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40000PT突破記念  受胎告知

「みんなみんな消えてなくなればいいんだ!! 俺を馬鹿にするやつも何もかも!! ふははははっは! 我が名はアイホート! 塵と……いやチョコレートと散れ!」


そう怒声を上げながら、名状し難きものは僕に向かい切りかかる。


どこからともなく現れたのは、巨大な爪であり、僕はその一撃をホークウインドで受ける。


重い……。


「ぐっ……」


「ほう、神格に名を連ねる私の一撃をこうもたやすく受け止めるかクソガキ! 奇しくも生意気にもこの俺をぶちのめした魔王と同じ格好をしているだけはあるなぁ!! っつーかそういうところも含めてお前はむかつくんだよおらあぁ! 全く同じ剣まで持ち出しやがって!」


「かっ、完全に八つ当たりだあぁ!?」


ふざけた物言いではあるが、その打ち込みは激烈であり、神を名乗るだけの実力を僕に見せつける。


……さすがだ。


「ほらほらほらああぁ!! 今お前俺のことを早くぶっ倒してあのマシュマロメガネっ子と宿に早く行きたいって考えただろくぉらああぁ! 昨夜はお楽しみでしたねってか!? やかましいわあああぁ!」


「もはや完全にただの被害妄想でしかないじゃないか!」


アイホートと名乗る魔物のせいで、まったくもって緊張感がないが……。


スキル抜きの単純な戦闘能力であれば、正直サリアより強い……。


「っくそ!  だったらこれを喰らえ!」


ホークウインドで爪を弾いた直後、僕はスキルを発動し、アイスエイジを構える……。


「その冷気……魔法か! 愚かな! 魔法など神であるこの俺に効く物か!」



「アイスエイジ!」


「ふっははははっははははは! 無駄無駄無駄あぁ!」


絶対零度の波動の中を、アイホートは怒号を上げ、口元を釣り上げて笑いながら突進をしてくる。


「ぐっ……やっぱり……」


「す、すごい……あの冷気の中を……表情も変えずに!?」


「あだだだりばえだ……かかかがみでああるごのぼれに……おおお、おろかなまぼーなどどど」


「ウイル君! やせ我慢してるだけだよ彼! すごく寒そう!」


「うるせええ! 攻撃できればよかろうなのだあぁ!」


鼻の様な孔からつららを垂らし、唇を青ざめさせながらも、アイホートは力を衰えさせることなくその爪を僕へと振り下ろす。


やっぱり見た目が残念なせいで緊張感が伝わらないが――寒そうだけどダメージは皆無――魔法は全て通じないと考えた方がいいようだ……。


だがまぁ。


「正直、突っ込んできてもらえれば……それで終わりなんだけどね!」


いかに魔法が効かなくとも……致命の一撃は防げまい。


「!?」


「弾き飛ばす!!」


僕は右腕に仕込んだ白銀真珠の籠手を振るい……その爪を弾く。


「んなっ!?」


驚愕の声と、恐怖にひきつった表情を目前の神は見せるが……もはや、死は逃れられない。


「終焉の時だ……その命……花と散れ」


ちなみにこれ、リューキと考えたキメ台詞その二である。


「か……かっこいい……」


ふと、なぜだか涙を流しながら称賛するリリムの声と。


「かっこいい……」


今まさに殺されそうとしているというのに、子供の様なきらきらとした表情で僕を見る神様……なんだか調子が狂うが、まあ仕方がないので消滅してもらおう。


「致命の一撃!」


「ぎゃあああああぁ!?」


なんとも神様らしからぬ悲鳴と共に、致命の一撃が神、アイホートへと突き刺さり、その命を消滅させる。


強敵であったが、基本的に直線的な攻撃を仕掛けてくる人間だったため助かったというべきだろう。


僕は突き刺さったホークウインドを引き抜き、倒れたアイホートを放って、リリムの方に向き直る……。


「ウイル君!!」


頬を赤く染め、耳と尻尾をピコピコ跳ねさせながら、リリムは飛び跳ねるように僕へと走り寄る……。


太陽はまだ空高く燦々と輝いており、絶好のデート日和は依然続いている。

(周りのチョコレ―トの残骸に目をつむればだが)


