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アルフとの再開4 アルフ参戦

「ゾーン……え? と、父さんが?」


「そうだ、本当であればお前の父親が、メイズイーターになるはずだった……だが行方不明になり、その後ゾーンを追ったティターニアもノスポール村で襲われ、フェアリーストーンを奪われた」


「スロウリーオールスターズに敵対している何者かが存在していると?」


「おそらくな……そして、その手先であるのがアンデッドハントであることは間違いない」


「新たなメイズマスターが、すべてを察している可能性があると?」


「そういうことだ」


いろいろなことが起こりすぎて、頭がパンクしそうだ……。


そもそも、自分の父親がスロウリーオールスターズの一員だったなんて……。


それだけでも驚きなのに……。


「もっと早く伝えてやるべきだった……だが、言えなかった事を許してくれ」


「ははっ……なんだか実感わかないよ……まぁ、父さんの手掛かりが一向に手に入らないわけだよね……アルフたちが隠してたんだから」


「そういうことだ……だが、おそらくはもうこの世には」 


「いいんだ……それは覚悟してたから……。ただ、父さんがどんな人物だったか……僕はそれを知りたかっただけだから……むしろ、父さんのあとを継げたっていうのは少しうれしいかも」


「そうか……これで、俺の知ってることは全てだ……さんざ裏切っておいて虫のいい話だとは思うんだが……俺はお前もアンドリューも助けたい……。もう、何かを失うのはうんざりなんだ……ここでお前たちが逃げ出せば、アンドリューもお前も助けられなくなる」


「……そうだね、ただ、この世界の魔力の枯渇はどうするの? このままじゃ星自体が死んでしまうって」


「なに、魔力の使い過ぎは俺たち人間の問題だ……自分たちのやったことには自分たちで責任を持つ……それを二人の人間に背負わせるのは酷ってもんだ」


「それもそうだね」


僕はそう笑うと、アルフも僕に笑い返す。


「……ウイル……いいの? アンタまた騙されてるのかもしれないわよ?」


ティズは、自分が僕を殺そうとしていたわけではないことを知り、少しばかり安堵したのか、いつもの調子で僕にそうとうてくるが。


「大丈夫だよ……僕はアルフを信じている……だから大丈夫」


僕はもう、アルフを信じることにためらいはなかった。


「……さてと……メイズエンドの問題についてはここまでだ。 まだ何か腑に落ちない点は?」


「具体的に、メイズエンドが始まるのはいつごろになるのですか?」


「明確な日付は分からない。 だが、計画の実行はウイル、おまえが迷宮最深部に到達したときだ」


「なぜ?」


「メイズイーターがメイズマスターと迎合したとき……まぁこれが最終決戦になるわけだが……引き返すこともリベンジマッチもできない。 不完全だろうが何だろうが、メイズエンドを放つことができる段階までもっていっていれば……メイズマスターはメイズエンドを発動する……鉄の時代の時は、中途半端なタイミングで撃ったからな、本当は何もかもがフラットになるはずだったのが、あちこちに鉄の時代の遺品が残っていたりしてるのはそれが原因だ」


「……なるほど……。逆に言えば、僕が迷宮十階層に到達するまでは、メイズエンドのことは保留にしておいても問題はないってことだよね」


「そうなるな」


その言葉に、僕は一度胸をなでおろす。


一時的だとはいえ、一番大きく悩ましいこの問題を保留にできるのは大きい。


これで、今直近で面倒くさい問題になっているフェアリーゲームに対して思案をすることができるからだ。


「……まぁそうだな……ロバートの野郎はこのフェアリーゲームを使って、お前たちを完全に手駒にしようと画策するだろう。もとよりお前たちが吹っ掛けた喧嘩だしな」


「手駒ですか、不愉快極まりないですね……」


「あぁその通りだ……だがこれはチャンスでもある。フェアリーゲームは、俺も何度かティターニアとオベロンの二人にやらされたが……敗者は勝者に逆らうことはできない」


「つまり?」


「俺はアンドリュー奪還作戦から外されているが、ロバートがお前に隠し事をすることはできなくなる……つまりはあの偏屈が考えてる作戦を全部聞き出して、そのうえでお前はその作戦に乗っかることもできれば、いやだと突っぱねることもできるってわけだ」


