久川の凄惨な過去
豊川先生に何の因果があって、僕達にこんな事をするのか?久川って奴はとんでもない奴だと言う事は分かった。僕は久川って奴の手下にやられてこのような傷を負った。体を少しでも動かすだけで凄い激痛が走った。
「とにかくみんな、久川の手下は僕達を狙ってくる。涼子さん達は豊川先生の元で待機していた方が良い」
「それもそうね。久川さんあの事を引きずっていたなんて」
光さんが言う事に気になった。
「光さんあの事って?・・・うっ」
喋るだけでも体に激痛が走る。
「あっ君は無理しちゃダメ!」
僕はその久川って奴と豊川先生の因果関係が気になった。どうして僕達は豊川先生をバックにしているだけでやられてしまったのか?光さんが言っていたあの事っていったい何なのだろう?
「とにかくみんな豊川先生から離れないで、今僕達が出来ることはこれぐらいの事しか出来ないのだから。僕達は無力だ。その久川って言う奴の前には僕達が敵う相手ではない。だから、みんな豊川先生の場所から離れないで」
「みんなあっ君の言う通りよ、その久川は裏社会では名の通じる人よ。そんな人に狙われるなんて、私達も運がないと言った方が良いわ。だから私からも言っておくから豊川先生の元から離れないで。あっ君は私に任せて」
と光さんは言う。
「光さん。あっ君は私が守るわ。だから光さんは下がっていて」
「そう言えば涼子ちゃんはあっ君と付き合っていたんだね。でも、あなたもここにいたら久川の餌食になってしまうのが落ちよ。大丈夫。あなたの恋人は私が守るわ」
「嫌よ。あっ君は私が守るんだから光さんは下がっていて」
「涼子さん。お願い光さんの・・・うっ」
喋るだけでも激痛が走る。
「大丈夫、あっ君。私があっ君の側にいてあげるから安心して」
「だから、ここは光さんに任せて・・・涼子さんは・・・」
もう限界だ喋るだけでも体中に激痛が走る。
「涼子、ここは光さんに任せた方が良いに決まっているでしょ。あたし達みたいな人に何が出来ると言うの?」
奈々子さんは必死に訴える。
「だって私の大切な恋人のあっ君がこんな目にあっているんだよ。そのままにしておくなんて出来ないよ」
「涼子ちゃん気持ちは分かるけれども、ここは私に任せてくれないかな?私達には危険が迫っているのよ」
「そんな事は分かっている。でも私はあっ君の恋人だもん。恋人の事を守るのはたとえ命に代えても私はあっ君を守りたい」
「久川を止められるのは私しかいないの。そう久川を知る私にしか」
「いったい、その久川って何者なのよ。私達が何をしたって言うの?どうしてあっ君がこんな目に会わなければならないの?」
「それは安井に決まっているでしょ。あいつなんかを仲間にしたから、アツジはこんな目にあってしまったのよ」
「・・・安井君も一応私達の仲間よ」
「あんな奴仲間なんかじゃないよ。あいつはあたし達の膿よ」
「・・・」
確かに奈々子さんの言うとおりかもしれない。安井を仲間にして僕はやられて新聞配達の同僚達も怪我を負わされてしまった。しかもこの事を警察に言っても久川って言う名前を聞いただけで警察は動こうとはしない。それほどやばい人物に僕達は狙われてしまったのだ。
僕はもう喋る事すら出来ない程激痛が走る。
だから僕はここはひいてくれと言わんばかりに涼子さんの腕を握った。
「どうしたのあっ君。やっぱり私にいて欲しいんでしょ」
その時僕は喋ることがままならず、首を左右に振った。
「どうしてあっ君までそんなことを言うの?」
お願い涼子さん。と願いながら僕は首を左右に振った。
「バカッ!」
と言って僕の病室から出て行った。
「奈々子、今涼子ちゃんに一人にしてしまったら久川の思うつぼよ、追いかけて説得して貰えないかしら、そして豊川先生のところに行っていて、私は久川の事を知っている。彼がなぜ豊川先生の生徒達を狙うのかも」
「分かりました」
「言うことを聞かなかったらしばいてでも止めて」
明日はそう言えば学校のスクーリングだ。でもこんな状態じゃいけないし、仮に行っても、また久川の仲間達がクラスメイトを襲うかもしれない。
とにかく今は我慢だ。僕達に出来ることと言ったら、こうして身の安全を確保する事だと思っている。
くそ、この体さえ動けばみんなを守ることが出来るのに。今は小説や絵やバンドもおわづけ状態だ。くそっ本当に僕達はついていないのかもしれない。でもそう思っちゃダメだ。今回の件は力では解決できないだろう。とにかく話し合いで解決できない物だろうか?
