紙芝居に向けて
いよいよ明日園児達にティアラ江東で紙芝居の演目をする事になった。このティアラ江東は様々な有名なアーティストがコンサートなど演目などをしていると聞いている。
僕達は前日リハーサルの為にティアラ江東に行き、紙芝居の練習をしていた。
映写機で僕達が描いた絵をスクリーンに映し出すことが出来た。
「これは凄いよアツジ、あたし達の絵がこんなにも凄い物になるなんて」
奈々子さんは興奮している。
それだけじゃない。僕達が紙芝居に乗せる楽曲用の楽器が舞台に置かれている。
紙芝居はまるでコンサートのような感じであった。
そこで僕達は練習をする事にした。園児達が喜んでくれる紙芝居にしたいと僕は思っている。
僕が映写機の移す舞台と観客席の後ろ側の所に立ち、そこで僕は映写機で僕達が描いた絵をセル画にして映写機で拡大する。そこで僕が語り部となっている。
そこでリハーサルは開始された。
題名はご存じの通り、『絵を描く少女』となっている。
リハーサルをして分かったがこれなら園児達も喜んでくれると思っている。
ここはこうした方が良いとか、このようにして演奏を開始した方が良いんじゃないかと色々と僕達で議論した。もっと園児達に面白い物を見せたいと言うのが僕達の狙いだ。こんな素敵な事をやらせてくれる光さんに感謝するしかなかった。本当に僕達はそれだけで楽しい。
僕達はもう以心伝心で事を成し遂げて、お昼ご飯を食べるのを忘れてしまうくらいに楽しい。
何だろう?僕はちょっと無理をしすぎたのか、目眩がしてきた。今日はこれぐらいにした方が良いと思って、リハーサルは済んだ。
絵の描写も演奏も素晴らしく、本当にいい物語が完成されたと思っている。
さあ、明日になったら、早速園児達にこの物語を見て貰って喜んでくれることを期待している。
忘れていたが今日も新聞配達の仕事に出かけなければならない。
何だろう。僕は凄くだるい。また風邪をひきそうな感じだった。
「アツジ、何か顔色が悪いよ。もしかしてあんたまた風邪をひいたの?」
「いや、そんな事は無いよ。僕はいつだって元気さ!」
奈々子さんはいつも僕のことを心配してくる。以前も風邪をひいた時、奈々子さんに気づかれてしまったっけ。
「あっ君、今日は新聞配達の仕事は休んだ方が良いんじゃないの?明日、園児達の紙芝居が控えているんだから」
涼子さんも心配する。
「お兄ちゃん、また無理をしていない?」
「そうだぜ、長谷川、無理は良くないよ。それに明日紙芝居だろ。お前がいなかったら誰がお前の代役を頼むんだよ」
「あっ君さん今日の所は休んだ方が良いと思いますけれど」
僕はみんなに心配されて気持ちは嬉しいが何かとてつもない怒りが僕の中にやってきた。
「大丈夫だって言っているじゃん!これしきの事で僕は!」
感情的になり興奮して僕はその場で倒れてしまった。
「やっぱりアツジ無理をしているんじゃない。だから明日ちゃんと紙芝居が出来るように、今日の所は新聞配達は休みましょう」
「大丈夫って言っているじゃん」
すると涼子さんが僕の頬を叩いた。
「何を言っているのよ。明日園児達は私達の紙芝居を楽しみに待っている人がいるんだよ。それで体調を崩してしまったら、いったいどうするつもりなの?あっ君の代わりはいないんだよ」
涼子さんに叩かれたことに僕達の間に沈黙が走った。そうだ。僕が今日新聞配達をしてまた体調を崩したら、あんなに頑張った紙芝居が出来なくなってしまう。そうなったら元も子もないと思って僕はみんなに謝った。
「ごめんなさい」
と。
「解れば良いのよ、あっ君は明日に備えて今日の所は休みなさい」
