表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集2025  作者: 斎木リコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/5

うちのネコ

 我が家のネコは太平楽だ。常に日の当たる場所で惰眠を貪り、寒い夜は私の布団に潜り込んでくる。


 潜り込むだけならまだしも、ネコは本来の布団の主である私を押しのけるのだ。おのれネコ。可愛いからっていい気になるなよ?


 ネコは母が一番好きだ。何せ餌をくれる人だから。そして私の事はあまり好きではない。風呂に入れられるから。


 でもお前、長毛種なんだから。定期的にシャンプーしないと毛玉で大変な事になるんだぞ?


 一度バリカンで毛を刈られた事があるくせに。ネコだから、すでに忘れているんだな。なんせネコだし。


 嫌がられようが爪は切るし、暴れられようが風呂には入れる。ネコの為なのだ。だから暴れるな。爪を立てるな。痛いだろうが。


 ネコといると生傷が絶えない。そんな私を見て、友達は笑う。


「意外と、ネコはあんたに甘えてるだけかもよ?」


 そうだろうか。人間ならまあそういう事もあるかもと思わないでもないけれど、相手はネコだぞ?


 あいつら、家の中では我が物顔だからな? 何やっても許されると思ってるぞ、絶対。実際、母は何でも許してしまうけれど。




 今日は友達が遊びに来る。私が我が家のネコの話をしまくるものだから、会ってみたくなったらしい。


 ネコがおとなしくしているといいんだが。


「にゃあん」

「うわあああ! 可愛いいいいいいい!」


 杞憂だった。ネコめ、友達には愛想振りまきおって。お前、普段はそんな鳴き方しないだろうが。


「ふわっふわだねえ。すっごく可愛い!」

「昨日丸洗いしたからね。おかげでひっかき傷だらけだよ」


 もう、夏場でも半袖とか着られない。腕には細い傷が無数に出来ているから、さすがに恥ずかしい。


 傷の元凶は、友達におもちゃで遊んでもらってご機嫌だ。おのれネコ。今日は布団に入れてやらないからな。


 そのネコは、現在何やらダンスでも踊っているような動きを見せている。単に、友達がおもちゃで釣っているんだが。


「ねえねえ、まるで踊ってるみたいじゃない? 激写しようよ」

「こいつ、写真撮られるの嫌うんだよね」


 私がスマホを向けようものなら、顔は背けるしフーシャーするし。可愛い顔なんて撮れたためしがない。


 そのネコが、おもちゃに釣られて踊ってるよ。ネコダンス、可愛いのが何か悔しい。


 友達に言われるまま、スマホで連写する。おもちゃに夢中なネコは、普段のように嫌がりもせず撮影されていた。


 お前……飼い主は私だって、ちゃんと理解してるか?




 友達が上機嫌で帰ると、ネコも普段と同じ態度に戻る。お前、本当に猫を被ってたんだな。ネコのくせに。


 風呂に入って髪を乾かして、さて寝ようかと思ったらネコがきた。布団乾燥機で温めておいた布団の中に、するりと入る。


「お前……お母さんの布団に入れよな?」


 私は知っている。母はいびきが酷く、歯ぎしりも凄い。隣でなんて寝られない人だ。ネコも、それがわかっているんだろう。


 だから、私の布団を狙ってくる。


 仕方ない。どのみちこのネコには勝てないのだ。


「付けた名前が悪かったのかな……」


 天下無双。それがネコの名前だ。でも、もう二度と呼んでやらないけれど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