狙われたシンプソン
「シンプソン!!!」
テレポーターの罠により、クレイドル教会へと飛んだ僕は急いで礼拝堂へと入る。
礼拝堂は荒れ果て、椅子やクレイドルの像が無惨に破壊されていた。
「っ、やはり手遅れでしたか」
「す、すごい呪いの残滓です!? これ、下手したらラビの呪いよりも」
表情を歪めながらそう言うカルラ。
確かに、充満するどろっとした空気は、息をするだけで吐き気を催してしまいそうなほど重苦しい。
ラビの呪い以上、と言うのも納得でありそれほど、ここにいた何かは強大で異常なほどの呪いを振り撒いていることは間違いなかった。
「カルラは、他の部屋の探索を! サリアは礼拝堂を手伝って!」
「わ、わかりました!」
「了解です」
カルラは小さく頷くと、金庫の方へと走って行き、僕とサリアは礼拝堂の中の瓦礫を漁る。
「シンプソーン!!」
再度、シンプソンの名前を呼ぶ。
この状況で、生存は難しいかも知れないがシンプソンの生命保険ならばあるいわと一縷の希望をいだきながら、シンプソンの名前を呼ぶ。
「シンプソン!! 聞こえないのか!?」
再び礼拝堂の中に、僕の声が反響する。
と。
「こ、こっちです。マスターウィル」
か細い声が瓦礫の中から響き、中からよろよろとシンプソンが顔を覗かせる。
「シンプソン!」
慌てて僕はカルラとサリアとともにシンプソンを瓦礫から助け出す。
服も体もボロボロであったが、シンプソンには特に大きな怪我の様なものは見受けられない。
「いたたた、酷い目に遭いました」
「何があったの?」
「わかりませんよ。何だか変な奴がいきなり現れて襲われて……あっさり殺されてしまいました」
「良かった、生命保険のおかげで助かったんだね」
不死の神様すら殺し切るマンデースレイヤーだったが、どうやらシンプソンの生命保険にはその力は通用しなかったらしい。
やれやれとため息を漏らしながら服の埃を払うシンプソン。
呑気なその態度は呪いやその他の状態異常をかけられている様子も見受けられず、僕は安堵のため息を漏らす。
「それで、今度はどんな面倒ごとなんですか? マスターウィル。お金次第では全面的に協力させていただきますよ?」
「頼むよ……実は、大変なことになってて」
安堵し、僕はことの顛末をシンプソンに語ろうとすると。
「たたたた、大変ですウィル君! しし、シンプソンさんが金庫の中で逆さまに突き刺さって……!!?」
金庫の捜索をしていたカルラが慌てた様子で礼拝堂へと走って来る。
「え!?」
一瞬、何が起こっているのかわからず目の前にいるシンプソンへと向き直ると。
【バレちゃいましたか】
「しまっ!!?」
どろりとシンプソンの顔が解け、黒い泥が僕へと襲いかかる。
【ゲツヨウビ、コロスベシ】
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