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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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未来は僕達を裏切らない

 勉強は捗った。でも菜々子さんが闘志を燃やして描かなければ、僕は英語という嫌いな教科をまともにする事をしないだろう。

 集中していると時間なんてあっと言う間に過ぎてしまうような感覚に陥る。

 気がつけばもうお昼になっていて、光さんがパンが入っているだろう紙袋を片手に僕達に手を振って合図をした。


 外に出て僕達は光さんと共に図書館に隣接する公園へと向かった。

 公園のベンチに並んで座ってパンを食べていると、子供がお化けの格好をして、公園の遊具で戯れていた。


「そう言えば今日はハローウィンね」


 菜々子さんが言う。


 そこで光さんが「あなた達、今日がハローウィンだって言うほど、勉強や小説に絵に没頭していたのね」


 確かにそうだった。今日はハローウィンだった。そう言えば以前引き語りをしていたときに、仮装して引き語りをするみたいな約束を菜々子さんとしたっけ。


 なんて考えていると、小さな魔女に仮装した子供が僕達の前に現れて、「トリックアトリート」と言って何かをせがんでいた。


「残念だけど、僕達はお菓子は持っていないよ」


 すると光さんが「あんパンならあるよ」と言って失敗してもらったパンを魔女に変装した女の子にあげた。

 嬉しそうに受け取って、公園にいる仮装した子供達が次から次へと「トリックアトリート」と言ってパンをせがんできた。

 光さんはやれやれと言った感じでパンを一つずつ子供達に手渡した。

 僕達が食べるパンが無くなってしまった。

 それでも子供達はトリックアトリートと言って、どんどんパンを要求してくる。


「ゴメンね。パンが無くなちゃったのよ」


 光さんは残念そうに子供達に言うと子供達は僕達に目の前でクラッカーをパンパンならしてきた。

 そう言えばトリックアトリートと言うと、お菓子をくれないといたずらをするぞって言う意味だった。

 それで僕達はいたずらをされてしまったのだ。


「ちょっとあなた達やめなさいよ」


 菜々子さんが子供達に叱る。

 でも子供は怖い物知らずで「クラッカーをならされたくなかったらお菓子をよこせ」と要求する。


「ここは逃げるしか無いわね」

 

 と言って僕達は光さんと共に公園を出た。

 子供達は僕達に向けてクラッカーを構えながら走って追いかけてきた。

 でも子供達は私たちより遅く、追いつく事が出来なかった。


「本当に何なのよ今日は?」


 やれやれと菜々子さんはうんざりしている。


 そこで光さんが、「そう言えば、今日笹森君と麻美ちゃんと私で仮装しながら引き語りをするんだけど、二人も参加する?」


 小説もあるし、新聞配達の仕事もあるし、後光さんが作ったテストだってある。

 菜々子さんの方を見ると、そんな暇はないと顔に書いてある。


「新聞配達の仕事が終わったら時間あいているでしょ」


 そこで僕が、「実を言うと菜々子さん今日眠っていないみたいなんだよ。無理をさせたらまずいから」


「あたしは大丈夫よ。一日ぐらい寝なくたって人間死ぬ訳じゃないし。そう言った経験は中学校通っていた時、中間や期末のテストで何度も経験したことがあるよ」


 まあ、確かに一日寝ないくらいなら、死ぬ訳じゃないか。僕なんか中学時代いじめの恐怖で二日間眠れない日々が続いても学校に行かされても死にはしなかったっけ。さらにいじめにあって殺されかけた記憶だってある。


「分かったよ、じゃあ、光さんのテストと、新聞配達の仕事が終わったら、英明塾に集合って事で良いんだね。光さん」


 僕が言うと光さんは「たまにはあなた達だって、息抜きも必要でしょ」


 息抜きかあ、僕と菜々子さんは中学生だが学校には行っていない。その分勉強しなくちゃいけないだろう。高校は光さんと同じ通信制の学校に行くと僕は決めている。通信制の高校は勉強しなくたって誰でも入れるが、光さんが言っていたがレポートが大変だと言っていた。中学校の勉強をしっかりと身につけていなければ、レポートはこなせないとも言っていた。


