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【♯62】ボスキャラを調子に乗らせちゃダメ。根本から折るべし。

 

「てめー、俺の動画観てるつってたよな? A.I.M.Sの切り抜きプレイとか、ブログも観てたなら、天ちゃん琴ちゃんのチアダン動画も観てこいよ。お前が観てたつったらあの子達喜ぶぞ?」

「くだらん。そんなエイムの向上にもならん動画など観る気にはならん」

「あー言ったな?! 聞きました視聴者の皆ぁ? コイツうちのチアガール馬鹿にしてましたぁ! 約150万人のファンを敵に回したぞ、いーけないんだーー!!」

「貴様ぁ! この俺にヘイトを向けさせる気か!?」

「はい本気になってますぅぅぅ! コイツジョークもジョーズも全く分かってませーーん!!」

「侮辱するなこの偽善者が!!」



「黙らんかあああああああああッッッ!!!!!」


「……? 何だよ、あのオッサン」

「俺が知るか」


 ……やれやれ、やっとキッドとルシファーの口喧嘩が終わりましたよ。


 そんな最中に、率先垂範とばかりに参上仕ったヘビーメタル・レイダーズの総長・スチール大将軍。

 威厳を保つべく、彼の周りに配下のアンドロイド兵を大量に投入して威圧を放ち、ゲーム戦士達をビビり散らかそうとさせたが大失敗。


 夫婦喧嘩は犬も食わない……といっても、彼らを夫婦と言ったら撃たれそうなので。犬猿の仲のキッドとルシファーを前にしては襲撃者のボスすら見向きされない。完全にアウェイにされた事で流石の大将軍もブチ切れた。


「オイそこの小童共! 誰がどう見ても絶体絶命の状況に何を喧嘩しとる!! このスチール大将軍がわざわざ来てやったのに、無視するとは命知らずな奴め!!」


 流石はヘビーメタル・レイダーズの幹部にして長。凄まじい威圧感とプレッシャーを放ち、平凡な者は皆平伏す程のカリスマ性。……でも、キッドとルシファーは例外。


「さっきからゴチャゴチャとうるせーな。右手に機械付けて何カッコつけてんの、フック船長か?」

「丁度いい。いっそのことその機械の手を取っ替えて鉤爪にしたらどうだ? ほら、フック貸してやるから着けろ」


「オ・ノーレピーターパンノヤツメ――――って、さすなァァァ!!」


 〘草〙〘ボスキャラがノリツッコミされてるw〙〘草〙〘小物感〙〘マジでフック船長に見えたわ、どないしてくれるwww〙


 二人がボスキャラに全く動じないどころか、おちょくってコメント欄の視聴者にまで笑われるスチール大将軍。面目丸潰れでかわいそーに。


「ぐぬぬぬ……憎きゲーム戦士め、この我輩にチンケなボケをやらすとは。舐められたものだ!」


「やった、今ので視聴者三千人くらい増えた」

「良かったな」

「聞けや!!!!」


 ネタが増えて視聴者も増えて、スパチャの頻数も上がってWIN-WINなキッド。だがもうフザケてる場合じゃない。


「……そうか、吾輩のフルムーン・メガロポリス占領の邪魔だてをしてるのは、貴様らという訳か」

「ハッ! 特にこのフザけたキャップ野郎、アイツがこのEエリアのゴーストライダー部隊を潰したゲーム戦士の一人です!」


(キャップ野郎ってのは俺の事か?)

 はいそうです、キッドさんです。


「……それじゃアンタが、この都市を征服しようとしてる悪玉のボスかい」

「フフフフ、そこだけ理解出来れば上等だ。吾輩こそがこの『ヘビーメタル・レイダーズ』の指揮を取る大将軍、スチール大将軍だ!!」


 名乗るのにどれだけ時間が掛かった事か。やっとこさ威張れる機会を経て御満悦の大将軍。だがそれでもキッドは跪くどころか、歯向かうように胸を張る。


「軍人さんみたいな御大将が、わざわざ前線に立つとは度胸あるねぇ。で、俺達の前に現れるってのはどういう訳だ?」

「身の程を弁えぬ若僧が、我輩の前を阻もうとする態度。本来なら死刑……と云いたい所だが、我輩は寛大で通る男だ。貴様のような男を殺すには勿体ない」


 そしてスチール大将軍はキッドの元に近づき、顕になる機械の右腕を晒して彼に指差す。


「我輩の部下にならないか? さすれば数ある電脳異世界の所有権を貴様にやろう。悪くない話であろう?」

「へぇ、俺にスカウトですか。何故誘えるとお思いで?」


「我輩は権力に凝り固まった独裁者でも平伏せるからだ。さぁ答えを聞かせてみろ、さもなくば……」


 憎たらしいスチール大将軍のしたり笑いが、やたらにクドい感じだからキッドも面白半分にジロジロ見つめていた。だが気づけば彼の周囲には側近であるアンドロイド兵が、銃を構えて威嚇していた。


「………“YES”って答えるしか無いんでしょ?」

「分かってるじゃないか。さぁ蜂の巣になりたくなければ言え」


 本当にキッドの選択コマンドには『はい』しか無いのだろうか? とんでもない!


「強い力に自惚れた者は、命の尊さを忘れた愚か者なり」

「…………何?」


「心を持たない機械が、その銃で幾つの人を葬った? 脅せば何でも言う事聞くのが人工知能のやり方か?」

「貴様何が言いたい!? 吾輩に従うのか!?」


「お・こ・と・わ・り、DEATH(デス)!! ―――ルシファー!!!」


「俺に指図するな!! 駆けろ稲妻ッッ!!!」


 ◇――――――――――――――――――――◇

 ・アルティマスキル【堕天使の雷】発動

 ◇――――――――――――――――――――◇


 キッドを取り巻くアンドロイド兵に迸る電撃と爆音! “黒い稲妻”の異名を持つルシファーの電撃スキルが、稲光と共に敵陣に直撃。そして二人のゲーム戦士に抜かれるマグナムとエネルギーLMGの二丁掃射!!


「「あばよ、機械将軍ッッッ!!!!」」


 ミッションを完了させる前に親玉を討つキッドとルシファー、エネルギー光弾とマグナム弾のデュエットでノックダウン……と、思いきや!?



「―――――蚊蜻蛉(かトンボ)も飛んだか?」

「…………うわぉ」


 あれだけの攻撃に被弾しても、スチール大将軍の身体には一片の傷は付かなかった。

 掃射によってボロボロになった軍服の裏から、顕になるスチール大将軍の身体。そこには右腕のみならず、右半分のボディ全てが機械に改造された姿であった。


「残念だよ、貴様のような戦士を我輩の手で殺すことになろうとは。――――喜ぶがいい、我輩の手で骨も残らず逝けるのだからな!!」


 ――――ビュュュュンンンッッッ


「ッ!!」


 スチール大将軍の機械の右手が、一瞬にしてレーザーキャノンに変わるや否や、有無も言わさず放射されるレーザーショット!!


 それを紙一重で交わすが、後方にてパーツを集めていたゲーム戦士に運悪く着弾した。


「ああああァァァァッッッ!!?」


 悲鳴を上げたその刹那。いつものノックダウンを表す噴血、着弾による衝撃のエフェクトが無く、一種のノイズ音を残して屍も跡形もなく()()していった。


「………キッド。何が、起こった……!?」


「俺ら多分、ヤバい奴と喧嘩売ったかもしれねぇな、ルシファー。殺すよりもタチの悪い描写だ……!」



 〘◇To be continued...◇〙


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