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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
202/207

許せない両親

 登場シーンもバッチリ。後は何にしようか?曲順はもう決めてある。この武道館でのライブが始まろうとしている。とりあえず僕達は演奏を開始する。


 演奏を開始して二三曲弾いたら僕のMCに入る。


 X JAPANのトシをイメージして僕は絶叫するように叫んだ。


「まだまだ、これからだぜ。お前達はそんなもんでいいのか!?」


 すると涼子さんがドラムを激しく叩いて、斎藤さんと奈々子さんのギターの早引きが炸裂した。これは絶対に盛り上がると僕は確信した。


「次はこの日の為に作っておいた曲をみんなの前で披露するぜ!?準備はいいかーーーーー!!?」


 何だろう、そう叫んでいるとリハーサルで観客もいないのだが、観客が絶叫しているイメージが見えてきた。よしこのまま行こう。


 そして次の曲も観客達が盛り上がっている様子が見えてきている。実際はまだ観客はいないのだが僕にはそう思えた。


 二三曲歌い終わり、熱が入ったのか。ももこがMCを務めることになってしまった。


「みんな、張り切っている!?桃子は充分に張り切っているけれど、まだまだこれからだからね」


 桃子歌ったのに声は大丈夫なのか心配になった。桃子の歌唱力を発揮するのはせいぜい二三曲が限界だ。それでも桃子は必死にMCを務めている。


「ちょっとタンマ、桃子、声は大丈夫なの?」


「お兄ちゃん大丈夫に決まっているでしょ、次の曲が終わったら、次はみんなのソロでしょ。桃子こんな夢みたいな舞台で歌えるなんて凄くテンションが上がっちゃった」


 桃子がそう言うなら、僕達も負けてはいられない。次の演奏は激しい曲だ。


 曲が終わると、ちょっと十分休憩でファン達を待たせることにする。


 これも練習だと思って、舞台裏に僕達は行った。


 十分が立って僕のソロの出番だ。


 本当に桃子の言うとおりここは夢の舞台だ。こんな夢舞台に歌えるなんて僕達は幸せ者だと思えた。


 もしかしたら、僕達が武道館に立ったのは最年少かもしれない。でも尾崎豊は十六歳でこの武道館でライブをしたんだよな。でも桃子は十四歳だ。けれども僕達は十六歳だもんな。中学生が武道館をボーカルとして歌うのは最年少だと僕は誇りに思う。


 次のソロは斎藤さんだった。


 斎藤さんのソロは凄く瑞々しくて本当に虜になってしまうような気さえしてくる。


 次のソロは涼子さんだった。涼子さんはドラムを叩きながら歌い僕達はそれにそって歌っている。


 そして最後の真打ちとなった奈々子さんが登場する。ギターを激しく打ち鳴らし、歌う奈々子さん。本当に奈々子さんは必死に歌っている。本当に奈々子さんが鳥居で良かったのかもしれないと思うほどの出来の良い歌であった。


 奈々子さんのソロが終わると、ここで十分一休み、みんな疲れているだろう。特に桃子の歌声はもうバッチリだった。


 次の曲は僕達が最初に出した曲だ。


 それを演奏していると、観客達が熱い声援を送っているような感じがする。


 本当に僕達はどこまで行けるのだろうか?


 曲が終わり、次はアンコールタイムだ。みんながアンコールをしてくれたら僕達はまたこの日のために作った曲を披露しようとしている。


 こんな良いコンサートでアンコールがないなんてあり得ないと僕は思っている。そしてアンコールがあったとして僕達はステージに立ち、アンコールの為に作っておいた曲を披露した。


 そして二度目のアンコールで最後にしようと僕達は思っている。僕達のマネージャーの鈴木豊子さん、観客席のど真ん中に座って見ている。僕達の演奏を見て何も言ってこない。もしかしたら鈴木豊子さんは僕達を認めてくれたのかもしれない。


 最後に二曲目の曲を披露するとする。これで二時間と三十分が経過している。


「じゃあ、みんなこのコンサートも佳境に入ってきた。最後の歌だ。聞けえええ、俺達の魂を込めた歌を」


 これが僕達の最後の歌だ。涼子さんがシンバルを三回叩いて曲は始まる。そして演奏して桃子も歌い、斎藤さんも奈々子さんもギターを激しくギターを弾き涼子さんは激しくドラムを叩く。そしてベースの僕も。


