虹色の祝福
土砂降りの雨の中僕は涼子さんを小さな涼子さんを抱きしめあげた。すると案の定涼子さんはその瞳から涙をこぼしてしまった。やっぱりそうだったんだ。涼子さんは悲しみに打ちひしがれていたんだ。
「涼子さん。無理しないでよ。こっちだって涼子さんの涙を気づくのに大変なんだから」
「どうしてあっ君には私の悲しみが分かるのかな?」
「だって僕は涼子さんの恋人だもん」
すると涼子さんは僕に抱きついて離さなかった。それに思い切り抱きしめ返されて大泣きしていた。僕は安心したんだ。涼子さんの涙に。とりあえず涼子さんはその悲しみに打ちひしがれる事はなくなったわけだ。本当に良かった。このまま涼子さんが笑顔を演じて壊れてしまったらどうすれば良いのか分からなくなってしまう。
とりあえず涼子さんはその涙が乾くまで、僕は涼子さんを抱きしめた。涼子さんの涙は止まらない。そうとう無理をしていた事が分かった。涼子さんは親がいない事に悲しみを抱いている。涼子さんはもしかしたら奈々子さんよりも素直じゃないのかもしれない。それがこの涼子さんの大量に流した涙が語っている。
涼子さんの涙はちょっとやそっとじゃ止まらなかった。涼子さんにはこうして誰かが気づいてあげて涙という膿を落とさなければならない。きっかけは桃子が学校に行きたくない事が理由で涼子さんは僕と桃子が両親がいることに嫉妬していたんだ。涼子さんは公衆便所に産み落とされたと聞いたので、涼子さんの両親を探す手がかりはないだろう。探してあげたいけれどそれは無理だろう。
でも涼子さんは一人じゃない。涼子さんは強い女性だと思っていたが、本当はそうじゃない。誰かがいてあげないとすぐに壊れてしまうガラスのハートなのだ。それは僕達にも言える事だ。僕はいじめられていたから知っている。一人の無力さを。人間は一人では生きていけないことを僕達は思い知らされる。
僕と桃子には親がいる。でも奈々子さんと斎藤さんと僕の恋人である涼子さんには両親がいない。でも僕の大切な仲間達がいる。だから僕達は勉強や小説に絵にバンドにも励むことが出来たのだ。
涼子さんは涙を止める事が出来なかった。涼子さん自身涙を何度も拭いても涙はどんどんあふれ出てくる。恋人である涼子さんの涙を見ていると僕は辛くなってしまったが内心安心している。だから僕はそんな涼子さんを強く抱きしめる。この土砂降りの雨の中、雨と涼子さんの涙が混じり合っているほどだ。
一時間ぐらいが経過して涼子さんは涙を拭いきることが出来た。今涼子さんの心にたまっていた膿が完全にとは行かないと思うがある程度は拭いきることが出来たのだと思う。涼子さんの涙が止んだら、不思議と雨も止んでしまった。そして空を見ると虹がかかっていた。
その虹は僕達のことを祝福しているかのような感じがした。
「ありがとう。あっ君、何か少し落ち着いた」
「涼子さん。約束してくれよ。今度涙が止まらないほど出てきそうな程、辛い時は僕を頼ってくれよ」
これはもう新聞配達の勝負所じゃなくなってしまった。社長にも怒られてしまうだろうな。でもこれで良かったんだ。配達所に戻ろうとすると、奈々子さんと斎藤さんが僕達の事が心配だったのか、来てくれた。
「あなた達何をやっていたのよ。こっちは心配したんだから!」
「涼子ちゃんにあっ君さん何かあったんですか?」
そうだ僕達は一人じゃないんだ。どんなに強い人間でも一人で生きることは出来ないと思っている。本当に怖いのは自分自身を見失って独りぼっちになってしまうことだ。そうなったらもはや人は廃人と化してしまうだろう。もし僕が独りぼっちになってしまったら、誰かが僕のことを見ていてくれる人がいるだろう。
