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私、ニセモノ令嬢から帝国皇子の愛され侍女になったようです  作者: 奏多


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29 対策、実行します 2

 翌日は安心できる相手だった。


「ご迷惑をかけてすみません」


 そう謝れば、


「気にしなくていいよ。困った時はお互い様だから」


 微笑んでくれるのがアーステンだ。

 繊細で品行方正と評が高い、赤い髪の騎士。

 訓練でも何かと気遣ってくれるし、会話が多かったのでそれなりに気心も知れていて安心できる人だ。


「そうは言いましても、こんな頼み事はめったにないんじゃありませんか?」


 仲間の恋人代わりを演じるなど、騎士の仕事としても前代未聞な気がする。


「中には親しい女性がいらっしゃる方もいるでしょうし……」


「確かに婚約者がいる者も含まれるだろうけど。たった一日、数時間連れだって歩いたぐらいでどうこう言う人はいないと思うよ。貴族同士の付き合いで、女性の友人がいる者だって多くいるんだし。皇帝陛下が騒いだって、いくらでも証言してくれる人がいるんだしね」


 そう言って、アーステンは首をかしげた。


「君の故郷ではそうじゃないのかな?」


「そうですね。女性は女性同士で集まって……というのが慣例で、それ以外に男性と行動するとすぐに噂が立ちましたね。最も、訪問者がこなければ貴族の男性は親族ぐらいしかいませんから、他家に招待されないと出会うこともありません」


 ……という回答で良かったと思う。

 ご令嬢が出不精だったので、伯爵様の友人や関係者が訪ねて来るぐらいだったし。

 そう言う人達は、たいてい年上すぎるから恋愛対象にもならなさそうだったしね。


 で、たまに年頃の貴族男性が一緒にいて、お嬢様と対面すると使用人達がみんなで噂したものだ。


『これ、お見合いかしら? 上手くいくと思う?』と。


 一人娘だったので、みんな次の伯爵様になる人に興味津々だったから。


「帝宮でそんなことを言っていたら、サロンなんかに気軽に参加できないから。多少嫉妬深いご令嬢なんかもいるだろうけど、うちの隊の婚約者にはそういった人はいなかったと思うよ」


「え? もしかしてアーステンさんて騎士全員のお相手を把握してらっしゃるんですか?」


「え? 普通のことじゃないのかい?」


 聞き返されて私は愕然とした。

 それが帝都、もしくは上級貴族のたしなみというものなのかもしれない。


「すみません。田舎者のため、よくそういったことがわからなくて」


 謝ると、アーステンが慌てて宥めてくれた。


「気にしないで。それに場所によって習慣が違うのは仕方のないことだよ」


 その時ちょうど庭に出たところで、今の季節一番人気だと言われる薔薇園に置かれた椅子が空いていた。

 アーステンと一緒にそこに座る。

 今日はここで彼の持ち時間いっぱいまで皇帝が現れるのを待ち、来なかったら次の相手がやってくる予定だった。


 この予定をたてたのはノエリアだ。

 薔薇園に合わせて赤いドレスを見立てたのはあのエルシーである。

 椅子に座り、そして周囲を見回して私は咲き誇る薔薇を堪能する。


「きれいですねぇ。育てるのが大変そうですが」


 思わずそう言葉を漏らすと、アーステンが言った。


「確かに綺麗だね。女性を薔薇に例えるのもわかる気がする。綺麗で、だけど注意をしないと棘が刺さる。帝宮に出入りする貴族が周囲の人間の婚約者を把握するのも、似たような理由だよ」


 自分が知らなかった事を話してくれようとしていると気づき、私は彼の言葉に耳を傾ける。


「一番わかりやすい例でいうと、婚約者が誰であるかでどんな派閥と付き合いのある人間なのか知ることができる。それによって相手への言葉の選び方も変わるよね」


 ふんふんと私は熱心にうなずいた。

 なるほど。人間関係を知るためなのだ。


「後はまぁ、婚約者がいるのを黙って誰かを誘惑する人もいるからかな。知らずにいてその婚約者と決闘騒ぎになっても困るから。誰か気になる人がいる場合は、その人が婚約しているか否かは重要だよね」


「なるほど」


 確かにいい雰囲気になれたと思ったら、実は婚約者がいました……と後で知って遊ばれたとショックを受けるより、最初から避ける方がいい。


「皇太后陛下の周囲で婚約者がいないのって……私と、エルシーもそうですけど、ちょっと変わってるんでしょうか?」


「ノエリア嬢もそうだね。彼女が婚約していないのは、長らく皇子殿下の婚約者になるのではないか、という話があったせいだろうけど」


「…………」


 私はちょっと不安になる。

 ノエリアがもし、本当に婚約者になる予定があったとしたら、だ。

 レゼクがわざわざスカウトしたり、先日のパーティーでは同伴した姿を見て……傷ついたりしていないだろうか。

 かといって、誤解を解こうにも説明はできないし……。


 そんな話をしているうちに、アーステンの空き時間が尽きてしまう。

 皇帝が通りがかることもなく、姿をみかけたのはメイドと庭師ぐらいだった。

 仕方ないので今日はもう一人の相手と偽の逢瀬をするしかない。

 しかしなかなか次の騎士が来ない。


「ちょっと見てこよう。ここで待っていて」


 アーステンが探しに行ってしまい、私は一人取り残される。

 とりあえず薔薇を眺めて待っていると、なぜかアーステンではなく少し年嵩の髪を高く結い上げたメイドがやってきた。


「お約束の方が、あちらでお待ちしていると言付かりました。ご案内いたします」

 私は予定を変更したのか? と思いながら彼女についていくため、席を立った。

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