奈々子さんの真の理解者、光さんの助言
バンドの時間は終わり、僕達は新聞配達の仕事に出かける事になった。新聞配達所に到着すると、同僚達に初めてのスクーリングはどうだったと聞かれて、楽しかったよと言うと同僚達は良かったなと言ってくれた。
さて今日新聞配達が終わったら、新聞配達の仕事は明日はお休みだけど、明日はスクーリングの日なんだよな、僕達に休む暇などない。僕達はこの胸に熱く燃える魂を胸に新聞配達の仕事が始まる。
今日は僕と斎藤さんが組んで、もう一方は奈々子さんと涼子さんが組むことになった。今日は奈々子さんはご機嫌斜めだ、涼子さんに先ほど素直じゃないと言われて相当頭にきているみたいだった。
そして新聞配達の仕事は始まる。
「ねえ、あっ君さん。奈々子さんと涼子ちゃんを組ませて大丈夫なのかしら。先ほど涼子ちゃんに飛びかかろうとしていたけれど」
「実を言うと僕も心配だよ」
「私が涼子ちゃんと組んだ方が良かったんじゃないかな?」
「上からの命令だからそれは出来ないし、それにもう遅いよ」
そうだ。僕も心配だったんだ。奈々子さん涼子さんに何かしでかしそうで。
でもそれは杞憂だった。僕達が新聞配達の仕事が終わって帰ってみると、涼子さんと奈々子さんは僕達よりも先に新聞配達所に戻っていた。それを見て二人は何とかうまくやったみたいだ。
「涼子さんに奈々子さん。今日は早かったんだね」
すると奈々子さんにナイフのような鋭い視線で僕は見られてしまって、僕は正直怖かった。奈々子さん、まだ根に持っているみたいだ。奈々子さん、優しい人なんだけれども、根に持つタイプの女の子だからな。
でもそんな奈々子さんを見ると、何か安心してしまう。何度も思うことだが、奈々子さんは本当に嫌いな人に対しては不気味なくらい笑顔で対応するからな。だから奈々子さんは涼子さんを嫌ったりはしていないだろう。
今日は僕と斎藤さんが負けてしまったんだ。とりあえず二人にはジュースをおごらなきゃいけないルールになっている。僕は奈々子さんにジュースを渡すのはちょっと気まずかった為に、涼子さんにジュースをおごろうとしたところ、すでに斎藤さんが涼子さんにジュースをおごっていた。
やだな。この気まずい雰囲気。僕が奈々子さんにジュースをおごらなきゃいけないことに。
「な、奈々子さん、何飲みたい?」
すると奈々子さんは鋭いナイフのような視線を僕に向けてきて、奈々子さんはエナジードリンク系の高いジュースをおごらされてしまった。奈々子さん、まだ根に持っている。
とにかく新聞配達の仕事は終わったのだ。僕達は帰って明日に向けて静物デッサンの勉強をしたい。とりあえず、僕達は僕と涼子さんの家に戻り、光さんと桃子が僕達に晩ご飯の準備をしていた。
「光さん、桃子、来ていたんだね」
「四人ともお疲れ様。今日は私と桃子ちゃんのオムライスを作ってあげたわよ」
「それはおいしそうだね」
「あら、奈々子ちゃんどうしたの?何か不機嫌そうな顔をしているけれど」
「いや、何でもないですけれど」
奈々子さんからの口調からして何かまだ根に持っている感じだった。
「何があったか知らないけれど、奈々子ちゃん機嫌直しなよ。そうしないと私と桃子ちゃんが作ったオムライスがおいしく感じられなくなっちゃうよ」
「・・・うん」
奈々子さんはまだ機嫌が直っていないみたいだ。
「実を言うと先ほど、奈々子は素直じゃないことを自覚していないことを言ったら、急に怒りだしてしまったんですよ」
涼子さんが火に油を注ぐような発言をして奈々子さんは本気で怒り出してしまった。
「涼子、今度という今度は許さないんだからね」
そう言って奈々子さんは涼子さんの胸元を掴んで「あんたいい加減にしなさいよ」
そこで光さんが「ちょっと待ちなさい二人とも」
すると二人は大人しくなってくれた。
