3 ゲーム設定と自分の立ち位置
設定に修正があったので、ちょいと修正しています
夢のなかで、前世のことを見ていた。
病気のせいであっけなく終わってしまった、前世。
まだ私は二十代だった。
社会人になってそんなに経ってなくて、一人暮らしにも慣れてきた頃。
突然体調が悪化して、いつまでも治らなくて。
病院へ行ったら、大きな病院で入院してくださいと言われた。
結果、私にとってそれは不治の病だった。
90%の人が治るという特効薬を試したものの、効かなかった時はものすごく荒れた。
私に厳しすぎる世界なんて……滅んでしまえと泣いたり怒ったりした。
一通り泣き尽くすと、もう短い時間しか残っていなくて。
だけど一日中何もしないというのも、残り時間のことを考えて辛かった。
そんな時に、看護師さんが『子供が捨てるって言ってたんだけど』とゲームをくれた。
入院の暇つぶしにともってきたゲーム機で遊べるものだった。
で、現実逃避にゲームを始めた。
それがRPGゲーム『ヴァール王国防衛記』
戦略ゲームみたいなタイトルだったけど、RPGのマルチエンディング物。
動かした感じは、マップの上を時々戦いながら移動して、あちこちの国や町に行って、同盟を結んで来たり、故国に兵器を持ち帰ったり、人材を連れて行ったりするという感じだった。
目標は、隣国ランヴェール帝国の侵略を防ぐこと。
で……。
ゲームを勧めていき、おおよその国と同盟できたなぁと思った時。
急に敵側が勝手に滅びて、平和になってゲームが終わるという肩透かしをくらった。
敵国の皇子が自分の国を滅ぼし、結果的に問題が消えるってどういうこと!?
しかも、ストーリーの合間に出て来るその皇子の顔がけっこう好みだから、最終戦ぐらいにはじっくり見られると思ってたのに。
でも他のエンドを探す前に、私の命は尽きた。
ゆっくりと最後の眠りに落ちる中、私が最後に悔やんだのは、ゲームの謎がわからなかったことだった。
(端役でもいいけど、ゲームの世界に転生でもできたらな。いや、端役だと巻き込まれて死んじゃいそう……。仲間の聖女役だったら、いくらか安全そうな気が……)
そんなことを考えてしまったから、ゲーム世界に転生したのだと思っていたのに……。
※※※
ふっと目を覚まし、私は自分が眠っていたことに気づく。
「疲れ過ぎたのかな……」
今までの人生で、人と話している間に眠るなんて、体力がない時か、麻酔を使う時ぐらいだった。
この体も、メイドとして働いて疲れているうえに、罪人になるか一文無しで逃げるかの二択をつきつけられて、ストレスが限界だったのかな?
ふっとため息をついた私は、誰も側にいないみたいだし、のんびりと今まで起こったことを思い返す。
「それより、ほんとに私、聖女なの?」
おかしな現象は、たしかに発生した。
信じがたいんだけど……あの現象は聖女の能力にそっくりではある。
謎の音がして、敵の動きというか考えを操る、というあれだ。
ゲームだと、聖者だけが『世界の果ての鐘』(ピアノにしか聞こえないけど)を祈りで動かすことができ、スキルの発動音と共に、騎士の強化が行われたり、敵の動きを止めてしまったりできた。
あれとそっくり同じだったのだ。
でも私が聖女だとすると、問題があるんだけど……。
「ランヴェール帝国って、聖女を他国侵略に使おうとしてた国だし、むしろ聖女に嫌な印象持ってそうなんだよね」
ランヴェール帝国は以前もヴァール王国を侵略して、聖女によって撃退されているらしく。
めっちゃ聖女のこと恨んでそうなんだけど?
ただ、ゲームでレゼク皇子自身は特に聖女に恨みを感じてる描写はなかった。
ミッションクリアの度に、軍を率いているレゼクが、砦かなんかから見下ろしている姿が映るだけで。
しかもその後、自国を滅ぼしてやるぜぇ、みたいな感じで反乱を起こしたみたいだし。
「それにレゼクは協力してほしい、って言ってたものね」
私が聖女の力を持っているとわかって、レゼクはそう願ったのだ。
とはいえ、どうして私が聖女の力を持っているんだろう。
力は血筋によるもの、って設定だったはずだけど……。
「私、ランヴェール帝国の人なのに……あ」
母親が、流浪の末に父と結婚した変わり種だった。
女性ながらに剣を振り回すのが得意で、流浪の剣士みたいなことをしたあげく、父と意気投合して結婚。
そんなわけで、娘の私まで『女も剣を扱えるようになった方がいいから!』と鍛えた張本人だった。
出身が、確かヴァール王国……。
「ヴァール王国は聖女が前からいたらしいし、その血縁かな? つじつまは合う、か」
でも私、そんな話は聞かされたことがない。
母親がその話をしなかった理由は、想像できるけど。
ランヴェール帝国で、元敵国ヴァールの話……しかも聖女の話なんてしにくかったんじゃないかな?
「話さないのは当然かも。聖女の一族って昔はひっそりと隠れてたらしいけど、ランヴェールの侵略に聖女の血族が積極的に協力してるのには理由があるんだよね。聖女の力を他国侵略に使おうと、ランヴェール帝国が拉致をしようとしてたから、ってことだったし」
ゲームの中で、聖女キャラがそう説明してた。
だから自分達の身を守るためにも、ヴァール王国に貢献したのだ。
私に聖女の能力がもっと早くに発現していたら、今の状況も変わっていたはずだ。
母親が、何が何でも私をヴァール王国に私を連れて行っただろうから。
「それにもう一つ、驚いたわよね。レゼクが騎士の血筋だなんて」
騎士は聖女を守る役目を持ち、聖女の力に感応して、常人とは思えない力を発揮できる人だ。
元は『聖女の騎士』と呼ばれていた。
けれど、通称としてただ『騎士』と言うようになった、とゲームの中で説明されていた。
でもランヴェール帝国の、しかも皇族のレゼクが騎士?
騎士も聖者も、その血で力を受け継ぐので、ひょっこりと関係のない血筋に出ることはありえない。
「あ、ゲーム内でも、二人ぐらい騎士の能力持ちをヴァール王国以外で発見してたし、仲間にできたし。騎士の血筋ってけっこう散らばってるのかも……? だったら、たまたま皇妃になった誰かが騎士の血を引いていたってことも、あるかもしれない」
今現在わかるわけがないので、そういうことにしておく。
「だけど、あの皇子の近くにいることは……不安要素かなぁ」
そもそもこのランヴェール帝国が、ゲーム主人公達の敵でもある。
「とにかく、騎士の血を引くレゼク皇子は、私を守らずにはいられなくなるわけだから……。たしか聖女を守らずにいられないはずだし。もしかしてこれ、守られながら『どうしてレゼクがランヴェール帝国を滅ぼしたのか』わかるって状況になったんじゃない?」
そう考えると、ちょっとワクワクしてしまう。
だって死ぬ直前の悔いは、それだけだったから。
ゲームの題材になるんだし、戦闘とかはあるだろうけど。
剣術は鍛えてるわけだから、ある程度はあんとかなる。
なにより皇族をだました罪の件も、侍女のことを受け入れれば解決される。
「一石二鳥?」
それに本当に危険な状況になったら、早々にレゼクから逃げればいい。
聖者の力なら、それができる。
よし、と私が決意したところで、扉がノックされた。




