさいよ」
僕は武道館に設置されているトイレに向かい、そこで用を足して、戻った。そして開演一分前。
「みんな、ここで気合いを入れるわよ」
そう奈々子さんが言って、僕達は円形の輪を作って僕が「ソウルメイト、レッツ、ゴー」そう言うと、武道館の明かりが消えて観客からの歓声に僕達は負けないぐらいに演奏をしようと思っている。
まるでプロボクサーが大事な試合に臨むかの様な感じだった。
最初は涼子さんからの激しいドラムさばきから始まる。
すると観客達は凄い熱狂で歓声を上げる。
そして次に奈々子さんの登場で激しいドラムに合わせて激しいギターさばきを披露する。するとお客さん達は凄い熱狂している。そして斎藤さんがエレキギターをかき鳴らして、そして次に光さんが早引きのキーボードを披露する。そして僕が登場してファン達は熱狂している。そして最後に桃子が登場する。
そして曲が始まる。曲は僕達の第二シングルである物だ。
観客が熱狂している中僕達は激しく熱狂している。そしてあろう事が僕達の第二シングルを知っているのか?ファン達は桃子の歌声に合わせて歌っていた。
すごいこれが武道館で行うライブなのか?ファン達の熱狂に僕達は圧倒されそうだけれどもそれに負けないぐらいの演奏を僕達はする。
まるでファン達と僕達が激しく拮抗している様な感じがする。
まさにこれは戦いだ。こんなファン達の熱狂に僕達が負けてたまるか。僕達は必死に演奏している。しかも何のブレもなくちゃんと音となっている。
そして二曲目、これはまだCDにもYouTubeにも上げていない曲だ。それでもファン達は僕達の知らない歌でも盛り上がっている。こんな事を思うのもおこがましいかもしれないけれども、さすがは僕だと思っている。
僕達はもう負けるわけには行かないんだ。もう僕は弱虫だった時ののび太ではないのだ。
さあ、二曲目が終わって僕のMCに入る。




