それぞれの思いを小説に
新聞配達の仕事も終わり僕達は涼子さんと僕の家に戻り帰ってくると再びアイパットで絵を描いていた。
絵を描くのは楽ではないが凄く楽しいと思っている。今僕達はそれぞれの小説に出てくるキャラクターを描いている。これをネット小説に組み込むのだ。そうすれば僕達の小説の相乗効果となって見てくれる人も増えてくると僕達は思っている。
こんな自由な時間があって本当に通信制の絵の学校に行って良かったと思っている。絵を描いていると時間の事など忘れてしまい、そろそろ僕達はそれぞれの楽器を持って図書館に行く準備をした。ドラム以外は持ち運べるのでドラムの涼子さんはドラムを叩くバッチを持っていくことにする。
それぞれ図書館に向かって図書館の外側から光さんの姿が見えてそんな光さんに手を上げて来たことの合図を送ると、気がついてくれて、いつもの女神様スマイルを僕達に提供してくれる。それに今日は桃子もいる。
この際だから桃子にも歌を歌ってもらうことにした。スタジオにお金を払って入ると、早速涼子さんは激しくドラムを叩いて、僕と奈々子さんと斎藤さんはそれぞれの楽器にアンプを繋いで、桃子はマイクスタンドを取り出してアンプにマイクを繋いだ。
早速今日もウォーミングアップの紅を演奏することとなった。紅はスピーディーだがそんなに難しくはない。それにドラムは早く叩くことは簡単だが、ゆっくり叩くことが難しいと涼子さんは言っていた。
バンドはドラムとベースが要だからね、僕のベースと涼子さんのドラムがずれるとみんながずれてしまう。そうならないように僕達は必死に練習している。
ウォーミングアップが終わると、光さんがスタジオに入ってきた。
「ヤッホーみんな頑張っている?」
「光さん。仕事の方は大丈夫なんですか?」
「今一仕事終わったところだから大丈夫だよ。さあ、みんなでアッ君が作詞してみんなで曲作りをした歌を歌おうよ。私もキーボードを使うから」
この図書館にあるキーボードはかなり年期が入っている。心なしか僕達が光さんのキーボードを弾くと、何かキーボードが嬉しそうにしている感じがしたのは気のせいか?まあみんなそろったところで僕達が作った歌を歌うことになった。
この歌は僕が練りに練って作った曲だ。もうこれ以上の改良の余地はないと思っているくらい最高の歌だ。この曲を演奏して、桃子が歌っていると、自分にもその歌詞にエールが送られてくるような感じがした。
これなら後一週間近くあるコンクールに出しても恥ずかしくないと思っているほど完璧に仕上がっている感じであった。僕達はもしかしたらバンドでデビューを飾ることが出来るかもしれない。両国高校に行っていたらこんな事は出来なかっただろう。本当に通信制の高校に通って良かったと思える。まあ、こんな事は思いたくないが僕達を安井にはめられて良かったと思っている。
それに桃子の進学校は人を蹴落とすような連中しかいないと言っていたっけ。勉強の事で自分はあまり勉強していないからと言って、相手を油断させて自分が優位な立場になれれば良いと思っている連中しかいないと言っている。そんなんじゃ友達なんて作れないだろう。
僕達は魂を削りあいながら勉学や絵や小説、バンドなどを組んでいる。僕にとって友達と言えるのはこうして魂を削り合いながら進んでいく物だと思っている。桃子にもそう言った友達がいれば良いと思うのだが、そう言った友達に出会うのは安易な事じゃない。僕は奈々子さんと出会い、そして涼子さんと斎藤さんと出会った。まさにこれは運命の邂逅だと思っている。
でも僕が言うのも何だが、桃子はまだ若い。だからそう言った友達と出会うことはきっと出来ると思っている。
スタジオにいる時間がすぐに終わってしまった。
スタジオが終わった頃、光さんが商店街で働いている友達からパンを分けて貰い食べることになった。
これが本当に失敗したパンなんだろうかと言うほどにおいしくいただいた。
本当に光さんには至れり尽くせりだ。光さんにはお礼として何かあげたいと思っている。光さんの欲しいものは何なのか今の僕には分からなかった。
パンも食べ終えて、僕達は今月の勉強は終わってしまって、勉強はやることがないので、アイパットで絵を描いていた。そこで絵を描いて小説の投稿をした僕達の小説のアクセス回数を見ることにする。アクセス回数を見てみると、僕が七千で奈々子さんが六千、涼子さんが五千五百で斎藤さんは一万を超えてしまった。
「凄いよみんな、僕達のアクセス回数が増えたよ、それに感想に僕の絵も絶賛してくれているよ」
「それはあたしの絵も相乗効果でアクセス回数が増えているよ」
奈々子さんが嬉しそうに言う。
そこで涼子さんが「もっと本気になろうよ。もっと本気になれば、もっとアクセス回数を増やすことが出来ると私は思うんだけどな」
本気かあ、じゃあこれから漫画でも読もうか?みんなで。僕達は漫画を見ることで小説の腕を上げてきた。それに僕は涼子さんの小説を見たことがない。もしかしたら、そこにも涼子さんの悲しみがあるのかも知れない。小説って漫画に限らずに自分の心情などを描くことがある。
涼子さんの小説を見てみると、瑞々しくて繊細に物語が綴られている。一度読み出したら止められないほどの面白さで、やはり思ったとおり、そこには涼子さんの悲しみが綴られていた。
物語の主人公は親に捨てられた少女であり、それでも少女は人前では悲しい顔は見せずに泣きたいときに、トイレに泣いていると綴られていた。主人公は誰にも悲しみを見せたくないんだ。涼子さんが描く物語は涼子さん自身がモデルとなった小説になっている。
それに絵も、プロとは程遠いが、うまく描かれている。絵は主人公が描かれていたのか?主人公の絵は涙目スマイルになっている。ちなみに斎藤さんと奈々子さんの小説を読んでみると、やはり二人も自分をモデルにした作品になっている。斎藤さんと奈々子さんの絵はやはりプロには程遠いが、良く描けている。
三人の主人公の小説には親はいなく、それでも悲しみを乗り越えてゆくという物語がメインになっている。僕の小説はと言うと親はいるけれど、主人公の事を分かってくれない親が出てきて、学校に行かなければ出て行けと言われて、出て行き、光さんをモデルにした図書館の女神様に助けられて物語が進行していくと言う物語であった。
僕の親は僕の気持ちも分かってくれなかった。でも涼子さんに斎藤さんに奈々子さんには親はいない。いや三人は親の愛情を受けたことがない。だから親のいる僕には三人の気持ちなんて分からないのかも知れない。それに光さんの物語を以前読んでみたが、僕達に圧倒的にアクセス回数を突破しているが、小説の中身はやっぱり親の存在などなかった。
やはり僕はみんなと比べたら、恵まれているのかも知れない。でも僕達は独りぼっちじゃないんだ。親の愛情を受けようが受けまいが、僕達はいつも集まって、絵やら小説やら勉強やらバンドやら新聞配達の仕事をしている。
だから僕はもう親に甘えるような人間になりたくない。でも最近は僕と桃子の親はだんだん僕達の事を認めてくれるようになってきた。それで甘えたければ受け入れてくれるかも知れない。けれど、僕は甘えたくない。僕は一人じゃない。魂を削り合う仲間達がいるんだ。




