たまにはケンカをさせるのもいいかも
僕はアコースティックギターを片手に奈々子さんの詩を見ながら歌を作っている。奈々子さんもなかなかやる感じだ。
さてどのように作ろうか?うーん考えさせられる。涼子さんや奈々子さんの時はすぐに作れたのにその二人よりも良い歌を作って欲しいと言われてしまったんだからプレッシャーが大きくなる。
とにかく気持ちを高揚させて歌にしようと思う。
最初は鼻歌で作ってみた。なかなか良い感じである。
この調子で奈々子さんの歌を作ってあげたいと思っている。
人間のインスピレーションって気まぐれな感じだから困った物だよな。いっその事ミスチルの桜井さんみたいにいつも録音機を持ち運べれば良いかもしれない。
奈々子さんの詩は良い曲に仕上がりそうだが、奈々子さんは二人よりも凄い歌を作ってくれと要求したのだから・・・いや涼子さんと斎藤さんの歌を作って来たように作っていけば良いのだ。
そういう事で楽譜を持ち出して、奈々子さんの歌を作ることにした。そうすると一気に仕上がった。
演奏室で喧嘩するように涼子さんと奈々子さんは演奏してそれを緩和するかのように斎藤さんがなだめているような演奏だ。それはそれでいいとする。
そして収録室からガラス張りになっている奈々子さんに奈々子さんの歌が仕上がったよって言って、合図を送った。
演奏室から奈々子さんは収録室にやってきて、奈々子さんに譜面を見せた。
すると奈々子さんは譜面を見ながら歌い出した。
奈々子さんは歌い終わって僕に「ちょっと地味な感じがするんだけれども」
そこに涼子さんと斎藤さんも入ってきた。
「何言っているのよ奈々子良い曲に仕上がっているよ」
「私もそう思います」
「でも二人の曲に比べて地味な感じがする」
奈々子さんはそう言うので僕は書き直すことになった。
この歌良いと思うんだけれども、地味と言われてかなり痛いところを突いてくる奈々子さん。
もう一度書き直してもう一度奈々子さんに歌って貰った。
やっぱり何か僕も思うんだけれども地味な感じがする。涼子さんの声は凄い高い声が出る。それを利用して作っていけば良いんじゃないかと僕は思った。
今度は地味ではなくちゃんと奈々子さんの高い声を利用して作ってみた。時計を見るともう五時を過ぎていた。何だろう。涼子さんと斎藤さんの歌はすぐに作れたのに奈々子さんの歌を作るのはそれはもう大変な事だと思い知らされる。
何で僕が奈々子さんの歌を作ると地味になってしまうかは、奈々子さんは普通に歌うと普通な感じなんだよな。それではダメな感じがする。だから奈々子さんの歌を作るには奈々子さんの高い声を利用しようと思っている。
でも今日はもう時間だ。また明日にしよう。
そういう事で時計を見ると午後六時を回っていた。
そろそろ引き上げようと思う。
そこで鈴木さんが僕達の前に現れた。
「あなた達お疲れのようね。武道館演奏まで後、一週間を切ったわ、明日から武道館の会場で練習するように手配しておいたわ」
「本当ですか?」
僕は驚いたし、みんなも驚いている。明日武道館で演奏が出来るのか。それはもう楽しみであった。それに夢みたいな話だもんな。いくつもの大物アーティスト達が歌った場所でもあるのだから。その舞台でみんなで演奏をする事になったのだ。さらに鈴木さんは言っていたが、コンサートに使う機材や飾りなども用意してあると言っている。
武道館演奏では気を引き締めて行くしかない。あの憧れの舞台に立つことに僕達はテンションが上がっていた。とにかく帰ったら、その準備として歌をバンバン作りたいと思っている。
僕が帰るとアコースティックギターを片手に曲作りをしていた。本当に大変な作業だが、みんなも詩を書くことに没頭している。
まずは奈々子さんの歌だよな。ちゃんと奈々子さんの高い音質を利用できるか不安であった。
