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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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まともな感覚からではいい物は生まれない

 本当に審査委員の前で熱い演奏が出来て僕は眠れずにいた。明日も新聞配達だ。それに備えて僕達は眠るしかない。


 そして朝起きると午前三時を示していた。台所から良い匂いがしてくる。その匂いを辿って台所に行くと桃子が朝ご飯を作っていた。メニューはフレンチトーストだった。フレンチトーストの作り方はパンに卵に砂糖をつけて出来上がり。それを仕込むのは昨日から桃子が仕込んでいたらしい。


「凄いな桃子、フレンチトーストが出来るようになるなんて」


「へへん。光さんに作り方を教えて貰ったんだ」


 また光さんか、僕達に対して光さんは本当に至れり尽くせりって感じだ。そんな光さんがいたからこそ僕達はこうして引き寄せられるように出会ったのだ。


 フレンチトーストを食べて僕達はいざ新聞配達へ、新聞配達の仕事も凄く楽しい。本当に僕達は青春を謳歌している。本当にこのままずっとみんなと一緒にいられたら良いのにって感じだが、残酷な事に終わりという物はやってくるのだ。


 でもそれはまだ二年と半年だ。まだまだ時間はある。


 新聞配達の仕事が終わると今日は僕と涼子さんが勝った。涼子さんは奈々子さんに高いジュースをおごって貰っていた。やはりいつも奈々子さんは涼子さんに高いジュースをおごって貰っているのだから、それだけの代償はつくのだと僕は思う。涼子さんは渋々ながら奈々子さんに高いエナジードリンク系のジュースをおごって貰っていた。


 そして僕達は僕と涼子さんの家に戻ると、早速タブレットで絵を描いていた。今度こそ小川君に勝ってやろうと思うと僕は躍起になっていた。そんな僕を見て涼子さんは。


「あっ君、ライバル意識を持つのは良いけれど、小川君に勝つことばかりを考えて描いていると、いい絵は完成できないわよ」


「涼子さん・・・」


 そうだ。僕は小川君に勝つためにいい絵を描こうと必死になっていた。改めて今の自分の絵を見てみると、まとまった感覚はあるが、何か引き寄せられる要素は全く感じられない。そうだ。勝つことに意識を集中させると魅力的な絵は描けない。まともな感覚からではとびきりのアートは生まれないのかもしれない。


 そんな事を目覚めさせてくれた涼子さんはさすがは僕の彼女と言ったところか?僕は僕でいい絵を描くしかないと思っている。小川君は知的障害を負っていると聞いている。小川君は言っちゃあ何だが、バカと天才は紙一重と言ったところか?


 小川君の絵を超えることに意識しすぎていい絵は完成させられない。じゃあ、どうすればいい絵は完成するのだろう。バカになれとでも言うのだろうか?いい絵を描くには熱い気持ちだけではダメなのかもしれない。


 僕が一つため息をつくと涼子さんは「ダメだよ。あっ君、ため息なんてついたら幸せが逃げちゃうぞ」


「えっ!!?そうなの?」


「ため息をついたら、そのため息を吸い込んで幸せを逃がさないようにしないといけないぞ」


 何か涼子さんの話を聞いて僕達は笑ってしまった。


「何がおかしいのよ」


 奈々子さんが「だって涼子面白いことを言うんだもん」


 斎藤さんが「涼子ちゃん。そんな事をどこで覚えてきたの?」


「もう何よもう!」


 と涼子さんは怒り出してしまった。


「まあまあまあ、涼子さん。僕の気持ちが少しだけ和らいだ感じがしたよ」


「でしょ、私が言っていることは正しいと思っているでしょ」


「でも僕はそんな事初めて聞いたよ」


「とにかくみんなため息をついたらそのため息を吸い込むように、幸せが逃げないようにする事が大事だよ」


 するとまた僕達で爆笑してしまった。


「何がおかしいのよ」


 そう言って僕の頭をひっぱだく涼子さん。


 そこで奈々子さんが「それよりも、そろそろ図書館に行く時間じゃないの?」


 そうだ。そろそろ図書館に行く時間になってしまった。絵に集中しすぎて時間の事など忘れてしまう。とにかく絵は涼子さんの言うとおり比べる物じゃない。自分の気に入った絵を描けば良いのだと思う。


