表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
2/207

とあるライバル関係の日常

 朝起きて、時計は真夜中の午前三時三分を示している。

 今日も何か良いことがありそうな感じがして、楽しみでたまらない。


「菜々子さんとの新聞配達の仕事今日は勝つぞ」


 と人知れず鏡の前に立ってそういった。


 そして僕は朝起きたら、腕立て百回に腹筋百回をしてシャワーを浴びて、朝ご飯に今日は卵かけご飯を食べて、自転車で配達所に向かう。


 配達所に到着したのは四時十分前、今日も菜々子さんとジュースをかけて新聞配達の競争をする。


「おはようございます」


 菜々子さん含めて、同僚の方達にも挨拶をする。


「今日も気合い入っているね」


 社長が言う。


「今日も菜々子と新聞配達の勝負をするつもりか?」


「はい」そういって菜々子さんに向き直り「菜々子さん、今日も負けないよ」


「アツジのテンションには私は負けるよ。でも私も負けないんだから」


 早速新聞配達の仕事に入り、まず最初に新聞にチラシを入れて、入れ終わったら各自、新聞配達の仕事に向かう。


 よし準備は万端だ。いくぜ。

 自転車に新聞を載せて僕は僕のルートの新聞配達に向かう。

 新聞配達の仕事をしていると何か生き甲斐を感じる。

 僕はこうして幸せに一人暮らしをこなしている。

 最初は新聞配達の仕事をした時は、菜々子さんが入るまで、面倒な仕事だと思っていたが、今の僕には楽しすぎてたまらない。

 早く終わらせて菜々子さんにジュースをおごって貰おうかな。

 そして新聞をすべて配り終えて、帰ると、菜々子さんはいなかった。


「あれ、菜々子さんがいないと言う事は、今日も僕が菜々子さんに勝った事になるのかな?」


 社長に言うと「若いって良いな」なんて言われてしまった。

 そして十分後に菜々子さんは新聞配達の仕事を終えて戻って来た。


「菜々子さん。今日も僕の勝ちだね」


「あんたインチキしてない?」


「仕事にインチキなんてする分けないでしょ」


 菜々子さんは悔しそうに舌打ちをした。


 今月に入って僕が勝ち続けている。


 新聞配達の仕事も終えて、みんなに『お疲れさま』と挨拶をして、僕と菜々子さんは自動販売機に向かう。


「今日は缶コーヒーが飲みたいな」


「あーもう分かったわよ」


 悔しそうにしている菜々子さん。

 菜々子さんには悪いが今月に入って連勝だ。

 勝利の女神が僕を祝福しているような気がした。


 午前六時半、ようやく朝になり、僕と菜々子さんはいつも河川敷の橋の前で菜々子さんにおごって貰ったジュースを飲んでいる。


「チラシ見たけれど、そろそろハローウィーンだね」


「ハローウィーンかあ、菜々子さんは町で仮装して歩くのは恥ずかしくない?」


「誰が、町であたしが仮装して歩くって言った?」


「菜々子さん、そういったイベントごと好きなんじゃない?」


「アツジは仮装するなら何にする?」


「何だって良いかな?」


「そうだ。ハローウィーンの日仮装して引き語りしない?」


 菜々子さんは瞳をきらきらと輝かせて僕に言う。

 それはちょっと恥ずかしいけれど、でも考えて見れば面白そう。


「良いね、仮装して、町で引き語りか?」


「アツジはあのせかおわのマスコットみたいなピエロの仮面でもかぶって貰おうかしら」


「って言うか顔が見えないじゃん。菜々子さんは何に仮装するの?」


「私は何だって良いよ」


「じゃあ~ヤッターマンのドロンジョの格好して引き語るのはどう?」


 冗談で言ったつもりだが、そこで僕は菜々子さんがそんな冗談が通じないことを思い出した。


 すると予想通り、菜々子さんは僕に「ふざけるな!」と言って蹴りを入れた。


「冗談だよ」


「あたしに冗談が通じないことをあんたは知っていて言っているの?」


 威圧的な視線を向けて僕に言う。


「分かったよ。僕が悪かったよ」


「そろそろ時間ね」


