安井を受け入れる僕達
奈々子さんは安井を受け入れる事に反対していたが、涼子さんは安井を受け入れることを賛成していた。
「涼子、あなたどういうつもりよ。こんな奴を受け入れるなんて信じられない。あなたは安井に色々なひどいことをされてきたんでしょ」
「されてきたけれども、私は安井を受け入れることに賛成しているよ。それに安井君には居場所がないんでしょ」
「そんな事あたし達が知ったことじゃないよ」
「確かに知ったことじゃないけれども、安井君を受け入れることは私は賛成しても良いと思っている」
「アツジ、翔子はどう思っているの?」
「別に良いんじゃないかな。安井はもう僕達にひどいことをする事はないと思うから」
「そうね、安井君をまた一人にしてしまうとまた私達に危害を加えてくるかもしれないからね」
「奈々子さん。安井を受け入れてあげようよ。僕達は光さんに借りがあるじゃないか。そう思って接してあげれば良いんじゃないかな?」
そんな会話を見ている安井は「そうだよね。俺がいたらみんな喧嘩になってしまうよね。俺のやったことは許されないことなんだもんな」
安井が去ろうとしたその時光さんがその手を取った。
「待って安井君。私は安井君の味方だからね。だからって去ることはないんじゃないかな?」
「でも俺はみんなに酷いことをしてきた。そんな俺を受け入れてくれる所なんてないよ」
「安井君はどうしたいの?」
「みんなと一緒に勉強したいしバンドもしたいと思っている」
「その事をちゃんとみんなに伝えてあげなさいよ」
「あのみんな俺のことを受け入れてくれないかな?みんなには散々酷いことをしてきたけれど、俺は君達の仲間に入れてくれないかな?」
その意見には涼子さんに斎藤さんに僕は渋々だが了解した。でも奈々子さんはそれを許さなかった。
「あなた達正気なの?あたし達は安井のおかげで酷い目に遭ってきたんだからね」
「それはもう良いじゃないか奈々子さん。安井はもう改心した事だし、安井には理解者が必要だと思っているんだ」
そうだ。本で見たことがある。犯罪に手を染めてしまうのはその人に理解者がいないからそうなってしまうのだと書いてあった。だから安井にも理解者が必要だと思っている。
「あっ君の言う通りよ。安井君には理解者が必要だと思っている。それに安井君はもう同じ事はしないわ」
「あたしは納得できないよ。こんな奴がどうなったってあたし達には関係ないよ」
「奈々子、気持ちは分かるけれども、安井君には理解者や仲間が必要なのよ。分かってあげられないかな?」
「分からないよ。こんな奴を仲間に何て出来ないよ」
分からないよな。そうだよな。その気持ち痛いほど僕は分かる。でも奈々子さん。安井には真の理解者である光さんや僕達が必要なんだ。
「とりあえず、奈々子お昼ご飯にしましょ」
「奈々子さん。少し落ち着いて。別に安井はもう僕達に酷いことは出来ないよ。だから」
「アツジ、あなたも安井に酷いことをされてきたんでしょ。良くいじめられたり、挙げ句の果てには殺されそうになったときだってあったじゃない。それにあたし達が行こうとした両国高校に行けなかったのは安井のせいなんだからね」
僕と涼子さんと斎藤さんと光さんと桃子は安井の事を受け入れるが、奈々子さんは受け入れる気はないみたいだ。その気持ちは充分に分かる。でも僕は。
「昨日の敵は今日の友と言うこともある。だから奈々子さん。安井を受け入れないのは良いけれど、一緒にバンドをしたり勉強をする事は良いじゃないか」
「あんたってどうしようもないほどお人好しね」
「以前僕を好きになったのも、そんなお人好しの僕が好きだから、付き合ったこともあったんだよね」
すると奈々子さんは顔を真っ赤にして「バカ!」と言って僕の頬にピンタを喰らわした。