そう涼子さんに言われて僕は休むことを決意した。
みんなが新聞配達をしている間、僕は一人で布団の中に入って眠っていた。眠っていたと言うよりも目を閉じているだけで本当の眠りには入っていない。
ああ、本当にだるい。体温計で自分の体温を測ってみると、七度二分になっていて少し微熱気味だった。本当に新聞配達の仕事を休んで正解だったのかもしれない。これで無理をして明日の紙芝居がおじゃんになってしまったら、何にも無くなってしまっていただろう。きっと園児達は明日の僕達がやる紙芝居を楽しみにしてくれている人はいると思う。そうでない子達にも良い物を見せてあげたいと思っている。
今日はみんなのお言葉に甘えて休むことにしよう。
ハァ、と思わずため息を漏らしてしまい、最近僕は一日も休まず絵や小説やバンドに勉強などをしてきた。みんなの熱をあやかってやってきたのだからな。みんなと事をしていると時間なんてあっと言う間に過ぎ去ってしまう。
明日の紙芝居も時間を忘れるほどに園児達に喜んで貰いたいと言う気持ちで励んでいた。僕はちょっと力みすぎたのかもしれない。今やっていることが楽しいからって無理をして風邪をこじらせたらまずいと思う。
これからはもっと自分をいたわらなきゃいけないと思った。みんなの言うとおりだ。ありがとうみんな。本当に恩にきるよ。
何かこうしてぼんやりしていると時間が長く感じてしまう。僕はもっとやれるはずだと思ったが今日の所はみんなの言うとおり、休んでいた方が良いだろう。
本当に今が楽しい。いつまで僕達はこの青春を謳歌する事が出来るのであろうか。いつかは来る人生の分岐点で僕達は別れる日が来るのだろうか?そう思うと何か悲しい感じがしていたたまれなくなってしまう。
でもまだ僕達は十五歳で今年十六歳だ。まだ高校を卒業するまで後二年はある。それまでに後悔の無いように人生を謳歌したいと思っている。
でもこうして横になりぼんやりと考え事をしていると、紙芝居の事で何かしなきゃいけないという気持ちに駆られてしまう。
僕はいつの間にか眠ってしまったのか、起きると台所から音がした。何事かと思って台所に行くと涼子さんと奈々子さんと光さんが料理を作っていた。
「あら、アツジ調子はどう?」
「うん。少し休んで気分は良いよ」
「それは良かった、今涼子とあたしと光さんでアツジにおうどんを作ってあげているところだから」
「そう、それは楽しみだ」
「それよりも熱を測ってみなさいよ」
僕はぎくりとした。先ほど体温計で熱を測ったら、七度二分になっていたっけ。ここは観念して僕は奈々子さんの言うとおり、体温計で体温を測っている。計ってみると熱は下がっていて六度九分になっている。
すると光さんが僕のおでこと光さんのおでこをくっつけてきた。これはこれで刺激的だと思った。
「あっ君もう熱はないみたいだね。今日は明日に備えて眠りなさい。明日また新聞配達でそれから園児達に紙芝居を披露するんでしょ。任せたわよあっ君!」
そう言って光さんは僕の背中を叩いた。
「さあ、あっ君にみんなおうどん出来たよ」
涼子さんがそう言ってお盆にうどんの入ったどんぶりを乗せてちゃぶ台まで運んだ。
ちゃぶ台は七人にはちょっと狭すぎるが仕方が無い。ここは僕と涼子さんの家で、こんな七人もの人達を入れるスペースはないのだから。
それと涼子さんはブロッコリーとベーコンの炒め物を出してきた。
おうどんはおいしく鰹と昆布の出汁が良くきいている。
それにブロッコリーとベーコンの炒め物もおいしく出来ていた。
明日の紙芝居ちゃんと園児達が喜んでくれると僕は信じている。僕達だったら出来ると思っている。




