【♯74】フィールド捜索ほど中途半端な事はしたくない。
――TIPS――
【A.I.M.S 『フィールドリサーチ』基本ルール】
このモードの最大の目的は、ゲームワールドオンラインのフィールドエリア内のアイテムや探索・調査である。
受注されたクエストや、アイテム生成に必要な部品回収にはこのモードが最適。
ただしこのモードでは戦闘用アイテムの使用を禁止されており、武器を手に入れた場合は探索終了時に改めて獲得される。
――引き続きA.I.M.Sレポート、ステルスアクションが光る『フィールドリサーチ』のプレイを報告しよう。
警備用ゲーミングロイドの眼を潜り抜けて、巨大兵器が格納されている『AI‐03』の外部まで到達したトリガーズのキッドとハリアー。
今回のフィールドリサーチの舞台となっている、様々なゲームの武器やアイテムを格納する海浜エリア『ウェポンズ・ベイ』は、強固な倉庫のセキュリティに特化しているのみで潜入者を阻む警備システムは殆ど無い。
設置されたゲーミングロイド数機は、ハリアーが目撃したレイダーズの機械兵の不審な動きを受けて、ゲームに支障をきたさぬよう運営側が投入したのだという。
ゲームの展開を守るも潰すもプレイヤーの意思次第。
A.I.M.Sの舞台であるゲームワールドオンラインにおける民主主義ルールには、ゲームに生きる者を咎める柵もないオープンな世界となっている。ただし不正行為などを働いた場合には即垢BANです。
――さて前座はこれくらいにして、ゲームの続きを観てみよう。
「“倉庫の中”に仕掛けた? 内部のセキュリティは厳重にしてるのにか?」
ハリアーはキッドの仕組まれていたような発言に対して疑った。
倉庫の“外”に仕掛けたのなら、素人にでも違和を感付かれるだろう。しかしレイダーズは、警戒厳重な『AI‐03』倉庫の中にどうやって不審物を忍ばせたのか?
「簡単な話だ、天窓だよ」
キッドが倉庫裏の上を見渡すと、二枚の横長ガラスに、片方はガラスが割られていた天窓が設置されている。大きさからして機械兵の身体もピッタリ入りそうな幅だ。
「……あー、そういう事。生意気な機械だから垂直な壁も登って、窓から入ることも容易いって訳か」
と、ハリアーは皮肉りながら納得する。
「だが跡を濁しすぎだ。奴等強引に窓ガラスを割ってんだから、礼儀作法がなってねぇぜ」
〘潜入してんだから礼儀もクソも無いような……〙
「リスナーに突っ込まれてるぞ、キッド」
等と箸休めなボケをかました所でキッド。再びバックパックからカプセルを取り出して、近くに放り投げる。
―――PON!
カプセルの破裂音と煙と共に現れたのは、小型ドローン。名付けて【トリガー・ツールシステム No.004/キャプチャーポールDR】だ。
キッドはドローン専用のモニター付き小型リモコンで操作し、割られた天窓から倉庫の中に入っていく。
リモコンのモニターには、ドローン視点のカメラに映った倉庫内の背景が映る。そこには例の『10式戦車』だけでなく、ドイツ式戦車『パンサーD型』も格納されていた。強固な装甲が見る者を圧倒させる。
「ふぇ~迫力あるってか、近くから見てもキャタピラーがゴツいねぇ」
モニターの映像は、配信の視聴者達にも観れていた。リスナーの中には戦車の好きなミリタリーファンも居たようで、間近に戦車を観れて興奮するコメントも見られた。
「戦車に感心してる場合か。例の不審物が壁の近くにあるんだろ?」
「あ、そーだった」
ハリアーに注意されたキッドは、ドローンを壁付近の不審物に近づける。その不審物は内壁にくっついていた。
「このくっつき方は電磁石だな。引っ剥がしてやれ」
そこでキッド、リモコンでドローンに捕獲用アームを取り出し、レンガブロック状の不審物をガッチリ掴んで、引っ張る形で壁から剥がす。
そして、回収する為に天窓から不審物を掴んだドローンが戻ってきた。
「何を仕掛けたんだ?」
「開けてみよう。大体検討付くけど」
キッドはマイナスドライバーを取り出し、不審物の蓋と思われる部分にボルトを外し、中身を確認する。