「じゃあ、一度帰ったら、また図書館に集合ね」


「分かっているよ」


 僕と菜々子さんはいったん別れて、僕は家に帰った。

 家に戻ると、僕はニュース番組を見ながら、小説の続きを書いた。

 小説を書くことは未知の世界を描いているようで僕は楽しい。

 きっと菜々子さんも僕に負けまいと、今頃、小説を書いているのだろう。

 僕と菜々子さんは恋人同士でもありライバルでもあるのだから。


 そんな作業をしていると時間なんてあっと言う間に過ぎてしまい、テレビの時計には午前八時を示している。

 そろそろ行かないとな。


 僕は鞄に参考書や書きかけの小説のノートを手に取り、入れた。


 さて今日も頑張りますか。


 鏡の前で立ち、自分で言うのも何だが顔立ちが何だか、かっこ良く見えたのはどうなんだろう。

 僕はあまりパッとした魅力のあるような顔はしていない。

 でもそんな僕でも菜々子さんという恋人がいるのだ。

 たまに不思議に思うことがある。

 どうして菜々子さんは僕に惚れたのか?

 一年前までは、女の子とつきあう事なんて絶対にあり得ないと思っていたのに。

 まあ良いか。僕と菜々子さんは恋人兼ライバル同士でもあるのだから。

 準備も整えて、僕は光さんが司書のバイトを勤める図書館に向かう。

 図書館に到着すると、いつものように菜々子さんはいて、他に来館する年寄りの人達がいる。

 その年寄りの人達も僕達の事は顔見知りで、僕と菜々子さんはお友達になったりしていた。

 菜々子さんは相変わらず、僕以外の人には猫をかぶって笑顔で接している。

 僕達がお友達になったお年寄り達は、定年を終え、他に何もやることがないので、本を読みにくる年寄りがもっぱらだ。

 本当に図書館は良いところだよね。お金も取られないし、それでもって、ただでマンガやライトノベルや純小説なんかも読めたりする。

 お年寄りの人達と友達になり、そのお年寄りの人達は僕達の事を話したりしていた。

 いつもここで学校も行かずに勉強していることや、色々と複雑な事情なんかも話し合う仲にまで発展していった。


 図書館が開く十分前、僕たちはそんなお年寄りの人達と話し合ったりしていた。

 お年寄りの方達は僕たちの仲を知っている。

 菜々子さんはお年寄りの人達に「凄くべっぴんさんだね」と言われて、菜々子さんは密かに喜んでいることを僕は見逃しはしなかった。

 菜々子さんは猫を被っているとき、そうやってほめられると嬉しくて雲を突き抜けるほどの嬉しさに満ちている。


 そして来館時間になり、図書館の女神様事光さんが自動ドアにスイッチを入れる。

 光さんと目が合うと僕にウインクをしてくれる。

 そんな事をされると僕は照れて、心臓が飛び出しそうな程の歓喜に燃え上がってしまう。

 そんな様子を見ていた菜々子さんに横腹をつかれて、「さあ、今日は光さんが作ってくれた小テストの日でしょ。負けたら何でも一回言うことを聞いてくれるって約束したでしょ」


「わかっているよ、菜々子さん僕は絶対に負けないからね」


 そういいながら開館した図書館に入っていくと、「はいこれ」と光さんに一枚ずつ紙を配られた。


「これは、昨日言っていた英語の小テスト?」


 僕が言うと光さんは「制限時間は一時間、しっかりやりなさい」


 そこで僕と菜々子さんのバトルが始まる。


 これで僕が勝てたら、菜々子さんを一回自由にして良い券をもらえる。


 よし。負けないぞ。


 早速、席に着いて、僕と菜々子さんは問題を見る。

 見てみると、難しい問題であった。問題は受動態能動態なのだが、その中にまだ習っていない、関係代名詞の出題が合った。


 もしかして光さん、こんな難しい問題を出してくるのは、何か嫌な事でも合ったのだろうかと、僕も隣に行る菜々子さんも、薄々感じているようだ。


 そう言えば最近、菜々子さんと友達関係になったストーカー行為をするエイトマンの姿が見えないな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