まぁ、後片付けは他の人に任せて……当初の予定を再開させるとしようか……。

僕はそう思い、駆け寄ってくるリリムに対して微笑んで……。

「……さて、と……今からでも、デートの続きでも……」


しようか……そういおうとした瞬間……。


「いわせるかああああぁあだらああああ!?」


僕の右腕は、その爪により刈り取られ、胴体から腕が離れ、はじけ飛ぶ。


「っ!?!?」


「ウイル君!!!?」


リリムの絶叫が走り、よろけた僕はリリムに抱き留められると、浮遊感を感じた後、痛みで飛びかけていた意識が戻る。


どうやら、リリムは僕を抱きしめて跳び、アイホートと距離をとったようだ。


「……ウイル君!? ウイル君大丈夫? しっかりして!」


泣きそうなリリムの表情……、見てみると僕の右腕は消え去っており、肩口からは絶えず赤々しい血が滴り落ちていた。


「ゆだん、しちゃったみたいだね」


僕はそう眉間にしわを寄せ、未熟な自分を戒めるために舌打ちを漏らし、リリムの腕から離れると、リビングウイルにより腕が再生される。


「ほう……お前も不死か……マジナヒとはなかなか面白い不死性だな……」


「どうも、そういうアンタは不死じゃないね? ただの不死なら、致命の一撃からは逃げられない」


貫いたはずの穴はなく、見事に復活を果たしたアイホートの背後には、なにやら脱皮した後の様な黒い皮が転がっていた。


「ふははははははははは!! 致命の一撃……げに恐ろしき一撃よ! 我が蘇生の加護も、不死の加護も何もかもすっ飛ばして【死】してしまったぜ!」


「死んだって……何をいって……現に貴方生きて……」


「いいや! 確かに俺は生きているがそれは違う俺だ! 記憶も何もかもを引き継いで入るが、前の俺は確かにお前に殺された! 今の俺はそうだな、いうなれば前のアイホートの息子といったところだよ!」


「息子? じゃあ、後ろの皮みたいのって」


「ご名答!  これが前の俺だ! ふはははは! 俺は迷宮の神 アイホート! その神としての権能は誰彼構わず俺を宿させること、そういうなれば自らを生み出す力! いついかなる時どんな瞬間でも誰かを媒介として自らの子供を宿し産ませることができる繁殖の神! それがたとえ自分であったとしても例外ではない! 死ぬその瞬間! 俺の体に俺を宿し、そして今生まれたのさ! これぞまさに神の究極再誕奥義!【受胎告知】だ! まぁ、産ませるには同意が必要だから、今まで一人たりともオーケー貰ったことないんだけどな!」


「せ、セクハラです!」


「え、リリムそこなの!? 意外とこの能力今の僕たちじゃどうしようもない能力なんだけど!」


リリムは顔を赤くして糾弾するようにアイホートに向かい指をさすが。


「うるせええ!? お前らはそうやっていつも俺のことを笑いものにするんだろぉがあぁ!! 俺の初めて書いたラブレターを! 同級生全員に回した挙句に! 校内放送でオンエアーしやがったことを俺は絶対に忘れない! そして、過去に舞い戻れるなら! 今すぐあの内容のラブレターを書いた自分をぶっ殺す!」

(その時のラブレターがこちらです)

~愛しの堕天使・クトゥグアに捧ぐ。


我が宵闇を照らす炎の堕天使よ、その悪魔のような妖艶な姿に、いつも我は心をブレイクハートされている……願わくば、そなたを抱きしめたい。

そなたが望むなら、俺はダークナイトアイホ―トとして、貴方だけを守る騎士になる。 オケアノスの果てまで、タナトスが我らをいざなうまで、いや、いざなおうとも……二人で永遠を歩みたい……。 アイホートより~


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