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【♯30】プレデター必殺のトリガーは、誰が引いたか?

 

「い、痛ぁぁあああ……!!」


 キッドに襲い掛かった、悪魔的痛恨の大ダメージ!

 近距離にスナイパーライフルの強烈な衝撃が、キッドのアバター姿をも貫通し、血飛沫を上げての痛撃エフェクトが彼の神経全てを襲う。歯を食いしばって痛みに耐えるのが精一杯だ!


 [175]


 辛うじて致死ダメージから寸の所でHPが留まったキッド。そんな彼を撃った武器がプレデターから顕になった時、ハリアーとツッチーは戦慄した。


「ちょっ、待て!? アイツのスナイパーライフル……」

「アカン! レベル5の『ハウリング』やがな!!」


 レベル4を超越し、真っ赤なパーソナルカラーのレベル5。最高レベルに到達した武器は威力も性能も桁違――――


『キッドさん、危ないッッ!!』


 ドオオオオオオオオオオンッッッッッ


 私が解説する間も無く、大型スナイパーライフルの遊底ボルトを引いて放たれる悪魔の咆哮。先程の弾が貫通したのは左肩部分であり、何とかノックダウンはキッドは二発目を得意の瞬発力で回避。


「サンキュー、天音ちゃん。また助けられちまったな」


『アイツの射撃タイミングはいつでも指示できるけど……長丁場は持たないわ!』

『何とかして、プレデターを倒さないと……!』


 〘スナイパーライフルを近距離射撃とか、現実だったら頭吹き飛ぶぞ〙

 〘殺意えぐッw〙〘またオートエイムか?〙〘いや、エイムは本能な感じだな〙


 二度に渡って、無線通信で号令を掛けてキッドを助けた響波姉妹。だがレベル5の武器相手では張り詰める緊張感は拭えない。響波姉妹のみならず、チャット欄内もザワつく一方だ。


 これぞプレデターが使用する武器『ハウリング』と呼ばれる所以。50インチの大型銃口から放つ弾の威力は、ヘッドショットすれば一発でノックダウン。キッドが一時ダウンされたのも、この威力があったからこそ。


 戦場に散った兵士の怨念が、地獄の死神が授け給うたこの武器に宿り、苦痛を超えた先の黄泉へと誘われるのでしょうか!?


「じ、冗談じゃねぇ! 二度も三度もそんなんにやられてたまるかよ!!」


 不意とはいえ、キッドは『ハウリング』によって一度はノックダウンされた身。本能的に怖じ気付いてはいるが、響波姉妹を泣かせたプレデターに対する怒りがアドレナリンとなって、キッドを奮起させていた。


「舐めた真似してんじゃねーぞ、二度もキッドを撃たせるか!!」

「ワテがドタマかち割ったろか!!」


 殺意を持って、二度もキッドを討とうとしたプレデターをハリアーとツッチーは黙って見てるわけにはいかない。得意のSMG、並びにショットガンで攻め寄って攻撃を仕掛けるも微小なダメージすら与えられない。


(何なんだ……あのジャガーが獲物を追い詰めるかのような動きは? まるで弾を寄せ付けない、それにその軌道すら見透かしてるような動き。

 エイムでも鉄壁でもない。おそらく奴のチートプログラムは、バケモンみたいなスプリント機能か!!)


 キッドさん、その通り! 野生動物が俊敏な脚で、山道や崖を飛び付くような脅威の脚力が、今回の【プレデター】によるチートプログラムの核であります。


「無闇に攻撃しても避けられるだけだ! 何とかコイツの動きの止め――――」


 と、二人へ指示を飛ばすキッドの刹那に。


「ぬぐぅぅぅッッ!!?」

「どぉおおおお!?」


 ハリアーとツッチーを腕で掴んだかと思えば、ブワッと振るって遠方へと飛ばされてしまった! 脚はジャガーで腕はゴリラって、プレデターよ、お前はキマイラか!?


「マジかよ、一旦引くか……あがッッ!?」


 おおっと、どうしたキッド!? 先程の『ハウリング』の瀕死ダメージが響いたか、身体を動かそうにも余りの痛撃に思うように動けない!!


 そこへプレデターが舌舐めずり、格好の餌食となったキッド目掛けてゆっくりと歩み寄っていくではないか。


『苦シメ……オレニ悶エ苦シム顔ヲモット見セロ!』


「………テメ、口聞けんのかよ」


『アァ、聞ケルトモ。ソレニ自分ノ犯シタ罪モ覚エテル。――――地底空間ノ安月給ナ孤児院ノ院長ヲ喰ラッタノハ、コノ俺様ダ!!』


 やはりこのプレデターは、響波姉妹の孤児院の元職員であり、地底空間の過酷な環境下の中で精神的に病んでいた男であった。


『毎日毎日ガキノ世話ヲシテ何ニナル、端金ダケ貰ッテモ何ノ足シニモナラネェ。ナノニ子供ノ未来ダ何ダ、綺麗事バカリホザキヤガッテ!!』


(アイツ、相当心が病んでやがる。地底での生活環境と収入で切羽詰まった適正なんちゃらって奴か?)


 プレデターに取り憑かれた者の中には、ある程度自我を持って会話が出来る者が居るらしい。

 だが奴の場合は、追い詰められた精神からそのプログラムの魔力に好気的に乗っ取られ、寧ろ()()()()()プレデターになったに等しい。


 言うなれば、奴は最凶の力に酔いしれた狂気的な愉快犯である!!