そう独りぼっちの時でさえも誰かが僕達の事を見ていてくれる人がいるんだ。だから怖くない。僕達は一人じゃない。そう一人じゃないんだ。僕達の中で誰かが落ち込んでいたときに呼んで欲しいと思う。思いが大きすぎたら言って欲しいと僕は思う。
涼子さんは涙を見せたくないのか二人が来たら、涙を隠すようにそっぽを向いた。そうだよな涙なんてあまり見せる物じゃないよな。涼子さんは僕と桃子が両親がいるからと言って妬んでいたんだな。その妬みも涙ですべてとは行かないが流れていってしまったのかもしれない。
僕達は虹を見た。そして涼子さんの涙が乾いた頃、僕達は虹をバックに新聞配達所まで戻った。社長は怒るどころか僕達の事を心配してくれていた。まあ、新聞は配り終えたし苦情もなかったから社長は怒らなかったのかもしれない。でも社長は僕達の事を我が子のように心配してくれていたっけ。もう新聞配達をして僕は一年半ぐらいの時が流れて、涼子さんと斎藤さんは一年ぐらい経っている。
帰り道、涼子さんは涙を流してすっきりしたのか?いつもの涼子さんに戻っていた。よし今日も絵も勉強もバンドもみんなでやろうと思っている。早速僕達は僕と涼子さんの家に戻り、そこで涼子さんはドラムの練習をしていた。こんな時間に近所迷惑にならないかと思ったが、実を言うと、朝の午前中だけ近所にはドラムを叩くことを許されている。
そしてみんなも僕も続くようにバンドの練習をする事になった。僕と涼子さんの家から熱いロックの音が鳴り響いている。今日涼子さんの涙を見て詩が思いついた。僕はアコースティックギターを片手に涼子さんの涙をテーマに歌った。
『涙はダイヤモンドよりも価値のある物だと僕は君の涙を見て分かった。そして君は泣き顔スマイルを見せてくれたね。そして君のことをしれて僕は良かったと思っている。僕は君のことを愛している。君の涙のメッセージ確かに受け取ったよ。そして雨は止み虹色の空が僕達を祝福させてくれた』
何て歌っていると涼子さんが「ちょっとあっ君私のことを歌っているでしょ」とちょっと涼子さんは怒り気味だった。
「別に良いじゃないか。涼子さんの涙が見れて本当に良かったと思っている」
ここでいつもなら奈々子さんが茶化して来るのだと思ったが、今日は茶化して来なかった。そう言えば今回の涙の件だけど、涼子さんは僕と桃子に両親がいることを妬みだした事が原因だったんだな。涼子さんの涙なんて滅多に見れない物なんだな。公衆便所に産み捨てられた涼子さん。涼子さんは両親の愛情を受けたことがないんだろうな。こんな言い方をしたら涼子さんは怒り出してしまうかもしれないが、涼子さんはかわいそうな人だと言うことは分かる。
でも涼子さんはひねくれもせずにまっとうに生きようとしている。その姿は本当に美しいと僕は思う。だから僕は涼子さんと付き合っているんだ。
さて涼子さんの事を知れて、それを解決させたのだから、これからは二週間後に迫るバンドコンクールに出場する準備をしなければならない。歌と言う物は人にエールを与える物だと僕は思っている。
復帰した涼子さんのドラムさばきは相当な物だと感じさせられる。それに奈々子さんと斎藤さんのエレキギターのセッションもうまい感じに出来上がってきた。僕はベースアンドボーカルで、僕と涼子さん家で歌おうとしたところ、さすがに許されているからと言って近所迷惑になってしまうから止めておいた。だから僕達は図書館が開くまでアイパットで絵を描いていた。僕が描いている絵は涼子さんをアニメチックに書いていた。
今度は小川君には負けないぞと僕はいきり立っていた。




