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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第一章       ●其ノ十二 美麗関ヶ原大戦  
509/539

いざ関ヶ原へ  参

 翌朝、私達は七時四十二分発の東海道本線で、大垣から垂井、関ヶ原へと進む。約十五分ほどで列車はゆっくりと関ヶ原駅へと到着した。


 いよいよ関ヶ原入りだ。関ヶ原の合戦時は濃い霧が漂っていたようだが、今日は快晴だった。


 列車を降りた私達一行は、駅から線路沿いを西へと少し進んだ所で北へと曲がった。そこから三百メートル程歩くと関ヶ原古戦場会館が見えてくる。砦のような、はたまた陣幕で囲った本陣風の洒落た建物だ。


 その関ヶ原古戦場会館のすぐ横がだだっ広い広場になっているのだが、そこが今回のイベントの集合場所であり、開会式場所になるのだ。


 集合場所に到着した私は周囲を見回すと、色とりどりの鎧兜を身に纏った人が大勢いた。美女や、マッチョも多い。女性に関しては腹が出ている率、肩が出ている率、太腿が出ている率、谷間を見せている率が高い。男性マッチョは腹見せ、二の腕見せ、胸筋見せが多い。六つに分かれた腹筋を見せる為なのだろうか? そんな露出が高い上に派手な色の陣羽織を羽織っていたりもする。紫色とか蛍光ピンクなどだ。更にフェイク虎皮の陣羽織なんかもいる。また髪色にしても様々だ。赤髪にしている者も居れば、白髪、ピンクなんかもいる。黒髪にスプレーで一部だけカラーリングをしている者などもいる。兎に角全てが派手派手しい。


 いずれにしても、誰も彼もに云える事は、露出が多すぎて鎧や兜の意味はほぼ無いという事だ。防御ではなく目立つことに重点を置いている。みんな傾奇者なのだ。


「うん! うん! うん! いいね! いいね! 輝美、凄いよ、ここに居るのは、皆、歴二病を患った歴男、歴女なんだね」


「い、いや、別に歴二病は患ってはいないと思うけど…… って歴二病って何?」


 輝美は周囲を見回し、ちょっと拙そうな表情をする。


「もう! 涼子、怒られるかもしれないから失礼な事を云うの止めてよ!」


「ふふふ、失礼なんかじゃないわよ、誉め言葉よ」


 そんな私と輝美のやり取りを尻目に、改まって山科が声を上げる。


「さてと、僕らも戦国武将に衣替えだ。関ヶ原古戦場会館の更衣室に向かおう、協賛の古戦場会館では着替えの場所を提供してくれているんだよ」


「良いですね、着替えの場所が用意されているなんて……」


 私はこのイベントのフォローアップ体制に感動していた。


「じゃあ、二十分後に入口に集合だ。遅れないようにね」


「はい!」


 山科の声に、皆は元気のいい声で返事をした。


「じゃあ涼子行くわよ」


「あ、うん」


 そうして、私と輝美、駒野美紀の三人は女子更衣室へと向かった。


「それじゃあ、涼子は借りてきたこの鎧を身に着けて」


 輝美が出してきた鎧は黒い地味な物だった。兜も裾に金色の紙垂が付いていて額には三つ柏の家紋が付いているだけだ。


「あれ、なんか地味じゃない?」


「何を言っているの? 山内一豊の衣装ったらこれでしょ! 三菱マークの元になった三つ柏! 一豊の父が戦の際に指物の代わりに柏の枝を使ったという逸話から家紋になった三つ柏の付いた兜よ!」


 輝美は強く強調してくる。一方の輝美はと云うと青髪のウイッグを付けて派手派手しい上に胸の谷間や腹や太腿が露わになっている露出が激しいものだ。


 おいおい、何かいやらしいぞ!


 一方、駒野美紀は荒々しい鹿角の兜姿なのだが、ちょっと格好よく着飾り、これまた派手で露出が多い。極め付きに袈裟懸け状にデカい数珠を引っ掛けている。


「ねえ涼子、あなた自前の飾りとか持ってきていないでしょ?」


「えっ、だって用意してくれるって」


「山内一豊一式は用意したわよ。可愛く着飾りたいなら自前で持ってこなきゃ、涼子の体のサイズとかも解らないし……」


 私は自前の飾りなど持っていなかった。服もいつもの地味なカーディガンと黒い長スカートだ。


「とにかく早く着替えないと!」


「わ、わかったわよ」


 仕方が無いので私は当てがわれた地味な衣装を身に纏った。


 派手な衣装の輝美と美紀と一緒に表に出ると、金色の鎧を身に纏った山科と、赤く派手な鎧を身に纏った田中顕穂が待っていた。井伊直政コスプレをしている田中に於いては、兜は赤色の大きな脇立てが付いおり赤備え、正に井伊直政の鎧姿だ。


「揃ったね。しかし……」


 山科が私の鎧姿を凝視する。


「坂本さん…… なんだか地味だね…… 折角のイベントなのに雑兵みたいだよ……」


「いや、用意してくれた物を身に纏っているだけですけど……」


 私だって派手にしたかったぞ。アドバイスをしてくれよ!


「まあ、一豊の鎧はそもそもが地味だから仕方がないか…… 兎に角、今日は頑張りましょう」


「宜しくお願いします」


 皆は揃って返事をする。


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