 そう。僕は小川君に勝つために絵を描いていた。そんなんでは良い絵は描けない。まともな感覚からでは絵は描けないだろう。僕は涼子さんに頭を冷やされた。


 まあ、それは置いといて僕達は図書館のスタジオに行かなければならない。小川君の絵か、僕はどうやら負けず嫌いな所があると思う。それよりもこれから僕達は図書館に行き、楽器を鳴らしたいと腕がうずうずしている。


 図書館に行くと光さんは相変わらず、司書のバイトで忙しなく働いている。窓際から光さんに手を振ると光さんは爽やかな笑顔で僕達を迎えてくれた。僕達はいつも光さんに世話になっている。いつか光さんに恩返しをしたいと思っている。


 早速スタジオに入ると、腕がうずうずして早くベースにさわりたいと思って、ベースをシールドでアンプに繋げた。ベースを鳴らすこの音がたまらない。そしてドラムの涼子さんは激しくドラムを叩いている。それに合わせてみんなでアドリブで演奏をした。でもしばらく演奏していると何か、楽器を弾いている僕達は萎えてきた。


 そうだ。コンクールは終わってしまったのだ。僕達のこの腕を生かす機会はもうないのかやる気が萎えてしまっていた。この事を光さんに相談しようと思ったが、僕達は僕達で演奏しなければならないと思っている。いつまでも光さんの世話になるのは良くないと思えてきた。


 そこで涼子さんが「コンクールも終わちゃったし、とにかく私達でコンサートを開こうよ」


 奈々子さんが「それ良いかもしれないわね。そうすれば、あたし達もっとめきめき上達すると思うよ」


 僕が「コンサートってどこでコンサートを開くの?」と確かに二人の言うことはあっているかもしれないが、そのコンサートをどこでするのか疑問にも思うし、お客は来るのか不安だった。


 そこで斎藤さんが「スマホで調べてみたんだけど、結構いっぱいあるよ」


 僕もスマホで調べてみると、結構たくさんあるなあと僕は思った。新宿に渋谷に僕達が住む江東区にもティアラ江東と言うステージがあるみたいだ。


 そこで光さんが現れて、「みんな残り物のパンを貰ってきてあげたわよってあなた達何をやっているの?」


 ここで僕達がやろうとしているところを見られるとまた光さんの力を借りることになってしまう。それだけは避けなければならないと思ったのだが、光さんもうちのメンバーだ。光さんに相談した方が良いかもしれない。


「光さん。コンクールも終わったことだし、これからは自分たちでコンサートに赴くのはどうだろうと思っているんですけれど」


 僕が言うと光さんは、「コンサートを開きたいか、それならまずどこかの有名な人達の前座から始めた方が良いと思うけれどね」


「前座ですか・・・」


 前座と聞くとまるで僕達は脇役のような感じで何か嫌な感じがしたが、僕達はバンドを結成させてから間もない。それにコンクールの知らせは明日来るんだっけ。


「明日、コンクールの知らせが来るのだから、明日までとりあえず待とうよ」


「そうだよね。アツジの言う通りかもしれないね。明日にコンクールの結果が帰ってくると思うから、それまで明日まで、コンサートの件はそれからにしようよ」


 そう聞くと今日は熱くなれない日だと僕は落胆した。すると涼子さんが激しくドラムを叩いて「何みんな弱気になっているの?私達はいつでも熱い演奏をしてきたんじゃない。熱くなれないからと言って、スタジオで熱い演奏をしないのはいけないよ」と言って激しくドラムを叩いた。


 僕達は涼子さんの熱い演奏に感化されアドリブでドラムの演奏に合わせた。そうだ。僕達の熱はいつだって冷めやしない。僕は以前の一人の無力さにたたずんでいるわけではない。


 そして次の日、僕と涼子さんの家にコンクールの結果が封筒で届いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  コンクールの結果が気になります。コンサートとという新しい目標も決まりましたね。バンドはみんなが協力できるので、応援しがいがあります。一人一人の活躍を知りたいです。  更新ありがとうござい…
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