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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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涼子さんの深い悲しみに触れたくて

 今日は斎藤さんと新聞配達の時間だった。この際涼子さんの事を聞いてみることにする。


「斎藤さん。涼子さんって昔はどんな感じの人だったの?」


「涼子ちゃんかあ、いつも笑顔で接してくれる優しい人だったよ」


「斎藤さんは涼子さんが苦しんでいるのを見たことがあるの?」


「そう言えばないわね。以前両国高校に行けなかった事に対して、初めてその涙を見たことしかないわね」


 そう言えば、僕達は河川敷の誰もいないところで叫んでいたっけ。あれ以来涼子さんの涙を見たことがないと言っている。それは悔しさは僕達と一緒だったんだ。


「涼子さんは施設ではどんな人だったの?」


「いつも明るくて人当たりが良く、私もみんなも太陽の様に照らしてくれる存在だったよ」


 明るく太陽のような存在かあ、確かに涼子さんは悲しみを表に出すような人ではない。いつも斎藤さんの言うとおり、太陽のように僕達を照らしてくれる。でももと彼女だった奈々子さんには意地悪をする。


「そうなんだ。じゃあ、斎藤さんはあの時以外涼子さんの苦しんでいるときの事を見たことがないわけだね」


「そう言えば、そうだけど、どうしたのあっ君さん。いきなり涼子ちゃんの事を聞いたりして」


「いや、涼子さんの事をもっと知りたいと思って」


「あっ君さんは涼子ちゃんの事が好きなんでしょ」


「好きだけど、もっと涼子さんの事が知りたくて」


「そんな事を知らなくても、涼子ちゃんはあっ君さんの事が好きだと思うよ」


 孤児院で一緒に暮らしていた、斎藤さんも涼子さんの事の深い悲しみがあることを知らないみたいだ。斎藤さんは涼子さんの涙を両国高校に行けなかった時しか見たことがないと言っている。


 付き合いが長い斎藤さんだって涼子さんの深い悲しみを知らないと言っている。両国高校に行けなかった事は表向きの涙だと僕は思っている。だってあんなに頑張って両国高校に行こうってみんなで言っていたのに、最低な安井の陰謀で僕達は行けなくなってしまった。それに涼子さんは安井がいじめられていたときにその手を差し伸べた。


 それで安井は涼子さんの事が好きになり、僕と涼子さんが付き合ってふられた腹いせに両国高校の試験当日にあのような体育倉庫に僕達を閉じ込めたのだ。思い出すだけでも腹が立つ事だ。


 とにかくその事はもう良い、僕達は同じ通信制の絵の高校に行くことになったのだから。もうみんな両国高校に行けなかったことに対してあまり気にしていないだろう。


 とりあえず斎藤さんに涼子さんの事を聞いてみたところ、斎藤さんは涼子さんの深い悲しみを知っている人ではなかった。孤児院で十年以上も同じ時を過ごしていたのに、涼子さんはその深い悲しみを見せるような弱い人ではないことが分かった。


 僕は涼子さんの事をもっと理解して、好きになりたい。僕は涼子さんの怒った顔も笑った顔も大好きだ。僕には感じる。涼子さんには斎藤さんにも分からない何か深い悲しみがあることを、僕はそれを知りたい。


 そんな事を考えながら新聞配達の仕事をしていた。今日の所はきっと僕と斎藤さんの負けだろう。でも斎藤さんから見た涼子さんの一面が見れて僕は良かったと思っている。付き合いが長い斎藤さんでさえ知らない涼子さんの深い悲しみ。


 新聞配達から戻ると、涼子さんと奈々子さんはすでに新聞配達の仕事を終えて帰っていた。

「あっ君に翔子、今日は私達の勝ちみたいね」


 と涼子さんは新聞配達の仕事を終えて、にやりと含み笑いをしている。本当に斎藤さんの言うとおりそれは太陽のように眩しい笑顔だった。そうそれは本当に眩しい笑顔である。僕は思ったんだ。その眩しい笑顔を曇らせたくないと。その笑顔を曇らせる物がいたら、僕はそいつに対して容赦はしないと。