「分かったわよ。あたしも安井を受け入れるわよ。でも何かあったらあたしは知らないからね」
奈々子さんは安井の事は嫌いだが、何とか、受け入れてくれた。
それで光さんの手料理と言うことで今日はオムライスを作ってくれることになった。僕と奈々子さんに涼子さん桃子に斎藤さんに安井と光さん。僕達のバンドメンバーは六人になってしまった。
まさか安井が僕達のメンバーになるなんて夢にも思わなかった。僕達に散々酷いことをしてきたがでもこいつのおかげで両国高校には落ちてしまったがそれで良かったのかもしれない。僕達は本当についている人間だと思っている。
そうだ。僕達は強運なのだ。安井が改心したとしても、また何か問題があるかもしれないがそれでも構わない、その時は僕が安井をぶっ飛ばしてでも止めてみせる。
何だろう。安井が加わった事で何かワクワクとしてきた。そんな事を考えていると光さんのオムライスが出来上がった。丁度六人分を作って卵も六個使ったみたいだ。
「みんな、たんと食べてね」
「ありがとう光さん。いつもいつもありがとうございます」
光さんのオムライスはおいしいがこうしてみんなで食べるご飯は特別においしい。まさか安井の奴が僕達の友達になるとは思わなかった。僕は本当に光さんに会えて良かったと思っている。光さんの夢は不登校になった子の学校を作ることが夢だと言っていた。きっと光さんならその夢を果たせるのかもしれない。それに光さんの書く小説は見事なまでに良く描かれている。さすがは図書館の女神様事、光さんだ。
僕達がオムライスを食べているとき、光さんは言った。
「今度近所の保育園で紙芝居をしたいと思っているのよ。良かったらみんなも手伝ってくれないかな」
「お安いご用ですよ。僕は光さんの為なら何でもしますよ」
「あたしもやるよ。何かあたし子供が好きだからね」
と奈々子さんは言う。
「それって光さんも合わせて六人でやるの?」
涼子さんが言う。
「俺もやるよ。何か楽しそうだしな」
「私もやります」
「桃子もやる」
安井と斎藤さんと桃子は言う。
「じゃあ、決まりね」
「それよりも紙芝居って何をテーマにしてやれば良いの?」
「それを考えるのが私達の役目よ」
安井はどうか知らないが僕達はいつも小説を描いているために、そう言った物語を作るのが好きだ。安井以外は僕達の夢は小説家兼絵師になることだ。これは僕達にとって打って付けの事かもしれない。
早速、今日は紙芝居を使った絵をアイパットで描くことになった。
「何だ。安井、お前もアイパットを買ったのか?」
「ああ、お年玉の貯金で買ったよ」
「それよりも安井、お前、学校に行かなくて良いのか?」
「あんな学校行く価値何てないよ。みんな自分の勉強の事ばかりで相手を蹴落とすことしか考えない奴らばかりだからな」
「親は何て言っているんだよ」
「多分この事がばれたら親に勘当されてしまうかもしれないな」
「お前学校に行った方が良いんじゃないか?」
「だから何度も言わせるなよ。あんな学校行く価値なんてないって」
「それでお前親に勘当されたらどうする気だ?」
「その時はその時で俺も新聞配達の仕事で一人暮らしを始めるさ」
「そうか」
「何かこうしてみんなで作業をしていると嫌な勉強も楽しくなってくるよな」
そうだ。僕達は楽しく勉強して楽しくバンドをして楽しく絵を描いていたし楽しく小説も書いたりした。実を言うと僕はまだ安井のことを恨んでいる自分が存在している。何でこんな奴を仲間にしてしまったのだろうと。でもそれは過去の事だ。昔の安井は目つきが悪く、気に入らない奴なら容赦なくいじめる人間だった。それで今では優しい目をしている。
とにかくみんなで紙芝居を作るために僕は物語を書いている。