 まあ、でもたまには息抜きも必要か。





 ******   ******






 新聞配達の仕事も終わり、それに光さんのテストでは、僕が八十点で菜々子さんが九十点だった。テストで負けたら、出来る限りの事を菜々子さんにしてあげなきゃいけないんだよな。

 でも菜々子さんは僕に絵を教えてもらったからと言って、今日は頼まれ事はされなかった。


 僕と菜々子さんが英明塾に行くと、笹森君と麻美ちゃんがトイレットペーパーの紙を体中に巻いてミイラ男の格好をして二人して「トッリックアトリート」と言ってきた。


 そこで菜々子さんが「私達お菓子買うの忘れてしまったわね」と僕に言う。


 すると麻美ちゃんと笹森君は、僕と菜々子さんにクラッカーをならした。


「うわっ!」「いや!」


 僕と菜々子さんは驚く。


 そこで光さんが現れて、彼女もトイレットペーパーを体全体に巻いてミイラ男を演じていた。


「どう?驚いた?」


「驚いたって言うより、今朝子供達の真似じゃないですか」


「英明にクラッカーが合ったのでそれを再現させてもらったの」


「とにかくみんな、人に向けてクラッカーをならすのはやめようよ。危ないから」


「確かにあっ君の言う通りね。じゃあ、これから錦糸町に行ってみんなミイラ男のなって引き語りをしよう」


 僕も菜々子さんもトイレットペーパーに巻かれて、ミイラ男に変装した。僕は吸血鬼にでもなりたかったが、英明には仮装する道具がない。


 早速僕達はミイラ男に仮装して錦糸町の駅前で引き語りを披露した。

 錦糸町にも仮装した人がちらほらといた。

 ハローウィンに仮装するのは基本お化けとは限らずに、変装するなら何でも良いみたいだ。

 中にはアニメのキャラクターのワンピースに出て来るルフィとか、ドラゴンボールのキャラクターの悟空とかそのほかにも僕の知らないキャラクターなど盛りだくさんって感じでみんな盛り上がっている。

 僕はハローウィンに参加するのは始めてて、僕達が変装しているミイラ男は何か質素な感じがして何か浮いている感じだ。

 仮装している人はみんな気合いが入っている。

 仮装で負けるなら僕達は歌では負けない。


 早速引き語りをしようと麻美ちゃんと笹森君は北口の方に行き、僕と菜々子さんと光さんは、南口で引き語りをした。


 曲は相変わらずセカオワRPJやドラゴンナイトと言ったところだ、それに尾崎豊とか。


 何か仮装して引き語りをしているとテンションが上がってきて、楽しくなってきた。


 歌っていると、僕達と同じように仮装しているミイラ男が現れて、「君達俺達と気が合うね」と言って板チョコを僕と菜々子さんと光さんに一枚ずつ手渡した。


 僕達は気分が最高潮になり、そこで菜々子さんが「アツジあたしはあんたには負けないんだから」とそう言って引き語りを続行した。

 だったら僕も負けないよ。

 歌は自画自賛だが、僕自身も菜々子さん自身もうまいと思っている。

 でも仮に下手だと思われていても、ギターを弾きながら歌うのは大好きだ。

 とにかく僕達は好きな事にいろいろと経験して、本当の夢を見つけるしかない。

 誰かが言っていた。

 青春は本物になる戦いだと。

 これまで僕と菜々子さんは色々な事をしてきた。

 小説を書いたり絵を描いたり、それに好きでもない勉強もしてきた。

 でも僕達の将来は輝いているだろうか?

 

 いったん休憩のために、引き語りを中断して、僕と菜々子さんと光さんはお昼から何も食べていない。

 だってトリックアトリートで子供達にパンを全部取られてしまったからだ。

 だからさっき僕達と同じミイラ男にもらったチョコレートを食べた。


「明日から十一月か?今日の夜は冷えるね」


 と僕が言うと、菜々子さんは「そうだね。明日の新聞配達に支障が出ないように風邪には気をつけないと。


 そこで光さんが、「あなた達毎日楽しい?」


「「楽しい」」


 と僕と菜々子さんの声がハモった。


「二人とも夢は見つかった?」


 そう言われると僕達はまだ夢の途中なので何ともいえない感じだった。


「私もあなた達もまだ若いから、色々な事を経験しながら進んでいくと良いわ。そうすれば未来はあなた達を裏切ったりはしないわ」


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