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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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見ることの出来ない心の傷

 そして光さんは豊川先生の車から出てきた。それに何人もの人達がバイクに乗ってやってきた。


「光さん。どうして僕達の場所が分かったの?」


「奈々子ちゃんに事情を聞いて、あなた達のGPS機能の携帯を辿って来たのよ」


「僕達のGPS機能を使ってここまで来たと言うのですか?」


「そうよ。それに安井君は本当にどうしようもない愚か者ね」


 確かにそうだ。また僕達に嫉妬してこのような仕打ちをしてくるのだから。安井は僕達が入ろうとしていた両国高校の受験を受けなくさせた挙げ句、こんな事を。本当にどうしようもない奴だ。


 涼子さんは余程怖かったのか?下着姿のまま震えている。僕はそんな涼子さんに上着を着せてあげて、抱きしめてあげた。


「涼子さん。もう大丈夫だよ」


 涼子さんはもういつもの自分を演じきれないだろう。その証拠に、涼子さんは僕に泣きついてきた。本当に怖かったのだろうな。それよりも豊川先生が連れてきた人達は強面の人達ばかりだった。


 奈々子さんが「豊川先生、お久しぶりです」


「久しぶりだね。君達の事は光から良く聞いているよ。バンド活動をしながら絵と小説を描いているらしいじゃん」


「はい。いつも光さんにお世話になっています」


「光、この件に関しての借りはヌードモデル一回と言う事で」


「分かっていますよ」


 とやれやれと言った感じの光さんだった。また光さんに借りを作ってしまった。今回の件は僕達だけでは解決は不可能であった。


「それよりも、これ(安井)どうしますか?」


「僕が事情を聞いて何とかするよ」


「えっ!何とかするんですか?」


「うん、この安井君とやらにも何か事情があると思うんだよね。だから僕が安井君を何とかするよ」


 涼子さんにひどい目に遭わせた挙げ句に、こんなどうしようもない嫉妬バカに今更何をすると言うのだろうか?豊川先生は凄く寛大な人だと僕達は思わされる。本当に豊川先生にはお礼を仕切れないほどの事をされている。その根源は光さんなんだろうな。時計を見ると午前二時を示していた。


「やばいよ。僕達新聞配達の仕事に送れてしまうよ」


 と僕は言ったが、今日の所は休んだ方が良いと思って、安井に囚われて怖い思いをした涼子さんのケアーをしてあげなければならない。だが涼子さんは。


「そうだね。新聞配達の仕事に出かけなきゃいけないものね。これからダッシュで新聞配達所に向かえば間に合うかもしれないね」


 涼子さんは安井に奪われた服を着て、これからダッシュで自転車で新聞配達所まで向かうことになった。涼子さんは自転車がないために、豊川先生の車に乗せて貰って、僕と奈々子さんと斎藤さんはそのまま自転車で新聞配達所まで向かった。


 新聞配達所にはギリギリ間に合った。でも僕達は眠っていないんだよな。それでいつもの調子が出るのか心配だったが、僕がそれよりも心配だったのが涼子さんの事だった。あれだけのことを安井にされて、恐怖心で心が麻痺しているんじゃないかと心配だった。


 そして新聞配達所に桃子もやってきた。


「どうしたんですか?みなさん、何か疲れたような顔をしていますが大丈夫ですか?」


 大丈夫なわけないだろうが、とりあえず涼子さんはにっこりと笑顔で「大丈夫だよ」と笑顔で言った。


 本当に涼子さんは強い精神力を持った人なんだと思って僕は涼子さんの事をますます惚れてしまった。普通あんな事をされて恐怖心で心を塞いでしまいがちだが、涼子さんは違う。涼子さんは本当に凄く強い人だ。でも先ほど僕達の前で大泣きしていたんだけれどもな。でも僕達と言う仲間がいるからこそ涼子さんも僕達も強くなれるんじゃないかと思った。仲間って本当に良いよな。こんな素敵な仲間に出会えたのは光さんに出会えたからだ。


