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【♯53】満月の摩天楼、暗くてエイムどころじゃねぇ!!

 ―――A.I.M.S新シーズン『ヘビーメタル』の為に用意された新エリア。

 それは、遙か未来を予想し創造されたオールメタルな大都会。人呼んで【フルムーン・メガロポリス】


 超高層ビルはおろか、ハイブリッドな車が高速で行き交う道路でさえもプレイヤー達の戦場となるFPSでは稀に見ない()()()のエリア!


 夜の帳で覆い尽くされた深夜に、一際輝き自己主張するは純白の満月。今宵はフルムーン、狼男も銃を持ってヒャッハーしたくなる程の名月の下で、何人投与されたか分からないプレイヤー達が、目的も理解できぬまま好奇心に引き寄せられて突入した。


 エレメント◇トリガーズもその一組、しかも投入されたのは高層ビルの屋上!!


「うわ暗ッ!! つか高ッッ!!!」

「ヤベェ夜だと感覚が掴めねぇ!」

「ちょっとアイテム何処よ!?」

「あんだってぇ?!」


 きらびやかなロビーから、一気に視界が暗転した事で感覚が麻痺している四人。そうでなくても500メートル級のビルの天辺にいる故、高気圧と強風の音によって意思疎通すらもままならない。プロ四人にあるまじき大混乱。


 〘もちつけw〙〘無理ないよA.I.M.Sって昼間のフィールド多かったもの〙〘暗い中のFPSって聞いたことない〙


 視聴者の皆様も、第三者目線で目の当たりにした新フィールドに驚くと同時に、その発想はなかったわと感心するものもいる。


 だがトリガーズとて、混乱が溶けないほどの素人ではない。最初こそ驚いてはいたが、街中のネオンと暗順応による眼が夜に慣れた事によって直ちにアクションを引き起こす。


「見ろ、アッチにジップレールがある。これでビルの合間を移動できる仕組みらしい」

「良かったよぉ、このまま高いとこで待ち惚けとか嫌だぜ」


 キッドが発見した長いライン、先々のビルに移行出来るジップレール。

 これを彼らは常装備しているレールを固定させるフックと、スカイダイビング用の背中のジェットパックを噴射させてレールの赴くままにスムーズに移動。A.I.M.Sのソルジャーは手際も良い。


 移動した別のビルで、初めてアイテムや武器を保管されている横型カプセル『サポーターボックス』を発見した。開けてみるとシールド回復電池『シーセル』や、体力回復に使う注射器などのアイテム。


 更には武器にアサルトライフルの実銃『ベレッタ ARX160』と、キッドの十八番武器・マグナムリボルバーの『ファイアーバード』が格納されていた。


「ベレッタはハリアーが持って。俺は専売特許のファイアーバードだ」

「それは良いけどキッド、そいつヘッドショット率が下がって弱体化修整されたヤツじゃん。大丈夫か?」

「なーに、弱くなろうが使えるものは最大限に使うのが俺流よ。ダメージ量は変わってないから平気だ」


 キッド、ここは相性抜群のマグナムを頑なに所持するようだ。

 ハリアーが装備した『ベレッタ ARX160』は、本来は主にイタリア軍が使っているアサルトライフルで、アタッチメントのストック・グリップ機構を付けると、独立した兵器としても使用できる優れものだ。


「何であの二人だけしか武器が無いのよ!」

「膨れたってしゃーないやろアリスはん。ワテらは地道に探すしかあらへん」


 これもFPSの性だが、ボックスだけで四人分の装備を確保することは非常に難しい。足元にドロップされた武器やアモを探すのもありだが、ここは足場が狭いビルの屋上。アリスとツッチーは辛抱してボックスを漁るしかない。


 迅速に次のジップレールを装着し、高層ビルからビルへと移動するトリガーズ。

 ……だが忘れてはいけないのは、投入されたプレイヤーは彼らだけではないという事。


 従来のカジュアルマッチとは違い、100人同時にマッチングするのではなく、いつ何時に制限はなく自由にマッチングしてきたプレイヤー達が行ったり来たりするのがこの『スクランブル』という新ルール。


 つまり、この摩天楼に敵が()()()()()事も不思議ではない。と、言った側からトリガーズが移行してきた高層ビルの下り階段を登ってくる気配が……!