そうだ。僕達は一人じゃないんだ。もっと胸を張って挑むしかないな。
「お兄ちゃん。大丈夫?」
桃子が心配する。
「大丈夫だよ桃子。桃子もここに残るか?」
「あっ君さんに光さん。私も涼子ちゃんの事が心配です。だから私も行きます」
「お願い。今回の件は本当に危険だわ。涼子ちゃんと奈々子ちゃんを見つけたら、即刻三人で豊川先生が経営する塾に待機していて、豊川先生には私から言っておくから」
「分かりました。それでは桃子さんにあっ君さんに光さん。涼子ちゃんと奈々子ちゃんにはちゃんと伝えておきますから、安心して待っていてくださいね」
病室は僕と光さんと桃子の三人になってしまった。この二人がいるだけで僕は心強い、それよりも涼子さんは自棄を起こして何か無茶な事をしないか心配であった。
「光さんはその久川さんの事について何か知っているんですか?・・・」
「さっきも言ったとおり久川は豊川先生の元教え子よ、私が初めて会ったのは小学六年の頃だけど、初めて彼と会ったとき彼は凄惨ないじめを受けていたわ。それに親も教師も助けてはくれないかった。唯一助けてくれたのが豊川先生だったわ。豊川先生は生徒一人一人に真摯に向き合っていた人だからね」
「その、久川が・・・」
喋るだけでも痛みが走る。
「喋らなくても大丈夫よ。久川さんの事を知りたいんでしょ。私が知っている限りの事を伝えるわ。久川は豊川先生の事を慕っていたわ。それに久川も豊川先生のようになって、いじめや親の虐待に悩む人達に手を差し伸べられるような人間になりたいと思ったみたいなのよ。それで久川は必死に勉強して、大学に行って豊川先生の元で働くことを決意したらしいわ」
「そんな人が・・・なぜ?」
「あるとき尾島さんって体の不自由な女性が塾に入ってきたの。久川はその人に恋に落ちた。久川さんと尾島さんは付き合い始めて、体の不自由な尾島さんの事を良く慕っていたわ。そこで事件は起きた。尾島さんは受話器を手に睡眠薬を大量に摂取して死んでしまったのよ。その連絡先は豊川先生だったのよ。尾島さんは豊川先生に相談をしている最中に睡眠薬を大量に摂取して死んでしまったのよ」
「その・・・尾島さんは?」
「どういう相談をしていたかは不明よ。久川は必死に尋ねたんだけど、豊川先生はその事に対して話そうとはしなかった。尾島さんは豊川先生にどのような相談をしていたか?それで久川は次第に素行が悪くなり、豊川先生にどのような相談を受けていたのか何度も問いかけた。でも豊川先生は喋らなかった。いったい尾島さんは豊川先生にどのような相談をしていたか分からないままなのよ。それで久川は尾島さんを殺したのだと思い始めて、豊川先生に殺意を抱くようになり、包丁で突き刺そうとしたが、豊川先生は甚大なる力の持ち主で、そんな久川をイチコロに返り討ちにしたそうよ」
そんな久川さんと尾島さんにいったい何があったのか気になった。