でもその不安は一気に解消された。そうだ。先ほど作った歌に1オクターブ高い音域にすれば良いんじゃないか、僕って本当に天才かも。自分で歌ってみてもなかなか歌えるようにはならなかった。これは奈々子さんが歌えばきっと良い歌になるはず。
アンプも繋がずに自主練をしている奈々子さんを呼んだ。
「何よ。アツジあたしのソロの歌でも出来たって言うの?」
「うん、奈々子さんにしか歌えないよこの歌は」
譜面を見せると奈々子さんは嬉しそうにしていた。
「本当に良い歌が出来たのねアツジ。さすがアツジだね」
「何々、奈々子のソロの歌が出来上がったって言うの?」
「あっ君さんが作った歌最高に良い歌ですもんね」
部屋で歌うのは近所迷惑になってしまうのでとりあえず、近くの公園に行き、そこで思い切り僕が奈々子さんの為に作った歌をみんなに披露して貰う。
奈々子さんは公園に行き大声でその歌を歌った。
「凄い、桃子よりもうまいんじゃない奈々子さんって」
「そんな事はないわよ桃子ちゃんの方があたしよりうまいわよ。桃子ちゃんはソウルメイトの要でもあるんだからね」
と奈々子さんが謙遜してみせる。
奈々子さんは嬉しいとすぐに顔に出てしまうタイプだからな。それに本気で相手を嫌うときは笑顔の鉄仮面を被る癖がある。でも最近の奈々子さんはその鉄仮面を被ることなく良く涼子さんを本気で喧嘩する。本当に桃子の言うとおり奈々子さんと涼子さんは仲が良いのかもしれない。
そういう事で奈々子さんのソロの歌は完成した。
明日は武道館でリハーサルだ。それに向かって僕達は頑張るしかない。頑張って頑張って武道館に来る人達をアッと言わせたいと思っている。
それにコンサートのチケットは三十分で完売したと鈴木さんに聞いた。それほど僕達のライブに関心を持つ物が結構いるんだなと思った。
そう言えば奈々子さんの歌を作るのに没頭しすぎて夕飯を食べることを忘れていた。僕達ご飯を作っている暇などないので、僕達は近くの吉野屋の牛丼を食べることにした。
「たまにこういう所でご飯を食べるのも良いかもしれないね」
桃子はしみじみとした感じで食べている。桃子は小盛りで僕達は並盛りだった。桃子は小食だからな。
時計の針を見てみると午後九時を回っていた。
「よし、後一時間小説に没頭しよう」
「本当にあっ君は疲れ知らずだね」
「あっ君さんは私達の自信の源ですから」
「そうだよね。アツジがいたから武道館ライブなんて話が出てきた物だからね」
「さすがは私の彼氏でしょ。奈々子には絶対に渡さないから」
涼子さんはまた何か喧嘩になりそうな事を口走っていた。
「別に涼子の彼氏なら別にあたしは人の彼氏なんて取ろうとはしていないわよ」
「そんな事を言って、奈々子あたしにあっ君を取られて嫉妬しているんじゃない」
「そんな事ないわよ。何よ涼子あたしにまた喧嘩を売っているの?」
奈々子さんの台詞に僕と斎藤さんは互いに見合って喧嘩を止める、準備をしていた。でも僕は、何か二人の喧嘩を間近で見たくて今日は斎藤さんに「喧嘩ならやらせておこうよ」と言っておいた。斎藤さんは「あっ君さんはそれで良いんですか」「良いと思うよたまには本気でぶつかり合って喧嘩でも何でもさせてあげようよ」「あっ君さんがそう言うなら」
そして涼子さんと奈々子さんは本当に喧嘩をおっぱじめてしまった。
二人は本気で喧嘩をしている。何かそれを見るのもたまには良いのかもしれない。
「涼子ちゃん。頑張ってそれに奈々子さんも」
と斎藤さんは声援を送っている。全くこの二人はもう仕方がない。喧嘩はどちらかが参ったと言った方が負けである。
喧嘩はほぼ互角、小さい方の涼子さんは不利だと思っていたが涼子さんは喧嘩慣れしているのか、負けずと喧嘩をおっぱじめている。
本当に楽しいひとときである。