「……それは、戦う価値は大いにありますね」


サリアはそうつぶやくと、僕たちは互いに顔を見合わせる。


「……だが負ければ、ロバートのやつが何を企んでいようとも、黙ってこのまま迷宮の攻略を続けなければならなくなる」


「……なに、もとよりやめるつもりなんてなかったし……何より負けるつもりもないよ」


「……そうか。 そうだろうな……」


頼もしくなったな……とでも言いたげに、アルフは僕の頭を撫でようと一瞬手を伸ばすが……はっとした表情でその手を引っ込める。


それは、明確に僕を一人前と認めてくれた……という証に他ならない。


「それで、あんたはどうするのよアルフ」


そんなアルフの行動に、僕は誇らしさを覚えているさなか、ふとティズがアルフに対しそう問いかける。


「どうって?」


「フェアリーゲームよ。 オベロンをぶちのめすのにロバートはアンタを呼んだのかもしれないけど、今ろばートのところにいけば助力を求められるわよ……」


「また板挟みになるのはごめんだからな……また一か月ぐらい行方でもくらまそうか……正直、お前たちに味方しても、ロバートに味方しても……俺が割を食うだけで終わりそうだからな」


アルフのやれやれというため息に、僕はアルフのやさしさを感じ。


「それなら、ロバートの手を貸してあげなよアルフ」


僕はそう背中を押した。


「は? なにいってんだお前……」


「だから、アルフはロバートのことを助けてあげて……昔の大事な仲間なんだろう?」


「おいおい、俺の能力のこと忘れちまったのか? ワールドスキルのスキルホルダーの俺が……お前たちと敵対なんてしちまったら」


勝ち目はない……そういおうとしたアルフの言動に、カルラとサリアの瞳がギラリと光る。


当然、二人の考えていることは僕にも伝わり。


「……言っただろうアルフ……それでも勝てるって」


僕はそう、アルフに対し宣戦布告をする。


当然……これは敵に塩を送る行為だろう。


これでロバートの陣営は大きく強化され……僕たちは強敵との戦いを余儀なくされる。


だが、それでいいのだ……僕とロバートとの友情で揺れ、一度壊れかけてしまったロバートとの絆……その絆が、この戦いで少しでも元に戻るのであれば……僕は喜んで、スロウリーオールスターズとも戦おう。


そう僕は覚悟をし、アルフに対して挑戦状をたたきつけると、アルフもその意図をくみ取ったのか、今にも泣きだしそうな表情のまま。



「後悔しても知らねえからな……男と男……真剣勝負だ」


そう、こぶしを僕に重ねてきたのであった。


                ◇


その後、話を終え一人残されたアルフは、重ねた拳の熱を感じながら……一人ロバートの王城の中を歩いていく。


城の中はいつもの荘厳かつ静寂に包まれた空間の面影はなく、せわしなく人々がパタパタと行き来をしている。


誰が何をしたのか……などという説明は不要であり、アルフは派手にやってんなぁと一人つぶやきながらも、そんな喧噪の中を一直線に王の謁見の間へと歩いていき、あっという間に大扉の前へとやってくる。


いつもなら、不機嫌に鼻を鳴らしてから扉を開けるのが癖になっていたアルフであったが……今日ばかりは違った。


あくまでロバートの友として……アルフは久方ぶりにすがすがしい気持ちのまま……ロバートのいる部屋の扉を開ける。


と。


「おやおや、遅かったですねぇアルフ」


「待ちくたびれたぞ……久しぶりだな」


聞きなれた声がひとつと……聞きなれていた声が一つ……謁見の間に響き渡り。


「……こりゃ、大変だぜウイル……」


アルフは一人そう呟くと……口元をにやりと釣り上げたのであった。



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