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262.うそっ、私のパーティー 強すぎ!?

「と、とりあえず……アンデッドの工房を探すのが最優先課題になるはずですが、どこかに心当たりはあるのですか? ピエール」


「一応、この辺りは迷宮があり、同時に洞窟も多くあります……そのどこかに糞っ垂れな下種野郎がいるのは確かなのですが……」


「人手が足りないということですね」


襲撃から街への被害を食い止めるだけで精いっぱいなのだ……そこから偵察部隊などを派遣する余裕もないのは当然だろう。


ただ気になるのは、それだけのアンデッドをどこに隠しているのかだが……。


「面目ない」


ジョフロアは申し訳なさそうな声を漏らすが、その様子にカルラが慌てて首を横に振る。


「じょ、ジョフロアさんのせいではないですよ……その、出来れば、候補となる洞窟の場所を教えてもらえますか?」


「かまいませんが……どうするつもりですか?」


「一人で潜ってみようと思います」


「え?」


カルラの言葉に、ジョフロアとピエールは目を丸くして首をかしげる。


「聞き間違いでしょうか……今、一人で洞窟に潜ると聞こえたのですが」


「え? ええ、単独潜入ののち、アンデッドの大軍がいれば戦力の分析を……隙があるようでしたら、リッチーの暗殺まで請け負いますが……あっで、でもご迷惑でしたか!? ご、ごめんなさい!」


「い、いやいや……洞窟には魔物もおりますし……貴方の様なうら若いお嬢様一人ではあまりにも」


「だ、大丈夫です! 私隠密と追跡、潜伏は大得意なんです! ですよね! ウイル君!」


「うん、一時期付きまとわれたことがあるからね……その点に関しては絶大な信頼を寄せてるよ、カルラ」


「ああぁ!? あの時のことは忘れてくださいぃウイル君!」


カルラを少しからかうと、可愛らしく慌てるそぶりを見せるカルラ……。


「ちなみに洞窟の魔物は何がでるのー?」


そんなカルラをよそに、シオンはピエールに対してそう問いかけると。


「え、えと……トレント、ハイゴースト……コボルトウオーリアー……強い魔物だとクレイジードッグですかね」


ジョフロアは報告書の様なものを開き、洞窟の魔物の種類を読み上げる。


「おー、一階層にしてはなかなか……それで、なん階層まであるの~?」


「一階層のみです……洞窟なので……ただ広く、それぞれの魔物には縄張りがあります、安全地帯はなく……」


「え……その程度なのですか……」


サリアは拍子抜けといったような表情でそう語ると。


「その程度……?」


ジョフロアとピエールはさらに困惑した表情で首をかしげる。


僕はその反応に一度大げさだなと感想を抱き……すぐに自分の感覚が間違っていることに気が付く。


思えば、サリアやシオン、カルラと行動を共にしているため感覚が鈍くなってはいたが……トレントもハイゴーストもコボルトウオーリアーも、街に出没すれば軍隊の出動が必要とされるほどの強大で凶悪な魔物である。


僕も数週間前までであれば、今のシオンやサリアの言葉に、ピエールと同じ反応を示していたことだろうし、ピエールとジョフロアの反応が普通なのだ。


随分と遠いところまで来てしまったもんだ……。


「伝説の騎士のパーティーですよ? その程度の魔物など物の数ではありませんよ……」


そしてなぜアンタが自慢げなのだろうかシンプソン。


「……そ、そうでしたか、いやはや申し訳ございません……あまりにも急でしたのでつい……」


「まぁ、その点は我々も慣れているので構いません……マスター……カルラを単身で洞窟に潜入に向かわせる案は採用してしまって構いませんか?」


サリアは特に感想を抱くことなくそうピエールの言葉を流し、同時にカルラの提案の要否を確認してくる。


「……構わないよ、無傷で戻ることと、日が落ちるまでに僕のもとに戻ることが条件だけど……」


「飲めますか?」


サリアは少しだけ目を細めてカルラにそう問いかけると。


「!はい、ウイル君の御心のままに!」


カルラは自信満々にそう答え、僕はその約束に満足をして一つうなずく。


「では、カルラの偵察が終わり次第私はシンプソンと共にアンデッドの襲撃に備えます……武器の手入れは万端済んでいますので……そうですね聖騎士殿たちの訓練に参加するのもいいかもしれないですね、連携を確認したい……お邪魔でなければですが、ジョフロア」


サリアは凛とした声でそう淡々と語り、ジョフロアにそう伺いを立てると。


「あ、はい。分かりました、後ほどご案内しましょう、サリア様」


ジョフロアは少し慌てた様子でそう承諾をしてくれる。


「……決戦の前に聖騎士団たちの腕をへし折るんじゃないわよ?」


「あなたは私を一体何だと思っているのですかティズ!?」


「筋肉」


「ひどい!? マスター! マスター! ティズがいじめます!」


「うん……一応手加減はしてあげてねサリア……」


「マスターまで!?」


「じゃあじゃあ、私は西の方に罠を仕掛けてきたいんだけどー! ウイル君手伝ってくれる―?」


「罠……ああ、構わないよ、ピエールさん、ジョフロアさん……この地図はもらっても?」


「あ、では持ち運べるように複写がございますのでそちらを」


「ありがとうございます……」


「マキナは? マキナはー!?」


淡々と話が進む中、自分だけ役割が任されていないことに気が付いたのか、マキナは自分を指さして元気よくアピールをする。 


「あ、じゃあマキナちゃんは私のお手伝……作戦支援をお願いするよー!」

 

「作戦支援!? なんかかっこいいぞ!?」


「マキナちゃんは作戦支援部隊長に任命するよー! ぱんぱかぱーん! 今日から隊長だよー! マキナちゃん!」


「おおおおおおぉ!? 任せろおぉ! マキナはおねーちゃんだからな!」


楽しそうに笑う、シオンは気を利かせて自分からお守り役を買って出る……さすがはティズについでの年長者……というかサリアが幼女化したときもそうだが。シオンはなんだかんだ面倒見がいい……。


意外と冒険者なんかよりも、保母さんとかのほうが向いているのではないだろうか。


マキナはなんとなく大人びたセリフに目を輝かせて腕をぶんぶんと振るう。


「……」


その様子をピエールは黙って見つめながら眉を顰める。


「しょうがないなー! マキナはおねーさんだからな!」


「うんうん! たすかっちゃうよー!」


シオンははにかみながらマキナの頭を撫でる。


この二人は本当に絵になるな……。


「では、話はまとまりましたね……一応聞きますがティズ、貴方はどうしますか?」


「ウイルの頭の上でお昼寝かしらね?」


「いつも通りですね……ではマスター」


「うん……というわけで、ピエールさん……僕たち伝説の騎士フォースのパーティーは、フォースの到着まで戦場での迎撃準備、聖騎士団との連携、そしてリッチーのアンデッドの集団の偵察を行いたいのだけれども、構わないかな」


「え? あ、ええ……ええと、構いませんけれども」


本当にできるの?


と、顔に書いてあるピエールとジョフロア。


その表情に一人シンプソンは得意げに胸を張り。


「当然ですよ!! ちなみに、貴方達は私と報酬についての相談ですからね!」


そう高らかに宣言をしたのであった。


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