 僕達はもう落ちこぼれなんかじゃない。武道館でコンサートを開けるような凄まじい人間だと誇りたい。思えばここまで来れたのは光さんとの出会いでここまで来れた。本当に良い人と出会うことは因果な事だと思える。


 そして曲は終わりエンディングが流れてくる。エンディングの曲は僕達が最初に出した曲をクラッシックバージョンに変えた物だ。


 まだ観客はいないのに僕達に声援を送ってくれる人達がいることを想定して僕達はこのコンサートのリハーサルをやった。


 そこで鈴木さんが僕達に拍手を送る。そしてさらに予想だにしなかった事態が起こった。僕の父親と母親が二階席に居たのだった。


「桃子、アツジ、立派になったな!」


 親父が言う。


「何で親父がこんな所に居るんだよ」


 僕はこの神聖な僕達のコンサートのリハーサルに親父とお袋が居ることに憤りさえ覚える。

「私が呼んだのよ。あっ君」


 涼子さんが毅然として言う。


「余計な事をしないでくれよ!」


 そんな時親父にフライパンで横っ腹を殴られた所が疼いた。


「余計な事なんだ」


 涼子さんは寂しそうな顔をする。そんな涼子さんを見て僕は複雑な気持ちに陥った。以前涼子さんには両親が居ないことを知り、両親が居る僕が羨ましいとさえ思っていたっけ。こんな時親に対して何て答えれば良いのか分からなかった。僕と桃子の親は酷い物だった。学校に行かないからと言って、罵声や罵倒などを繰り返されて来た。親は最低な人間だと僕は思っている。


 僕と桃子はそんな親に対してどんな顔をすれば良いのか分からず、舞台裏に行って抱えていたベースをケースにしまって帰ろうとした。


 そんな僕を追いかけて来たのが僕の両親を何の断りもなく呼んだ涼子さんだった。


「あっ君、お母さんとお父さんに何か言うことはないの?」


「何もないよ。どうしてこんな余計な事をしてくれたんだよ」


 すると涼子さんは僕を抱きしめた。


「余計な事をした事は謝るよ。でもあっ君には家族が居るんでしょ。今まで育ててくれた両親が居るんでしょ。なのに両親と往信不通なんて悲しいとは思わないの?」


「思えないよ」


 すると涼子さんにグーで殴りつけられた。


「バカ!」


「それには涼子のバカの言うとおりね」


 奈々子さんも言う。


「私もそう思います。あっ君さんの両親は確かに酷いことをされたと思いますけれど、悪い思い出ばかりじゃないと思います」


 確かに斎藤さんの言ったことは間違いはないと思うが僕は親の顔など見たくもないと思っている。


 涼子さんのパンチはあまり痛くはなかったが、心をえぐられるほどの心の傷を僕は負った。僕は親に対して何も言う事なんてない。でもこのまま僕が出て行ってしまえば僕は独りぼっちになってしまうんじゃないかと恐れた。


「いつまで意地を張っているの?あっ君は小さな子供じゃないでしょ。それに桃子ちゃんも私や奈々子や翔子には親が居ないのよ」


「そんなの卑怯だよ。親が居ないなら、あんな親居ない方がマシだよ。僕は親が居ない涼子さんや奈々子さんに斎藤さんが羨ましいよ」


「あっ君、それ本気で言っているの?」


「ああ、本気で・・・」


 これ以上言ったら僕は本当の独りぼっちになってしまうことを恐れて言えなかった。


「どうなの?あっ君。もうあっ君は小さな子供じゃないでしょ。今まであっ君が親の事を恨んでいた気持ちは充分に分かるよ。施設に居たときも、自分の事しか考えない親なんて何人も見てきた。実の子供を借金の肩代わりにヤクザに売るような輩の親も見てきた。でもそれに比べたらあっ君は親に愛されている方だよ」


 本当に涼子さんには敵わないな。その時、また一曲閃いた。素直になることは傷つく事だと。

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