その中には、高密な電子回路に数本の色とりどりな配線、そして配線の先には数個のブロックが箱の中に密封されていた。
「コイツは、無線式で起動される『C-4プラスチック爆弾』だな。恐らくレイダーズの本部から適当なタイミングで倉庫を爆破して、あの兵器を奪おうと企んだんだろう」
「やる事が横暴な奴等だ。で、それどうするつもりだ?」
「使わせなくするに決まってんだろ。ハリアー、出番だぜ」
「こーゆー時だけ雑用かよ」
渋々とハリアーは、バックパックからカプセルを取り出して――――以下同文。
出てきたのは【トリガー・ツールシステム No.005/パルスウェーブガン】というドライヤー……もといハンドガン型のEMP(電磁パルス)出力装置だ。
ハリアーはこれをプラスチック爆弾にかざして、パルスウェーブガンの引き金を引くことで高周波周帯のEMPを発生させる。
すると忽ちの内に、爆弾内の電子回路が火花を散らしてショートしていった。回路とブロック状の爆薬を繋ぐケーブルがEMPによって『過電圧状態』にし、絶縁破壊・短絡させて故障させたのだ。
「これで爆弾の遠距離起爆は出来なくなったぜ」
そしてハリアーは爆弾の起爆ケーブルをニッパーで切断し、完全に起動することは無くなった。
〘おおー〙〘爆弾処理班みたいでカッコいい〙〘リアルだねぇ〙〘ミッションコンプリート〙
コメント欄も盛り上がり、倉庫爆破阻止の貢献に称賛のムードになっていく配信欄。
「さて、爆破阻止したんだからこの物騒な爆弾を納品して、そろそろフィールドリサーチを終えようか……」
「待ったハリアー、俺さっき言ったよな? ここの周囲にある他の倉庫の、極秘の武器やアイテムも見てやろうって」
ミッションを終えて帰る気満々のハリアーを静止するキッド。彼はまだ物足りない目で潜入捜査の続行を求めた。
「でもさ、あんまり欲張ると見つかるリスクも高くなるぞ?」
「A.I.M.SがパンサーD型を引っ張り出すくらいだ、それ以上のもんが他に隠してるものがあると思うんだ。なのにそれを見逃すとか勿体無いだろうが。そうだろ? ステルスのプロのハリアーさんよ?」
キッドは一度決めたら余程な説得力が無ければ引かない男。それ故にいつも厄介事に巻き込まれる事は、幼馴染みであるハリアーには分かっていた。
「……分かった、俺っちが行けば良いんだろ!」
「サンキュー☆ 後でチョコモナカ買ってやるから」
「3個な!!」
〘パシってるw〙〘チョコモナカで買収されるハリアー〙〘良かったらモナカ代奢ります ¥1,000〙
「◯◯さん、スパチャ1000円ありがとうございます!」
ライブ配信でないと見られない独特な会話の一環でした。
〘◇Now Lording◇〙
ハリアーは一旦キッドが待機してる『AI‐03』倉庫から離れ、そこから南南西の『AI‐08』に接近する。
「やれやれ、配信者の知的好奇心に付き合うのも大変だわ。全く……」
ブツブツ文句を垂れながら、倉庫の壁沿いに忍びながら進むハリアー。特殊戦闘服『スニークスーツSTS』のカモフラージュ効果により、カメレオンのように背景の色と同じ色で全体を浸透させる。
先程ゲーミングロイドらによって密集していたこの地域。散り散りになった所で潜入が楽になった。――――しかし。
(……………何だこの音。ゲーミングロイドの鉄の足音じゃない。人の足音が近付いてるような……? ――――――まさかな)
ハリアーのPAS・風の精霊『シルフ』の能力を持つ彼は、人並み以上に聴力・視力に長けており、80メートル先の違和感のある足音に感付き疑うのだが。
その疑いは、的中することになる。
――――この『ウェポンズ・ベイ』の何処かに、彼ら以外にステルスを行っているゲーム戦士が居ることを……!
本日のA.I.M.Sゲームレポート、報告は次回に続きます!
〘◇To be continued...◇〙
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