光さんには借りがある
安井の奴が近くにいるだけで嫌な気分になってくる。あんなどうしようもない奴の肩を光さんが持つことになるなんて。光さんも光さんだよな。多分英明塾塾長の豊川先生に頼まれたんじゃないかと僕は思った。あの先生凄く心の広い人だからな。
僕達は涼子さんのドラムに合わせて演奏している。何かいつもの演奏とは違っていた。やっぱり涼子さんも安井の事が気になっているのだろう。涼子さんのいつもの過激な演奏ではない。それに斎藤さんも奈々子さんも同じであった。でも安井とは関係ない桃子はいつも通り『ラララ』と歌っていた。
そして光さんが図書館のスタジオに安井を連れてきた。するとみんな演奏をする事をやめて怯えていた。
だから僕が「安井何の用だよ!」
光さんが「あっ君そんな怖い顔しないの」
「じゃあ、そんな奴連れてこないでくださいよ」
「まあ、折り入ってみんなに頼みたいことがあるんだ」
「何ですか?」
「安井君もバンドの一員として入れてあげてくれないかしら?」
「はぁ!?何を言っているんですか!?光さん正気ですか!?」
「ダメだよね。そうだよね。安井君にバンドに入れることは出来ないよね」
「当然じゃないですか!安井の奴に色々なひどいことをされてきたんですよ」
いくら光さんの頼みとは言え、その頼みだけは聞くことは出来なかった。そして安井と光さんはスタジオから出て行った。
涼子さんは怯えながら「光さん何を考えているのだろう」と恐れていた。奈々子さんも斎藤さんも恐れていた。安井が僕達のバンドに入ってしまったらむちゃくちゃになってしまう。
今日はバンドの調子が悪く、僕達はいつもより早めにバンド活動を止めにした。
安井のおかげで僕達は今日は何もする気も起きなかった。
だから僕達は小説の勉強の為に漫画を読んでいた。
漫画を読んでいると、悪役の人物が安井に見えて憤りが止まらなかった。安井は悪の集大成と呼んでも良いと思っている。すると漫画を読む気にもならなくなってしまう。まだ新聞配達の仕事にはまだ早い時間だ。とりあえず学校のレポートを僕だけがやろうとすると、みんなもこぞって僕と同じようにレポートをこなすことになった。
涼子さんが「本当に最悪な日ね今日は、あんな安井が来て」
そこで奈々子さんが「あたしがガツンと光さんに言ってきてあげる」
奈々子さんがそう言うと僕達も安井にガツンと一発言ってこようとして、光さんの側にいる安井の所に向かった。
「おい。安井お前どういうつもりなんだよ。今更僕達の所に来て」
すると光さんが、「そんな言い方はやめてよ、安井君には安井君の悩みがあるんだから」
「そんなの知ったことではないですよ。そんな奴この図書館にいるだけでも僕達のやる気が失せてしまうんですよ」
すると安井はその場で土下座をした。
「本当にごめんなさい。俺が悪かったよ。俺はあんた達が羨ましかった。あんな事をした俺だ。今更謝っても取り返しがつかないことだって分かっている」
「分かっているなら。二度と僕達の所に来ないでくれよ」
僕達は安井を許すわけにはいかなかった。いや許してはいけないと思っている。それに光さんは僕達のバンドに安井を入れるなんてとんでもないことを考える人だ。でも光さんには借りがあるからな。でも安井を許す事は僕達には出来なかった。いや出来なくても良いと思っている。いや光さんには色々と世話をしてくれた事がある。だから。
「じゃあ、安井、光さんには借りがあるからな。だから、一度だけ、僕達のバンドに入れてあげるよ」
そこで奈々子さんが「ちょっとアツジ、あなた正気なの?」
「正気も正気さ、僕達は光さんに借りがあるのだからね」
とりあえず安井をスタジオに招いて演奏を聴かせてあげた。
「おお!すげえ!」
