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198.リオールVSレオンハルト

「そんな、首を刎ねられてまだ生きているなんて……」


驚愕の声を漏らしたのはティズであり、僕たちはその狂気に息を飲む。


「愛です、これこそがラビの【痛苦の残留】私は愛されている!」


不気味に笑いながら、ブリューゲルはそう笑い、僕たちへとさらに触手の数を増やして攻撃を仕掛けるために、触手を召喚するが……。


『総員突撃いいいいいぃ!!』


『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』


瞬間、怒号が響き渡り、クレイドル寺院内に嵐のような大声が響き渡る。


同時にクレイドル寺院応接室が勢いよく開かれ、武装をした兵団が一斉に部屋内に突入をし、ブリューゲルへと迫る。


「にゅうううううううぅううううしんですかああああああああ!??」


突然の侵入者に、ブリューゲルは驚愕の表情を見せるも、すぐに触手を僕たちではなくその背後へと飛ばし、迎撃を試みようとするが。


「はあああああああああああぁ!!」


復帰したサリアが、その触手の束を一度に叩き切る……この何がなんだかもはやわからない状況であるが、サリアはこの一瞬でこの団体を味方であると判断したらしい。


「聖騎士サリアぁ! この私の寵愛おおお!」


「囲め! 囲めええ!」


先陣を切った大鎧の人間たちが残った数本の触手を切り捨て、そこから雪崩れるように騎士の鎧を身にまとった兵士たちがブリューゲルを取り囲む。


「今度は何よ……」


僕たちは突然の出来事に何が起こっているのか状況把握をすることができず困惑をするが、


「ご無事ですか! ウイル殿……サリア殿」


そんな僕たちの困惑に気が付いたのか、一人の騎士が僕たちへと声をかけてくれる。


よく見るとそれは、王都襲撃の際に、アンドリュー軍と共に戦った隊長であった。


「随分とまた穏やかではないでぇすねええぇ?」


「こ、これは?一体どういうことなの?」


「迷宮教会が不当にクレイドル寺院を占拠しているとの情報が入ったので、我ら王国騎士団は出動要請に応じてはせ参じた……というところですかね……」


「要請? 誰も通報はしていないですし……何よりも早すぎるでしょう?」


壁に打ち付けられたサリアも重症ではなかったらしく、そう少しいぶかし気な顔をして騎士団隊長にそう問うと。


「騎士団長の命令です……」


「レオンハルトさんが? なんで?」


「それは……」


【グルルルラアアアアアアア!!】


騎士団隊長がその理由を説明しようとしたその瞬間、先ほどリオールが逃げ出していった窓があった壁が破壊され、ブリューゲルを吹き飛ばす。


「ぎゃあっ!?」


「うわっ!?」


侵入してきた影は三つ。


一つは寺院の壁と同時に床に顔面をたたきつけられ動かなくなっている……アンドリュー軍隠密機動、リキッドリオール。

そしてもう二つの影は……王国騎士団長、レオンハルトと、その腕に抱かれたカルラであった。


                     ◇

――少し前—―


寺院応接室を抜け、死したはずのリキッドリオールは、己の行動になんの疑問一つ感じることもなく、ただ主であり偉大なるラビの教えを説く魂の主、ブリューゲルアンダーソンの指示に従い、担ぎ上げた少女カルラを、迷宮教会の祭壇場へと連れていく任務を忠実に全うする。


「スベテハ……ラビサマノタメニ」


もはやかつての記憶も気高き騎士としての魂も黒い名状しがたき冒涜的なラビという存在に黒く塗りつぶされ、死してなおその呪いに体を無理やりに動かされながらも、一片の疑いを生じさせることのないリキッドリオール……。


担いだ少女はかつて己の技術のすべてを与えた弟子でも、アンドリューにより抹殺の命令が下されたターゲットでもない……尊きラビをその身に内包した……聖女にしか見えていない。