 新聞配達は無事に終わって僕達は僕と涼子さんの家に戻り、眠っていないので少し仮眠をとることにした。僕と涼子さんは同じ布団に入って眠り、斎藤さんと奈々子さんは同じ布団に眠ることになった。いつもなら新聞配達から戻ったらタブレットで絵の勉強をしているのだがそうもいかないだろう。


 涼子さんは新聞配達の時は普段通りに仕事をこなしていたがこうして僕と同じ布団の中に入ると凄く震えた手で僕を思いきり抱きしめて眠りについている。涼子さんは口には出さないが今日昨日の事が頭から離れずにひどくおびえていた。


 安井にどんな仕打ちを受けたのか分からないがよっぽど怖かったのだろう。もしかして涼子さんは安井に犯されていたりしていないだろうか?そうしたら僕は安井を本気で殺そうと思っている。豊川先生は安井の事を何とかすると言っていたがいったい何をすると言うのだろう。


 涼子さんがとんだアクシデントにとらわれて、今日はバンドや小説に絵などを忘れて僕達は眠った。そして四時間ぐらいが経過して僕達は起きた。時計は午後一時を示している。


「あーよく寝た。さあ、今日もバンドの練習に行くわよ」


 と涼子さんはやる気だ。でも寝たのは良いけれど、僕達は朝から何も食べていない。そんな時である光さんが僕達の為に商店街の友達が働いているパン屋からパンを分けて貰って来てくれた。


「やあ、あなた達。お腹すいているでしょ。今日も友達からパンを貰ってきたよ」


 僕は思わずため息を漏らしてしまった。


「何?あっ君、ため息なんてついちゃって」


「いやあ、昨日今日の事に限っていつも悪いと思っていますよ。もしかしたら光さん豊川先生のヌードモデルをやったのですか?」


「嫌よ。もうあっ君たらもうそれはセクハラよ」


 どうやら光さんは豊川先生にヌードモデルをしてあげたみたいだ。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「何よあっ君、そんな顔をしちゃって、私のヌードモデル想像しちゃった?」


「そ、想像なんてしていないですよ。いつも光さんには助けて貰ってばかりですから」


 そこで涼子さんが「あっ君、ヌードモデルだったら私がやっても良いと思っているんだけれども」


「えーっ!」


 僕はあらぬ事に涼子さんのヌードモデル姿を想像して頭に血が上ってしまった。


「私のヌードモデルを想像しただけでそんなに顔を真っ赤にさせてしまうなんてあっ君はウブね」


「もうやめてよ」


 本当に光さんも涼子さんも何を考えているんだ。でも涼子さんがそんな冗談を言えるならもう涼子さんの心の傷は治っているだろう。いやいや、でも涼子さんはあー見えて繊細な子なんだよな、笑顔を演じているかもしれない。心の病って本当に不便だよな、怪我とかなら見れば分かるけれど、心の傷は誰も見ることが出来ないのだから。でも豊川先生みたいな達人であれば心の傷が見れるかもしれないが、僕はそんなに人格者じゃない。


 とりあえずその事は置いといて僕達は光さんが持ってきてくれたパンを食べて図書館のスタジオに向かった。図書館のスタジオだと、スピッツレコードの会社で鳴らした音よりも、数段落ちているが、僕達の熱は変わらない。目標はコンサートを開く予定だったが、僕達はソウルメイトで謎のバンドを演じることにしたんだっけ。僕達の事が話題になり、テレビやラジオの番組にも引っ張りだこだが、出るつもりはないと思っている。


 謎のバンド、ソウルメイト、何かしっくり来ると僕は思っている。涼子さんも機嫌を直してくれたみたいだし、僕達はまだまだやれる。僕達はソウルメイト第二弾のCDを出すために頑張ろうと思っている。それにはソウルメイトもとい僕達の力が必要だ。


 そして僕は見たんだ。涼子さんの心の傷が完全とまでは行かないと思うが、癒えていることに。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  性的な被害は心的外傷が心配です。アツジくんだけではなくみんなで支えてほしいと思います。  更新ありがとうございます。
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