「奈々子ちゃん、差し詰め涼子ちゃんに素直じゃないと言われて、怒りだしたのかしら?」
「はい。この女あたしに侮辱するような事を言うんですよ」
「奈々子ちゃん。私は以前から見ていると本当に素直じゃないんじゃない?」
光さんが素直じゃないことを奈々子さんに言うと素直に応じた。
「・・・」
奈々子さんは気まずそうに黙っている。
「奈々子ちゃん。涼子ちゃんの言うとおり何が原因か知らないけれど、素直になったら良いじゃないかしら?」
「はい」
と奈々子さんは光さんの前だと素直になれるみたいだ。
「それを教えてくれる友達がいるのだから、奈々子ちゃんは良いお友達を持ったと私は思うんだけどな」
奈々子さんの表情を見てみると、自分の胸に聞いてみるかのような仕草をした。それを見て僕は光さんは本当に凄い人だと思うことが出来た。まあでも光さんは奈々子さんの真の理解者だ。そんな奈々子さんの心をいさめて、奈々子さんは自分が素直じゃないことを認めたようだ。
これからはもっと優しい奈々子さんが見られることを僕は期待した。
僕の密かに思っている光さん。本当は僕は光さんに恋心を抱いているが、それは憧れまでの事だ。僕には涼子さんという恋人がいる。
光さんはいわば図書館の女神様だ。でも怒らせると本当に怖いんだよな。
まあそれは置いといて光さんと桃子が作ってくれたオムライスを冷めないうちに食べようじゃないか。光さんと桃子が作ってくれたオムライスを食べてみると、それはおいしい物だった。僕は幸せ者だ。いやここにいるみんなも幸せ者だと思う。
オムライスも食べたことだし、僕達はバンドの練習をするために図書館に六人で自転車で向かった。バンドのウォーミングアップのために僕達はX JAPANの紅を演奏した。みんなの演奏を聴いて僕はベースを弾く。誰かが少しでも乱れたら、演奏に違和感を感じさせてしまうために僕は精一杯ベースの演奏した。
本当にみんなと演奏をしていると何だかテンションが上がって、胸の奥から熱い物を感じられる。
そして僕達が作ったオリジナルの曲も演奏した。
コンクールまで後三週間。それまでに熱い演奏を出来るように僕達は務める。無謀とも呼べるコンクール出場に僕達は演奏する。ちなみに賞金はCDデビューらしい。CDデビュー飾ってやろうじゃないかと思うほど僕達は燃えていた。でも僕達が作った歌にはまだ何かが足りないと思っている。何か僕達が作った歌にはこの熱き胸に来る何かが足りないと。それはみんなも気がついているはずだ。
それは何か分かるようで分からない物であり、その事をまた再度僕達が作った歌を演奏した。でもやっぱり胸に来ない。バンドをやって楽しいが楽しいだけじゃない、コンクールには試されてしまうのだ。こんな胸の奥に響かない演奏をしても、何か拍子抜けしてしまう。
うーん。考えさせられる。歌はエールだと思っている。XJapanの紅を演奏してみると、本当に熱く胸に来るような感じがする。激しいサウンドに悲しい歌詞を盛り込み、一歩前に進めるようなそんな歌詞になっている。
歌はエールであり、人を魅了して幸せな気分にさせてしまう力がなければいけないと思っている。僕はオリジナルの曲の楽譜を見て何かが足りないと思っている。ただ激しいだけではないんだ、それに良い歌詞をつけるだけでもダメな気がする。その答えはこの喉元まで来ている。何か分かりそうで分からない。うーん考えさせられる。
「ねえ、アツジ、あたし達の演奏に何かあるの?足りない物が?」
「うん。みんなには悪いけれど、何か足りないような気がして、その答えが出そうで出ないんだな。光さんはどう思う」
「確かにあっ君の言う通りね。私達の情熱は感じられるけれども、この曲に何かが足りないような気がするわ。それにこれではコンクールの第一次審査に落ちてしまうことは確定したよ」
光さんにバッサリと言われて『ガーン』と言った感じだ。




