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合流

「何だ? サリアもウィルもいるのか。失敗だな。だったら俺たちがわざわざ出張る必要なかった。おいロバート、さっさとオベロンの馬鹿をしばきあげてババ抜き大会に戻ろう」


ルーシーはやれやれとため息を漏らしながら教会の中へと入ってくると、警戒を解く様に剣を納める。


「ふむ。そうしたいのは山々だがなルーシー。見てみろこれ、オベロンのやつ死んでやがる」


「どういうことだ? ロバート」


「さぁな、その答えをいま、メイズイーターから聞こうとしてた所だ」


ちらりとこちらを向き直るロバート。


その様子に僕は説明をしようとするが、それよりも早くサリアはルーシーに言葉を投げる。


「マンデースレイヤーが現れました。目的は当然永遠に続く日曜日の実現。その為にオベロンを排除し、現在は蘇生が可能であろう人間を悉く排除して回っています」


「!!! マンデースレイヤーか。なるほど、この惨状も納得だ」


「??? おいルーシー、何だ、そのマンデースレイヤーって」


「強いて言うなら、労働に戻りたく無い人間の意思の集合体。休んでいたい、ずっと遊んでいたいと願う心が生み出す怨念の様なもので、歪んだ方法で永遠の日曜日を手に入れようとする、厄介な魔物だ……よほど劣悪な環境に晒された労働者がいない限りは生まれない魔物なんだが……ロバート、お前……」


じとりと全員の視線がこの国の統治者へと走る。


「え!? いやいやいや!!? まてまて!? ウチの国そこまで労働条件悪く無いだろ!? 最低賃金とかも他より高いし! 法律で完全週休二日制義務付けてるし!!? なあ!?」


助けを求める様にこちらに語りかけるロバート。

しかし僕たちは顔を見合わせて首を傾げる。


「まぁ、我々迷宮冒険者はその例には漏れますけどね」


さらりと、サリアが不都合な真実を指摘した。


「こ、この国の労働人口の約43%は迷宮冒険者です。それに加えて、ぼ、冒険者さんの迷宮での死亡確率はだ、大体25%。死と隣り合わせに加えて、え、えと、暮らしてたからわかるんですけど、匂いも衛生状態もさ、最悪に近いかと」


クレイドルの胸の間から、カルラはデータを提示し。


「だって言うのに、報酬はそこまで高く無いよね。コボルト一体で銅貨一枚だし」


そして僕は現場の状況を語り。


「そうですね、ガドックのフルコースが銀貨一枚と考えると、コボルトといえども命をかけた仕事には変わりありません。過酷な労働に加えて低賃金という条件は満たしているかと」


最後にサリアは結論を提示した。


「はい、俺のせいですね狂王でごめんなさい!」


言い逃れの余地もない論破にロバートはヤケクソ気味にそう謝った。


「まぁ、冒険者はそれを覚悟で一攫千金を狙う者だ。一概にロバートのせいとは言えないが、取り敢えず日曜日を願う思いとオベロンが考えなしに始めた7日続く日曜日とやらが、マンデースレイヤーを生み出すきっかけとなったのは間違いない様だな」


冷静にルーシーはそう言うと、ちらりとクレイドルを見る。


「なによ?」


「世界に不干渉を貫くお前だが、今回ばかりは特例だろう? マンデースレイヤーを倒さねばシンプソンは生き返らない。今回ばかりは創造主たるお前の力でチャチャっと消滅させられんのか?」


「そうしたいのは山々だけどねぇ、私じゃどうにもならないわよあれ。知ってるでしょ? 私が作ったのは人間だけ、魔物は埒外よ」


「弱点とかは分からないのですか? ニンニクに弱いとか、こんにゃくが切れないとか」


サリアの質問に、クレイドルは大きく首を振る。


挟まれているカルラが幸せそうに揺れた。


「そう言うのも専門がーい! 魔物を作るのは私の仕事じゃありませーん! だから魔物の構造とかからっきしなのよ、魔物のことなら私よりもティズの方が詳しいから、あの子記憶戻ったんでしょ、だったらそっちに聞いて頂戴!」


「え?」


突然のクレイドルの言葉に僕は思わずきょとんとする。


「く、クレイドルさん、そ、それってどう言うことなんですか?」


「あら? みんな知らなかったの? ティターニアはメイズイーターの選定者にして、全ての魔物の設計者なのよ?」


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