表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日から使える異世界ライフハック  作者: 白生荼汰


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/58

氷魔法で薄切り肉

 屋台のお粥は、カトラリーとか使わないで飲むんである。

 器に口をつけて、傾けて、ちびちびと。

 他に売ってるスープとかもそう。具が入っていれば、器で口の中に転がすようにして食べる。あとは手づかみ。

 初めて見た時は戸惑ったけど、普通はそういうものらしい。カトラリーを携帯していて、使う人もいる。

 煮物や炒め物なんかは、持ってきた器に入れてもらうか、パンに挟むというか乗せてもらう。食べ方を見ていると、挟んだまま食べたりしないで、蓋になってるパンを食べつつ、おかず的に乗せた炒め物を食べきってからお皿になっていた残りのパンを食べる、という感じ。

 普通に売ってる黒っぽいパンて、挟んだままじゃ食べにくいくらいには硬くてみっしりしてるから、純粋な現地人でも齧り付くのが難しいんだと思う。

 あとはおなじみ串焼き。お肉以外にも野菜とか果物(!?)もあるっぽい。焼いて食べる果物はなしとかリンゴっぽくて、生で食べるとすっぱすぎるんだとか。挑戦してみたら、わたしには焼いてもすっぱすぎた。

 何が言いたいかというと、露店で売るなら手づかみが容易か、あるいは用意した器で飲めるものでないと、売るのが難しいってこと。おむすびに添えるなら一緒にエイクの葉で包むので、水気が少なくて指でつまめるのがおかずの最低条件になる。

 豚のベーコンやアルミラージの照り焼きや唐揚げでさえ豪華だと言われたのに、ブルを塊で付けたらやり過ぎだと言われそうな気がするんだよね。領都で食べたあの肉はそれを考えるとずいぶん安かった。一体なんの肉だったんだろう……。

 なので、おむすびにブル肉をつけるならかさましをしたい。

 売るほどあるにんじんを細切りにしてさっと茹でたものとネギを巻くつもり。

 マグに売ってもらったのは肉塊なので、ここから薄切りを切り出さなきゃいけないんだけど……。

「いやいや、むっずー!」

 生肉を薄く切り出すのって考えていたのより全然難しかった。

 薄めに薄めに、って切ってるうちに、ボロボロになってしまう。

 こんなぐにゃぐにゃしたものをどうやって薄く切るのさ。

「明日いきなり挑戦しないで、試しに切ってみてよかった」

 朝から肉を薄切りして野菜を茹でて巻いて、なんてやってらんないかなーと、あらかじめ調理したものを明日の朝に再加熱して味付けするつもりだったのが功を奏した。

 多分向こうの世界のスーパーとか肉屋には、回転のこぎりみたいな肉切り機があるのだ。なんかバラエティとか動画とかでそういうの見たことある気がするもん。

「昔の人はどうやって肉を薄切りにしてたんだろう」

 牛鍋屋なんかは明治の頃からあったんだよね? 肉を切るのは達人が担当していたとかそんな感じなんだろうか。刃渡りをいっぱいに使ってすっと切るとかなんとかそういう……あ、ぐにゃってなった。わたしには無理。

 頑張って薄く切ってみたものの、どうにか切り出せたそれは、某チェーン店のレモンステーキがせいぜいといったところ。豚肉で言うなら、こま切れ肉でも薄切り肉でもない生姜焼き用のお肉とかそんな感じ。切り口はがったがただし、野菜を巻くのはできそうにもない。

「なんだっけ……軽く凍らせると切りやすくなるとかなんとか……」

 軽く凍らせるって何だ。凍らせるのに軽くも重くもあるの?

 あれかな、完全に凍らせないでシャリシャリするぐらいの半解凍状態にしろってこと?

