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第51話 第5回・裏サミット開催 ~議題:リアル接触の戦果報告会と、推しの「鋭すぎる勘」による緊急事態~

今回は表側ナシの裏サミット回です

いつものチャットルーム『裏サミット』。 今夜は、かつてないほど「ドヤ顔」のオーラが充満していた。 ここ数日、メンバーたちが相次いで実行した「リアル接触計画」の戦果報告会である。


『ミケ: ふん。ワシは「同志」として名刺交換をしたぞ。今度、新ゲームの試遊会に個人的に招待する約束も取り付けた。「またお話したいです」と言われたわ』


『admin: ……非効率だな。私は技術者として彼と握手をした。彼の指紋データ、掌の温度、そしてグリップ力から算出される筋力データまで入手済みだ。彼の「手」を知っているのは私だけだ』


『フクロウ: あら、データなど無粋ですわ。私は彼と目を見て、心の対話をしましたの。彼が「本が好きだ」と語る時の、あのはにかんだ笑顔……。あの表情を引き出したのは、政治家としての私の手腕です』


『ドクター: 甘いな。私は彼のバイタルデータと、喉の粘膜の状態まで把握している。彼が健康でいられるのは、私のスプレーのおかげだと言っても過言ではない』


『名無し: えー! みんな堅苦しいよ! 私はね、あのルルちゃんの中の人を「先輩」って呼べる立場になれて、手取り足取り教えてもらったもんね! 「先輩、すごぉい♡」って甘えたら、すっごく優しくしてくれたし! 彼にとって、守ってあげたい「可愛い後輩」ポジションは私だけだもん!』


全員が「自分が一番深い関係だ」と主張し、子供のようなマウント合戦が繰り広げられている。 ROM専を決め込んでいたリョウタは、頭を抱えた。


『リョウタ: (……全員、職権乱用とストーカーの境界線を反復横跳びしてるな。……まあ、俺は「パパ友」として認知されたけど、黙っておこう)』


そこへ、ロンドンからカゲ(影山栞)が優雅に入室した。


『カゲ: あらあら。皆様、物理的な接触に必死ですこと。随分と余裕がありませんのね』


『ミケ: 何だと? 貴様こそ、海外に逃亡して指をくわえて見ているだけではないか』


『カゲ: いいえ? 私は彼とLINEで「心の交流」をしておりますの』


カゲは、丁寧に身バレ防止の修正を加えた小暮とのLINEのやり取りのスクリーンショットの一部を貼り付けた。 そこには、『影山さんと話している時が、一番ホッとするんです』という、小暮からの殺し文句が記されていた。


『全員: ぐぬぬぬぬ……ッ!!』


『カゲ: ふふっ。物理的な距離など些末な問題。彼が一番リラックスして本音を漏らせるのは、私との時間ですわ。これが「真のヒロイン」の余裕というものです』


個人の連絡先という最強のジョーカーに対し、他のメンバーは歯ぎしりした。 チャットルームが嫉妬の炎で焼き尽くされそうになった、その時だった。


『――こんばんは、みんな』


小狐ルルの配信が始まった。 しかし、今日のルルは、いつものような笑顔ではなく、どこか神妙な顔つきで腕を組んでいた。 手元には、ホワイトボードと計算機がある。


「みんな、聞いてほしい。 最近、僕の周りで……確率的にありえないことが起きているんだ」


チャットルームの空気が凍りついた。


「この一週間で、御子柴重工の会長、Nebula CorpのCEO、政治家の剣崎大臣、有名な科学者さん……そんな『雲の上の人たち』に、立て続けに会ったんだよ。 しかも全員、向こうから親しげに話しかけてきてくれた」


ルルはホワイトボードに確率式を書き殴った。


「日本の人口と、彼らのようなVIPの人数、そして僕のような一般エンジニアが出会う確率を計算すると……これは天文学的な奇跡だ。 宝くじに三日連続で当たるよりも確率が低い」


そして、ルルはきらりと鋭い眼光でカメラを見つめた。


「……僕のエンジニアとしての勘が告げている。 これは『偶然』じゃない。 『何者かが裏で糸を引いて、意図的に僕に接触してきている』気がするんだ」


「もしかして……僕、何かの陰謀に巻き込まれてる……? それとも、ドッキリ番組の企画……?」


   ◇


『admin: ……!! 計算外だ。事象が短期間に集中しすぎたことで、彼の「パターン認識能力」を刺激してしまった』


『ミケ: ええい! 貴様らが寄ってたかって会いに行くからだ! ワシ一人なら「運が良かった」で済んだものを!』


『ドクター: お前もだろうが! 会長とCEOと大臣が同じ週に来たら、誰だって怪しむわ!』


『名無し: やばいやばい! 「ドッキリ」だと思われてる!? もし「リスナーでした」ってバレたら……!!』


『フクロウ: 関係性が崩壊しますわ……! 「ファンが権力を使って近づいてきた」なんて知れたら、怖がられてブロックされます!』


怪物たちはパニックに陥った。 彼らは「個」としては最強だが、全員が集まると「加減」を知らない。 ルルの鋭い勘(エンジニア特有の確率論的思考)を侮っていたのだ。


このままでは、ルルが警戒心を強め、引きこもってしまう。 あるいは、探偵を雇ったりして真相にたどり着くかもしれない。 絶体絶命のピンチを救ったのは、やはり「凡人」だった。


『リョウタ: 落ち着け! 今ここで騒いでも事態は悪化するだけだ!』


リョウタはキーボードを叩いた。


『リョウタ: いいか、ルルちゃんは「連続していること」を怪しんでるんだ。 なら、解決策は一つ。「接触のスケジュール分散(シフト制)」を導入するしかない』


『全員: シフト制……?』


『リョウタ: そうだ。誰かが会いに行ったら、その後2週間は他のメンバーは接触禁止(クールダウン期間)。 「偶然」を装うなら、発生頻度を下げて、確率論の範囲内に収めるんだ。 admin、最適な接触間隔を計算しろ!』


『admin: ……了解した。彼の生活パターンと忘却曲線を考慮すると、VIPクラスの接触は「月1回」が限界値だ』


『ミケ: 月1回だと!? 少ない! ワシはもっと孫と遊びたいんじゃ!』


『カゲ: 我慢なさいませ。ルル様に嫌われたら元も子もありませんわよ?』


『リョウタ: そういうことだ。 これより、「第1回・推しへのリアル接触スケジュール調整会議」を行う! 来月の枠を賭けて、話し合い(殴り合い)で決めろ!』


こうして、裏サミットの議題は、単なるマウント合戦から、「バレずにリアル交流を続けるための、緻密なスケジュール管理」へと変貌した。 日本の黒幕たちが、googleカレンダーを共有し、「あ、この日は大臣が公務(推し活)ね」「じゃあ私は翌週にサーバーメンテ(推し活)入れるわ」と調整し合う。


画面の向こうで、ルルが「なーんてねっ!やっぱり考えすぎだよね!」と無邪気に笑っているのを見ながら、怪物たちは冷や汗を拭い、固い握手(協定)を交わすのだった。

毎日0時に1更新を目指して頑張っています。


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