「――――ゲッ!!?」

「おおっ!? 敵がいたぞーーー!!」


 階段でバッタリと出くわしたエネミープレイヤー。出会い頭に敵チームはSMGやらショットガンやら、バラエティ富んだ武器陣でトリガーズを攻撃する。


 〘アカーーンww〙〘最悪のケースだ〙〘キッドとハリアーしか武器持ってない〙〘耐えろおおお〙


 視聴者も最悪の事態に、チャット欄からの動揺が隠せない。それはキッド達も同様だ。


「クソッ、まだ武器揃えてないのに!」

「短期でケリ付けるぞ! アモも少ないから長引いたら負ける!」


 更に危険な事に、トリガーズは先述の二丁の武器をキッドとハリアーが装備してるのに対し、敵陣は四人全員フル装備! 劣勢この上ない状況下を階段内の狭い空間で戦わねばならない!!


「もうっ、こんな時に見てるしか出来ないなんて……!」

 アリスも手持ち無沙汰な状態にやきもき。


「ええぃ、ここから先は通さへんで〜! そりゃーー!!」

 しかし一方のツッチー、武器無しの状況下にグレネードを片手に階段下の敵陣に投げつける。


 ――――BOMB!! シュゥゥゥゥゥゥゥッッ


「うわっ!? 熱ッ! チクチクしてきた!!」


 ツッチーが投げつけたグレネードは、通常の手榴弾とは違う『テルミット・グレネード』。

 グレネード内の金属酸化物と金属アルミニウムとの粉末混合物が着火することによって、激しい火花を発生させる“テルミット反応”を用いた牽制アイテムだ。


 このテルミットの火花が、迂闊に敵を階段に登らせないようにした所で、トリガーズ逆転の時だ!


「オラァ、ぶっ放すぞッッ!!!」


 ハリアーの猛攻、700発/分の連射速度を誇るARX160の掃射により微ダメージを敵に与える。

 そんな彼の後方にはキッド。ハリアーがARで錯乱撃ちしている所で、彼がマグナム片手にアシストするタッグプレイに出た。


「シーズン調整で、ヘッドショット率下げられたからって関係ねぇ。この6発だけで、四人を潰せられれば上等!!」


 ファイアーバード、一発45ダメージの高威力に加え、ヘッドショットで2倍ダメージを狙っての敵部隊全滅を試みる。これぞ魅せプ実況者の魅せどころ!


「――――今だキッド、撃てぇ!!」


 ハリアーがARの弾を切らした所で、キッドの好機アタックへ!!



 〔90〕〔45〕〔90〕〔90〕〔45〕〔90〕



 ◇――――――――――――――――――――◇

 噛ませられた敵プレイヤー×4 撃破!!

 ◇――――――――――――――――――――◇


 6発中4発、2/3の確率でヘッドショットを決めたキッドの必殺射撃。四人の敵部隊を一掃した!!!


 〘おおおおおおお!!〙〘SUGEEEEEE〙〘ナイスキルー!〙〘ヤバ強w〙〘キッド様あああああ!!!〙


 視聴者2万人以上のプレッシャーを諸共せず、有言実行で魅せつけたキッド。プレデター消滅後もそのスタンスに偽りは無し!!




「……なぁキッド、何でそんなにマグナム当てられるんだよ? 秘訣とか教えられるか?」


「いや、秘訣ってか――――イースト◯ッドの真似してたら勝手に上手くなってた」



 〘◇To be continued...◇〙

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エレメント◇トリガーズ、次回も宜しく!!

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