と安井は感嘆をこぼしていた。
でも安井の前だからか、みんないつもよりバンドに集中できていない感じだった。でも僕達は繋がった。たとえそれが安井だけの演奏だとしても、次第に僕達に火がついた。
光さんが「安井君見ている?これが私達の演奏よ」
安井はキラキラと瞳を輝かせて見ていた。そんなに僕達の演奏が良いのか、僕達は安井に対して本気で演奏を開始した。
僕達のデビューシングル、『熱き魂』を歌った。
安井は待ってましたと言わんばかりに僕達のデビューシングルを聞いている。本当はこんな奴の為に僕達は歌いたくない。でも光さんには借りがある。だから仕方なく僕達はこんな奴にも僕達の熱き魂を聞いて欲しいと思っている。
聞いている者が安井だとしても僕達の熱は冷めやしないところを安井に見せつけてやるんだ。すると、何だろう、安井に対して、許せる自分が存在していた。こんな気持ち存在しなくても良いと思っている。でも僕達は演奏をやめることは出来なかった。
あれからどれくらいの時間が経ったのか?僕達は新聞配達の仕事に出かける時間になってしまった。僕達が自転車で新聞配達の仕事に出かけようとすると、安井が「俺も連れて行ってくれないかな?」と図々しい言い方をしてきた。
光さんには借りがあるからな、それも良いだろうと僕は思った。奈々子さんも涼子さんも斎藤さんも不本意だと思っているが、仕方が無いと思っている。
配達所に到着すると、安井の奴が「あの、安井と申します。俺もここで働かせてくれないでしょうか?」と何を言っているんだ、こいつ調子に乗るのも大概にしろと言いたいところだが、社長は「別に構わんよ人手が少なくなっているのだから」と言って安井は採用され、何か僕達に面倒な事に巻き込まれてしまったような気がした。
奈々子さんが「おい。安井、お前調子に乗るのもいい加減にしろよ」
本当に奈々子さんの言うとおりだ。こいつ僕達に今まで最悪な事をしてきたことを反省していないようにも思えてきた。
僕が安井に新聞配達の仕事を教えることになってしまった。
「なあ、長谷川君昨日の敵は今日の友とも言うじゃ無いか」
と安井は調子の良いことをほざきやがった。僕はそんな安井の胸元を掴んで「お前調子に乗るのもいい加減にしろよ。お前のせいで僕達は両国高校に行けなくなってしまったんだからな、それに涼子さんにも深い傷を与えたのもお前なんだからな」
「わ、悪かったよ。でも両国高校に行かなくて良かったんじゃないか?あそこは最悪な高校だよ。自分の為ならどんな奴でも蹴落としてしまえば良いと言うような奴ばかりだよ」
「お前がどんな人生を送って来ようが関係ないんだよ。僕達はお前に散々はめられて悔しい思いをしてきたんだよ。その事も分かっているだろうな。それと僕達を散々ひどいことをしてきたよな。はっきり言ってお前は害役なんだよ。思い上がるのもいい加減にしろよ。光さんが認めても僕達は認めないからな」
そう言って、安井の胸元を離した。今日はどれくらいため息をついたのか分からないほど安井のことで思い悩んでしまった。それよりも社長の言うとおり安井に新聞配達の仕事を教えなければならない。本当に不本意だが。
安井は先ほど僕にされたことを何も気にせずに新聞配達のノウハウを飲み込んだ。こいつに反省という文字は無いのだろうかと思うほどイラッとした。
新聞配達の仕事が終わって今日はジュースをおごるどころじゃ無かった。僕達五人は新聞配達が終わると、とりあえず僕達五人は今日は斎藤さんが晩ご飯の準備をする日だった。そんな時である。光さんから電話があって、今日は光さんが作ってくれると言ってくれた。しかも僕と涼子さんの家に安井も連れて来てとまで言われて僕達は困惑した。