 とりあえず両国高校に行く事はなくなったので僕達は僕と涼子さんの家に言って小説と絵を頑張った。斎藤さんも涼子さんも意外な事に絵は上手で僕も奈々子さんも負けてはいられない。


 涼子さんの深い悲しみかあ?チラリと涼子さんの方を絵を描きながら見てみると涼子さんと目が合ってしまった。すると涼子さんはどうしたの?と言いたげな素敵な笑顔を見せてこちらを向いた。僕は何か照れくさくなって即座に目をそらして絵に没頭した。


 僕達は両国高校に行けなくて勉強をする必要はなくなり勉強をする意欲もなくなっていた。それでも絵の学校も絵以外のわずかな勉学も必要かもしれない。だから勉強をしようと思うのだが僕のわがままで両国高校に行けなかった事がショックで頭から離れないと言って、勉強を中断することになった。


 それはみんなも同じ気持ちだった。でもいずれ勉強をするときが来るだろうと思っている。今は春休みで後10日になったら絵の美術学校に僕達は行くことになっている。そこは入学は誰でも出来るが、卒業するのが難しいらしい。でも僕達は負けはしない。


 僕達が行く通信制の絵の高校は色々な分野に分かれている。美術のコースや声優のコースそれに大学に行くコースなど、各自選んで進んでいけるという形になっている。通学は土日でそれぞれのレポートを渡され各自家でやることになっている。僕達はもちろん美術コースを選んだ。それでも勉強はあるみたいだ。歴史に国語に数学に科学など。でも基本的には絵のコースで選んだため、勉強はさほど難しくはないと言っていた。


 パソコンで描くのもアナログで描くのも選べるらしいが僕達はパソコンで描く学科を選んだ。でもパソコンで描くのがメインでもアナログで描くこともやるみたいだ。いや卒業するのはどうやら簡単らしいが本当の絵描きになるのは難しいことだった。


 だったら僕は美術大学に入って本格的に絵の勉強をしてやると思っている。美術大学は通信制ではなくて普通の大学に行くつもりで僕は勉強している。


 絵の勉強をしながら僕達はスケッチブックで描いていた。これじゃあアナログだからデジタルの物で描いていたいと思って僕と涼子さんの部屋には一つしかパソコンがない。僕はクリップスタジオと言うソフトを使ってパソコンで絵を描いていたが、三人はスケッチブックに絵を描いていた。これでは勉強にならないと言うことで各自部屋で勉強をする事を提案したが、僕達は四人の熱を感じながらでないと勉学に身が入らないと言って、とりあえず今日の所はタブレットとクリップスタジオのソフトを買いに行くことにした。


 丁度お昼になり僕達は秋葉原にバスで向かった。


「タブレットとそのクリップスタジオの契約はいくらぐらいするの?」


 と涼子さんは言ってきたため、僕が「合わせて五万ぐらいはするかな」


「そんなにするの?」


「クリップスタジオはネットで契約するのだから、月に980円かかるんだ。それにタブレットを持っているとどこでも絵が描けるからね」


「まあ、私は絵の挿絵を自分で描きたいし、そう思うと五万なんて安い物だと私は思うんだけどね。毎日新聞配達の仕事でお金はかなり稼いだからね」


 そしてバスで四十分秋葉原に到着した。


 本当にこの町に来ると自然と心地が良くなってくる。アニメや漫画などを物色して何度見ても飽きないと思っている。


 さてそれよりも僕達はそれぞれのタブレットを買いにヨドバシカメラに言って買いに行った。店員に勧められるよりも僕が勧めた方が良いだろう。タブレットは第七世代のアイパットを僕は三人に勧めて僕もそれを買った。カバーケースはヨドバシでは高いところしかないが、他に安い店を僕は知っているため、その店に向かった。


 歩いて十分ヨドバシよりも安いカバーケースを手に入れた。これで心起きなく絵を描くことが出来る。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  涼子さんの心のうちを知りたい気持ちが強くなってきましたね。  相手をよく知るためにという気持ちはわかります。  しかし、涼子さんの気持ちはどうなのでしょう?  菜々子さんが同情を嫌がった…
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