「ぐっ……離し……離して、ください!?」


「オシズマリクダサイ……セイジョサマ」


主人であるブリューゲルの予想通り、聖女カルラはなぜか腕の中で暴れ、逃げ出そうとするため、リオールは主人に与えられた呪いをカルラへと埋め込むことで、静まらせる。


【神の階段】


「いやっ! あっ!がっあああぁ!??」


呪いは確実に聖女へと侵入し、


カルラは悲痛な叫び声を短く上げた後、口から血を流してその場にぐったりと倒れる。


死してはいないが、心音は限りなく小さくなり、リオールは少し心配をするが、自らの主が間違えることなど絶対にないと思いなおし、任務を再開するために寺院を出ようとすると……。


「その少女をどうするつもりですかな? アンデッドハント」


「キサマハ、ナゼココニイル」


王家の紋章である獅子の紋章の入ったマントを棚引かせ……ゆっくりと、しかし威風堂々とリオールの前に立ちふさがるのは、白銀の鎧に黄金の体毛と大鬣を輝かせる……王都リルガルム王国騎士団長……レオンハルトであった。


「それは貴様には関係のないことだ、王国騎士団長として、貴様の悪行を見過ごすことは出来ん……少女誘拐に寺院襲撃……婦女暴行の現行犯だ……更には放火の容疑もかけられている……捕縛したのち、たっぷりと余罪を追及させてもらう」


「デキルモノカ……ロバートノイヌゴトキニ」


「猫だ!」


瞬間、先に爆ぜたのはレオンハルトであった。


その速度は機動力を武器とするレオニンの中でもいうまでもトップクラスの速度であり、一瞬にしてリキッドリオールへと踏み込むと、少女を救出するためにリオールを刺し貫く。


「チッ……カルラサマシバシオマチヲ!」


マスタークラスの戦士の登場に対し、リオールは呪いの触手にカルラを預けたのち。

予備の剣を引き抜き、全身全霊でレオンハルトの剣を受け止める。


キイイィィ――――ン……。


大気が震え、互いの殺気が互いの肌を焼く……。


「…………やりますね」

「オマエモナ」


剣と剣がぶつかり合い、制止したその一瞬……互いにそう短くつぶやくとどうじに……


レオンハルトとリオールは互いにそのまま剣戟を開始する。


「はああああああああああああああああああああああ!」


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


力で責め立てるレオンハルトに対し、リオールはただひたすらに速度でいなしてはレオンハルトへと刃を放つ。


レオンハルトの攻撃は相手を捕らえることは出来ず、リオールの剣をレオンハルトはその持ち前の動体視力ですべての攻撃を弾いていく。


その姿はまさに鬼人の衝突であり、お互い人の領域を逸した戦いを繰り広げる。


力量は互いに五分……互いに一歩も譲ることはなくこの打ち合いがいつまでも続くかのように思われた。


しかし。


「クッ……コノママデハ……」


時間がかかれば不利になるのはリオールの方であり……リオールは勝負を急ぐ。


「セメテオウギデシズメテヤロウ!」


「むっ」


「イクゾ!」


大きくレオンハルトの太陽の剣を弾いた後、リオールは突きの構えを取り、そのまま全速力で突進をする。


「ライデンソウ!!」


雷の如き速力をもって放たれるただの突き……


しかしその速力は最高度の鉱物、アダマンタイトをも貫く程の威力を誇っている。


レオンハルトに劣っていた力の部分をその突きは補っており、レオンハルトの持つ力の優位性は失われる。


しかし。


「……天に風が吹き、晴れ渡り光さし、そして日が昇る……」


レオンハルトはその突きに合わせ、自らもその一撃を開放する。


放たれる突きに対し、レオンハルトが放つのは愚直でまっすぐな上段からの真っ向切り……。


【獅子王剣!! 牙王!】


放たれた一閃は、迷うことなく、リオールの剣を両断し、その衝撃波により少女を取り囲んでいた触手全てを薙ぎはらう。


「キサマ……」


「公務執行妨害も追加だ……」


その顔面を掴み、触手から解放された少女を奪い取ると……そのまま目前にそびえたつ、クレイドル寺院の壁へとたたきつけた。


【グルルルラアアアアアアア!!】


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