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シンプソンは全てを解決する

【OOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!】


大波は、何処からか絶叫の様な声を上げ、霧となって街へと溶ける。


核を砕かれ形を保てなくなったのか、マンデースレイヤーは消え去り、街に満ちていた大波は嘘の様に消え去っていく。


「や、やりました!!」


それは間違いなく勝利だったはずだった。


しかし。


「!!!? いかん!!? サリア! 息を止めろ!」


ルーシーの言葉に、サリアは咄嗟に息を止めようとするが、僅かに間に合わず霧散した霧を吸い込んでしまう。


「!!? か、はっ!?」


それはほんの僅か、一呼吸にも満たないほどの量の霧だったが、間違いなくその毒はサリアの肺を傷つけ、血を吹き出させる。


【大旋風!!】


血を吐き倒れるサリアに、ルーシーは剣閃により旋風を作り、あたりに充満する霧を払う。


「無事か!!? サリア!!」


助け起こされたサリアは、咳き込みながらも小さく頷く。

その様子にルーシーは最初安堵した様に息をつくが、すぐに険しい表情を見せて街に立ち込める霧を睨む。


「師匠、これは一体」


「大波と核は確かに破壊した。だが、どうやら最後の力で、この街全体に毒を撒いた様だ」


「そ、そんな!?」


サリアの顔が青ざめる。


確かに毒殺では確実に人を確実に消滅させる事は難しいだろう。


消滅による完全なる労働からの解放を目論むマンデースレイヤーからしたら、最後の悪あがきなのかもしれない。


だが、過酷な労働に苛まれ、体も精神も疲弊した労働者達の一体何人が、満足な蘇生ができるのだろう。


「間違いなくこの一件、俺たちの敗北だ」


「そんな……嘘……嘘ですよね……」


「……」


ルーシーは額に手を当てて歯軋りをし。


「っ!!? うあああああああああああああああ!!!」


静かに滅んでいく街を見ながら、サリアは涙を流しながら絶叫をする。


こうして、鉱山都市カロシーに現れた祟り神、マンデースレイヤーは剣聖ルーシーとサリアの活躍により討伐をされた。


しかしその被害者数は10万を超え、地域ではその出来事を今なお未曾有の大災害として、近隣の地域には伝説として語り継がれることになるのであった。


◾️


「以上が,マンデースレイヤーとの戦った時の話です」


そう、話を終えるとサリアは悔しそうに表情を歪める。


守れなかった苦い思い出が、今でも彼女にとっては重荷となってのしかかっているのだと、僕は悟る。


「そ、それから鉱山都市はどうなってしまったんですか?!」


恐る恐る、と言った様にその後の展開をカルラは聞く。


永遠の休日を望むほど追い詰められた人々。

極限状態に近かったのだろうそんな摩耗した人々の魂が、簡単に蘇生できるとは思えなかったが。


ふと、僕はそう言えばと思い出す。

「あれ? でも鉱山都市カロシーって、今でも大陸有数のミスリル鉱山としてまだ稼働してるよね? 確か、今度稼働300年記念だって…...どっかで誰かが言ってたよ?」


祟り神の呪いで一度滅んだのが150年前だとしたら、300年って言うのは何となく違和感を感じる。


しかしサリアはその質問にえぇとみじかくこたえると


「確かに街の人間は死に絶え蘇生は難しいと言われていました。ですが」


「ですが?」


「その後、事態の収集のためにクレイドル寺院の司祭が派遣されたのですが、その、その中に高明な僧侶ががいたらしつしく。鉱山の経営権の譲渡を条件に街を一日で復興させたと聞いています」


「それ絶対シンプソンじゃん」


「えぇ、今思うと恐らく彼なのでしょうね」


高笑いをしながら鉱山の権利者を手に入れるシンプソンの姿が容易に目に浮かぶ。


やはりシンプソン、シンプソンは全てを解決する。


「だ、だけもサリアちゃん。マンデースレイヤーさんが出現したなら、津波みたいなのがリルガルムに現れるんじゃないの?」


あたりを見回すが、もちろんリルガルムにそのようなものが現れている様子はない。


しかしサリアはオベロンの遺体を指差す。


「マンデースレイヤーは、日曜日を存続させるために最も有効な手段を取れる形へと姿を変えます」


「なるほど、津波や自然災害ではオベロンのワールドスキルは超えられない。だから暗殺したのか」


「池に落下しているところを見るに、大方ティズにでも化たのでしょう。そして人目のつかないここで、月曜日への恨み言を刻み込んで殺害をした」


「でも何でオベロンを?」


「お,オベロンさんのワールドスキルで変わった事象は、オベロンさんが死ぬと元に戻らないって、ろ、ロバートさんたちが話してるのをぬ、盗み聞きしたことがあります!? 今は日曜日がずっとつづく世界になっちゃってるから、た、たたた、大変です! 日曜日がおわりませんーー!」


カルラの言葉に僕はそういう事かとハッとする。


オベマロンが生き返らなければ、僕たちはこのまま日曜日を永遠と繰り返すことになるのだ。


「い、急いでシンプソンのところに!」


早く生き返らせないと、大変なことになってしまう。


「残念ですがマスター、おそらく手遅れの可能性が高い」


そう判断して僕はそう言うが、サリアは苦虫を噛み潰したような表情で首を振る。


「な、どうして!?」


「オベロン殺害が成功した後、マンデースレイヤーが恐れるのは間違いなくオベロンの蘇生です。ゆえに、次の標的は間違いなく。シンプソンでしょう、おそらくは既に……」


「「!!!!!」」


サリアの言葉に、僕たちはようやく自分たちが置かれた絶望的な状況に気がつくのであった。



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