「凍らせる……凍らせる……」

 お肉を凍らせようと試みてみたものの、()()()()できそうにもない。

 できそうな手ごたえはあるんだよ。

 お肉にはたっぷりの水分が含まれていて、その水分に働きかける、というところまでは()()()()。でも、まだわたしは()()()()()()()()()()

 こうなんというか、あと一歩で解けそうなパズルをいじっているみたい。

 パズルアプリなら、課金してアイテムを使うか、ターン数を伸ばすかしたらどうにかなりそう。でも、ここを理解できたら、応用が利く解法を得られそう。だから、今はまだ課金のタイミングには早いかな、ってわたしの中の何かが言う。

「あー……お肉の周りの温度を下げればいいのか」

 向こうにあった冷凍庫だって、お肉そのものを凍らせるわけじゃない。というか、向こうには魔法なんかないんだから、対象物だけの温度を下げるなんてご家庭では不可能だ。電子レンジの構造はマイクロ波を当てて対象物の水分を振動させてるんだっけ? その逆に冷やすことはできるんだろうか。冷蔵庫や冷凍庫は密封した環境を温度変化させることによって、内包物の冷却を可能にしている。

 同じようにお肉の周囲の温度を下げれば、熱伝導でお肉も凍る。

 今はまだこれでいい。

 多分、そのうちお肉そのものを凍らせることもできる。

 でも今はまだ、元の世界の知識を駆使して冷凍庫を応用するのがせいぜい。

 ま、手段はどうあれ目的が果たせるならそれでいい。

 別にそこまで魔法を使いこなす必要も今のところは感じてないし。

 それよりも今はお肉の味の方が大事だ。

 冷凍して味が落ちるのも嫌だし、表面が凍ったあたりで少し切ってみる。

「つめたっ」

 当たり前だけど、左手で凍ったお肉を押さえたらすごく冷たい。切る間ずっと手で押さえてたら凍傷になりそうだったので、キャンプツールのミートフォークを使う。

「おぉ、なんかプロっぽい」

 気のせいなんだけど、それっぽい道具を使うとテンションが上がる。

 ブレッドが来た時にBBQとかするのもいいなぁ。アメリカ人のBBQみたいに、みっしりお肉を焼くとかやってみたい。ゲルキたち他の兵士も誘ってBBQとかしても楽しそう。

 ただなぁ、BBQグリルはどう考えてもオーパーツだから持ち込めないよなぁ……。

 上手い具合に周辺だけしゃりっとするぐらいに凍ったお肉は、生のままより断然薄く切れた。しゃぶしゃぶにできるほど薄くはないけど、ちゃんと薄めのステーキ肉じゃなくて、薄切り肉の体裁を保っている。ミートフォークで押さえているから、冷たさを気にせず、一定の温度で作業ができる。

 わたしは味を確認すべく、切ったお肉の端っこを軽く焼いてみた。

「はいはい、なるほど。こういう感じね……」

 輸入物の癖がある牛肉っぽい。肉質もちょっと堅め。

 食べられないほどじゃないけど、できれば胡椒ぐらいは欲しいし、塩だけじゃなくてしっかりソースがあった方がより美味しく食べられそう。

 薄切りにしてるからいいけど、ステーキで食べるならしっかりマリネしてから焼いた方がよさそうだ。

「せっかく薄切りにしたし、今晩はすき焼きにしようかな」

 豆腐もこんにゃくもないけど、甘めのお醤油味でいこう。

 生卵もちょっと怖いから、ネギと牛肉の甘辛煮込みみたいになるけど。

 煮込むんなら薄切りにしそこなってぼろっとしちゃってても関係ないし。

 すき焼きにはやっぱりビールだよね!

 ステーキもいいけど、晩酌するなら箸だけでつまめる手軽さが嬉しい。


 ビール、ビールはわたしを救う!

領都の串焼きは大型のもぐら系魔物でした。農家近くによく出る駆除対象で肉に癖があるのでアルミラージよりも安い。


いつも読んでいただきありがとうございます。

ブックマークや★★★★★、レビュー等で応援してもらえると嬉しいです。


どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