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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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桃子の命を懸けた勇気

「尾島さんを殺したのは豊川先生だと久川は思っている」


「豊川・・・先生は・・・そんなことを・・・するような人じゃない」


 喋ることもままならない僕は必死にその思いを伝えた。


「私も豊川先生がそんな事をするはずがないと思っている」


 そうだ。豊川先生がそんな事をするはずがないと思っている。豊川先生は僕達がピンチの時に助けてくれるようなヒーローのような存在だ。でも光さんの話に豊川先生とその尾島さんと言う人の間に何が起こったのか凄く気になる。


「やあ、光ちゃんじゃないか!」


 突然僕達の部屋に入ってきたのは何者か?僕は一発でその人が分かった。

 この人が裏世界の人間の久川だと。


「久川さん。いったいここに何をしに来たって言うの?あなた自分のやっていることが分かってやっているの?」


 久川は全身黒いスーツ姿で現れた。それに僕は何か久川から得体の知れない何か不気味なオーラをまとっているような感じで戦いた。


「君達に危害を加えるつもりはないが、まさか僕の舎弟が君達に恨みを持っていたから、その力を貸してあげただけだよ。それに君達は豊川の味方みたいだからね。ここで君達の息の根を止める事だって出来るんだよ」


 そう言って拳銃を僕達に向けた。


「その引き金を引くならせめて私に向けなさい」


「君は本当に生徒思いの良い子だったね。僕は尾島さんの次に光ちゃん。君のことが好きだったよ」


「私も久川さん、あなたのことが好きだったよ。でも今のあなたはすでに心は腐りかけている」


「はっはっはっ、君にそんなことを言われると正直傷つくな、僕は君達の事なんてどうでも良いけれど、僕の舎弟達が君達を狙うだろうね。それに君達は豊川の生徒らしいじゃないか。これは豊川にとって君達を痛めつけて犯せば豊川はどう思うだろうな」


「させない。そんなことは絶対にさせない」


「じゃあ、ここで死んで貰おうか」


 そう言って久川は光さんに拳銃を向けて、そこで桃子が「光さんをやるなら私をやって」と光さんを守るように光さんの前に立つ桃子。


「ほう。こんな女の子までが君の味方か。それに君は本当に信頼された生徒に恵まれているんだね」


「桃子ちゃん下がっていて、これは久川と私の問題よ」


「いいや、桃子は下がらない。桃子が光さんを守るんだ」


「こんな幼気な少女が君をかばうなんて・・・」


 すると、久川はその拳銃の引き金を引いた。


 パンッと音がはじけ飛び、その拳銃の引き金を引いたら拳銃の先から火が出る、拳銃式のライターだった。


 桃子はそれが拳銃式のライターとは知らずに引き金の音で気絶してしまった。


「これが本当の拳銃だったら、その子の頭が蜂の巣になっていたのになあ、君は本当に信頼されている仲間に出会ったんだね。それに命までかけてくれる人に出会える何てね。君が羨ましいよ。僕にはそんな人はいないからね」


 光さんは倒れた桃子ちゃんを抱いて、ショック死はしておらず、本当に気を失ってしまっただけだった。


「今日はその子の命を張った演出を見れた事だし、今日のところはおいとまさせて貰うよ」


 そう言っておもちゃの拳銃を捨てて僕達の前から久川は去って行った。

 僕も気を失ってしまいそうな程、ハラハラした。桃子は本気で光さんを助けようとしてあげたんだ。もしこれが本当の銃なら桃子の頭は久川の言う通り蜂の巣になっていたところだった。


 桃子本当に偉いぞ。僕は本当に良い仲間、良い妹を持ったと本気で思った。


「光さん。大丈夫だった」


「私は大丈夫だけれども、桃子ちゃんが気絶してしまったわ」


「光さん。桃子を僕のベットの隣に寝かせてくれませんか?」


「分かったわ」


 そう言って光さんは僕と同じベットの上に乗り桃子を抱きしめた。

 桃子は本当にかわいい僕の妹だ。本気で桃子は光さんを守ろうとしてくれた。そんな幼気な桃子にこんな事をする久川を許すわけにはいかない。

 奈々子さんも涼子さんも斎藤さんもちゃんと豊川先生のところに行ったのだろうか?心配だった。また桃子のように無茶をしていないか?