「……だからって、何で響波姉妹の、子供達の恩師を喰らった。月給安いなら自分から交渉出来る相手だろうが。態々悪行染めて、人を傷付ける事の何処に名誉があるってんだ!!」




『決マッテンダロ。―――――――弱い奴の苦しむ姿が、見たいから…………!!!』





 バグに染まったノイズの声から一転、殺意が向けられた発言だけハッキリと聞こえたキッド。その狂乱者に向けるキッドの眼は動向が開き、此方からも殺意に似た憤りが憤怨の如く燃え上がっていた。



「そうかい……じゃあ、お前のその汚い面を、怖え~顔で見てる奴の気なんか知らねぇまま、地獄に堕ちてくんだろうなぁ!!」



 心底の怒りにも似たキッドの憎み口が最期の悪足掻きなのか。長い舌を出して汚い面で返す彼の眉間には、50インチ口径の『ハウリング』が……!!



『死ネェェェェエエェエエッッッ』


 再び射撃へのカウントダウン、ボルトが手動で引かれて、銃爪を引こうとしたその刹那。


「―――させっかよぉ!!!」


 ◇――――――――――――――――――――◇

 ・ハリアーのPAS『シルフ』確認。

 ・PASノーマルスキル

【シルフ・トルネード】発動

 ◇――――――――――――――――――――◇


 ギュオオオオオオオオッッ


『ッ?!』


 突如として、ハリアーが発動させたPAS『シルフ・トルネード』によって発生した上昇気流。

 それが竜巻のタワーと成りて風圧でプレデターを持ち上げ、狙撃直前の照準がブレて、キッドは再び九死に一生を得る。


『オノレエエエエエエエエ!!!』


 浮き上がる気流で身動きが出来ないプレデター再び『ハウリング』で、キッドを射撃しようと構えた――――その時!!

 

 ――――バュュュュンンンッッッ


 [360]


 瀕死値のヘッドショットを喰らったのは―――――【プレデター】!!!


「ガッ………!!?」


 遠距離ヒットされたプレデターの思考回路は停止寸前。瞳孔も見開いて、一体自分の身に何が起きたのか知らないまま、目の前が真っ黒になり、二度とその視界が戻る事は無い。


 生を受ける者、誰もが体感するであろう“死”の瞬間に悔やむ声を上げる事すら許されない。


 ゲーム内でのプレイヤーには、生死を賭ける事のない神聖な戦場では敗北しても再び蘇る事が出来る。

 だがそのルールを無碍に破り、人の尊厳を失った【プレデター】には、尊厳なる死など存在しない。


 ただ残骸データの一部となって、誰にも覚えることなく、電脳の戦場より粒子と化し、跡形もなく消え去るのみ……


 ◇――――――――――――――――――――◇

『b454541084』撃破!!

 ◇――――――――――――――――――――◇


 欲に溺れしプレデター、ここに討伐。その首を討ち取ったゲーム戦士は一体誰なのか。

 戦いのログを辿って見るならば、そのキルを取った位置は『フォーリング・ラボ』。ということは……?



『キッド、プレデター討ち取ったわよ!』

「ナイスキル! あんな距離で良く撃てたよな〜」


 何しろ研究所と宙に浮かんだプレデターとの距離は1.5km。射程距離や高度の計算から見てもかなり難度な遠距離射撃を一発で成功させたアリス。その勝因もまたトリガーツールによるものだった!


「ツッチーも中々良いアイテム創るじゃない。【トリガー・ツールNo.003】、『ハイパロピア・スカウター』!」


 しつこく説明しよう! 『ハイパロピア・スカウター』とは、片眼のゴーグルの形をしたアイテム。

 これを装着するとスナイパースコープの性能が向上、ターゲットの敵の弱点や体力も提示出来る優れもの。


 しかもプレデターを狙撃した武器が、あの『バレットM82A1』。2km先の敵に会心のヒットを魅せた実績は伊達じゃなく、ハリアーによって浮遊し身動きが取れないプレデターを見事、頭から狙撃したという訳なのだ!


『やった……! 院長先生の仇を――――』

『アリス様あああああああああああ♡♡♡』


 響波姉妹の恩師、孤児院の院長の仇を取ってくれたアリスに感謝する二人。というよりも、琴音の方が彼女への愛に埋もれてる印象だ。


 無論コメント欄も〘ないすー〙やら〘成敗〙やらでトリガーズの討伐に称賛のコメントで溢れ返る。普段はキッドが丁寧に返事を返していくが、この死闘を後にしてはそれを行う気力も残っていない。

 果てたキッドの代わりにハリアー達が返す中、ふと溢した彼の一言。



「――――――――ふざけやがって」



 ライブ配信にも関わらず、震えた声で高台のフィールドに黄昏れるキッドの心情。それは視聴者は疎か、仲間達の誰もが知る由も無かった。



「…………あ、敵」



 ―――――数秒後、プレデターが撃破されたと知って、芋っていた他のプレイヤー部隊に漁夫の利感覚で狙われたエレメント◇トリガーズは、敢え無く一般プレイヤー達に撃破された。


 そのお陰でチャンピオンには遠ざかったが、そんな事は心底どうでも良かったとメンバー達は語ったという。

小説を読んで『面白かったぁ!』と思った皆様、是非とも下の「ブックマーク追加」や感想・レビュー等を何卒お願い致します!


更には後書きと広告より下の評価ボタンでちょちょいと『★★★★★』の5つ星を付けて、作者やこの物語を盛り上げて下さいませ!


A.I.M.Sで登場させたい実物の名銃も、感想欄で募集します!

エレメント◇トリガーズ、次回も宜しく!!

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