 久川の話によると、安井に恨みを持つ連中に僕達が豊川先生の生徒だと知って、その安井に恨みを持つ連中のバックについたみたいだ。


 警察の反応を見ると、久川の名前を出しただけで警察は動こうとはしない。それほど裏の世界では甚大な力を持っていることが分かった。


 何かそう思うと怖くなってきた。恐ろしい夢でも見ているような気がする。僕の体が動けばみんなを助ける事が出来るのに今はそんな事は出来ない。いや怪我が完治しても僕の力では久川を止めることは出来ない。





 ******   ******




 次の日の朝、起きると光さんも桃子もいなかった。僕はそれで恐ろしく心配になって光さんの携帯にかけた。病院内では携帯は使用禁止だが今はそんな事は言っていられない。とにかくみんな豊川先生のところにいてくれと僕は切に思う。


「もしもし、光さんですか?」


「そうよ。あっ君どうかしたの?」


「今、どこにいるんですか?」


「今は豊川先生のところ」


「みんなもいるんですか?」


「いるわよ。桃子ちゃんも涼子ちゃんも奈々子も翔子ちゃんも一緒だよ」


 それで僕は一安心をした。


「みんなに言っておいてください。妙な事はしてはいけないと」


「そんな事絶対にさせないわ。夜は病院は入院患者の前に居座ってはいけないと言われたので、とりあえず安全な豊川先生のところにいるよ。今から私はあっ君のところに行くから」


「でも、ここに来る途中で久川の連中が光さんを襲ったりはしませんか?」


「あっ君私を誰だと思っているの?久川の連中は私には手が出せないはず」


「そうなんですか。分かりました、じゃあ病院で待っています」


「うん。すぐに行くわ」


 と言って通話は切れた。


 これはもう戦争なのかもしれない。表社会の豊川先生は裏の世界の人と交流がある。それに裏の世界の久川にも甚大な力を持つ者がいる。この二つがぶつかり合えば誰かが傷ついてしまうかもしれない。現に安井も僕も傷つけられた。今回の件は安井の仲間である僕達が豊川先生の生徒だと言うことで久川は僕達を攻撃した。もしかしたら僕達が豊川先生と出会っていなければこんな事にはならなかったんじゃないかと思っている。

 でも僕達は豊川先生がいなければこんなに素晴らしい仲間に出会えることはなかった。豊川先生のせいにしたら、それはお門違いだ。豊川先生に出会わなければ、こんな素敵な出会いはなかったと思っている。

 そうだ。そんな素敵な出会いがあったのだから、僕達には今があるんだ。今こそ力を合わせて久川からの攻防に立ち向かわなくてはいけない。


 そうと決まったら、今こそ僕も豊川先生のところで待機して久川の攻防に立ち向かわなくてはいけない。でも怪我のせいでベッドからは動く事は出来ない。とにかく僕に出来ることをするんだ。


 僕は涼子さんの携帯にかけた。


「涼子さん。僕アツジだけれども」


「あっ君。大丈夫?」


「僕は大丈夫だけれども、みんなは大丈夫だと光さんから聞いたよ」


「本当は私があっ君の側にいてあげたいけれど、それは無理があると昨日の事を聞いて思い知らされたよ」


「話は変わるけれど、本当は今日はスクーリングの日だったね」


「あっ君、今はそれどころじゃないでしょ。それに私達がスクーリングに行ったら、みんなもやられてしまうかもしれないわ」


「大丈夫。僕はそんなことはさせない」


「でも今回の件は私達に出来ることは何もないよ。ただ、豊川先生のところで待機する他ないよ」


 確かにその通りだ。でも・・・。

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